0465 交渉術3 目的、着地点を考えている。

さて、交渉術の基礎的条件やルールは前回に紹介したブックガイドを参考に、今回お話することは交渉での目的、着地点についてです。言わば交渉に当たっての想定するゴールのことです。

交渉において、自己の立場に有利なゴールを考えることは当然と言えますが、そのまま相手に内容をぶつけて決着がつく、相手がすべての条件を受け入れることは滅多にありません。それどころか多くの場合ゴールそのものを修正することを余儀なくされます。

ゴールの想定は、意思決定と同様なメカニズムとして扱っても問題ありません。このブログで紹介した意思決定(グーグル:ビジネスてい意思決定で検索、当ブログ0445〜0452、下記からアクセス)を参考として、この内容はアイコがどのようなプレゼントを購入するのか?についての単純な意思決定を例に扱っています。
この場合、購入品や価格の問題もありますが、プレゼントを買う目的や動機は、プレゼントを贈る相手との関係性が最も考慮すべきポイントとなっています。従って、アイコは相手からプレゼントを強要されたわけではなく、単純に好意からプレゼントするわけですから、受け取る相手からすれば不利益を被ることはありません。

しかし、よくあるビジネス上の交渉で、交渉相手が利害関係者である場合は上記の例のように、ゴールの設定、意思決定は単純ではありません。ゴールそのものを変更せざる得ない場面というのは、ゴールを設定しても交渉段階で新たな問題や制約、当初想定していた条件との違い、解釈の差異が見つかるからです。それから相手は感情的に物事を訴えるかも知れません。

多くの条件や、複数に及ぶ利害関係、要素の複雑な連携、これが交渉の問題をより深刻化しても、コミュニケーションにおける基礎的なルールは変わりません。
「問題は相手の頭の中にある」と言う交渉上の難題であっても、日常のコミュニケーションそのものが、そのような仕組みなのです。あなたの性格や立場、培った人格も結局は相手の頭の中にしか存在しません。そして具体的な交渉において、いくら細かい説明や相手の有利を伝えても、実際に理解して決定を行うのは、やはり交渉相手でしかないのです(聞き手の決定権:当ブログ0458、下記からアクセス)。
それから「ノックアウトファクター(当ブログ0460、下記からアクセス)」も注意すべきリスクです。これは具体的な言動によって相手の感情を刺激する行為ですが、リスクと捉えて回避を考慮しても、相手の立場やこれまでの経緯、人格などを知っておかないと困難と言えます。しかし、交渉の場面によっては慎重に考慮して、自己の言動を控えることが大切です。「これを言ったらお仕舞い」となりかねないリスク要素で、敵対する相手でも尊重する姿勢が必要と言えます。

最悪の場合、想定したゴールに「決裂」があったとしても、そこから生じる今後のリスクを充分に検討する必要があります。決裂したまま放置できない相手であれば尚更で、時間とともに相手の感情が鎮まるケースも、もちろんありますが同時に時間が掛かる分、コストがかかることも意識として必要となります。
また、自己の条件を有利に合意しても、それがゴリ押しで、充分に相手が納得していない場合、合意に達しても報復の芽を生みます。

このように、交渉時の着地点の設定は、様々な要素が絡んできます。その上、実際の交渉において今まで知らなかった情報や考慮しなかった条件を受け止める必要が生じ、また新たにゴールの設定、修正せざるを得ない場面が出てきます。

ゴールの設定については以下のことが注意点として挙げられます。
1)、自己の理想的なゴール。譲歩をした場合はどこまでOKであるか。
2)、合意に達しない場合のリスクを充分に検討しているか。
3)、相手からの新たな情報や条件に対してゴールの修正は可能か。
4)、相手の人格や立場に関わらず、尊重やノックアウトファクターを考慮しているか。
5)、問題が相手の頭の中にあるとしても、常識的、場面によっては法律的な説得を用意しているか。
6)、その交渉に掛かる費用の中で、時間的なコストを考慮しているか。
7)、相手はその場限りの関係か、継続すべき関係であるのか。
上記は番号順にリスクの高さを示しているわけではありません。7つの注意すべきリスクはそれぞれの交渉によって異なり、何を優先的に、あるいは何を重視してゴール設定するのか?という要素に過ぎません。

意思決定→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20140911
聞き手の決定権→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20141119
ノックアウトファクター→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20141201

ウォートン流 人生のすべてにおいてもっとトクをする新しい交渉術

ウォートン流 人生のすべてにおいてもっとトクをする新しい交渉術


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 0464 交渉術2

「交渉術」と書けば、何やら特別なテクニックが必要と思われるかも知れませんが、そうではありません。これまでにブログで解説した「コミュニケーション・スキル」「意思決定」の組合せです。

交渉は平たく言えば「頼み事、頼まれ事」と言って良いでしょう。

仕事や政治的な場面のみが「交渉」となるのではありません。日常的なことでも当事者が意識することによって、それは「交渉」となります。

例えば、休日に夫が妻に「お茶入れてくれる?」。ありきたりな休日の一コマですが、これは交渉であると意識すれば交渉となります。妻は夫の頼み事を無条件に受け入れるのです。妻は日常的に最も協力的な関係者です。しかし、夫が他の女性と浮気をし、その浮気が妻にバレて散々揉めた直後に「お茶を入れてくれる?」となれば話は一変します。相手は感情的で、非協力的で、妻にとってお茶を入れる行為は何のメリットもない。

交渉は時として立場が相反する者、信頼関係がない者、感情的に受け入れがたい者、そう言った相手と交渉する場面があるかも知れません。また、交渉はその都度、たとえ過去に対応した相手であっても、まったく同じ環境や条件ではありません。つまり交渉は1回、1回別物なのです。

交渉術はたくさんの本が出版されていて、交渉術を学ぶ方は、本を読み、そして実践でその理論を試し、毎日へこたれず実践を続けることによって身に付いてゆきます。

多くの交渉に関するノウハウ本も、そのいっさつ一冊の内容がバラバラで、別の本を読む度にノウハウが異なるわけでもありません。むしろ基礎的な考え方の多くは共通しています。その共通と言える部分は、相手が「人」であることのリスクです。交渉での合意に達する方法はケースによって違ってきます。

共通する内容をまとめてみると以下のようになります。
(1)目的、着地点を考えている。
(2)合意に達するまでの障害、問題は相手の頭の中にある。
(3)多様性を受け入れる。
(4)相手の感情を刺激する言動は排除する。
(5)自分の感情もコントロールする。
主な共通内容は上記の5つ二なります。このことを次回にもう少し、深く考えて見ましょう。
 
さて、交渉学を勉強するには、やはり一度、有効かつ面白いテキストを読むことをオススメします。ビジネスていレベル研究所、ブックガイドを覗いて見てください。3つの交渉学のテキストを紹介しています。
●「ハーバード流交渉学」→http://d.hatena.ne.jp/sotton+book/20150309/1425924030
多くの交渉学に影響を与えた良書。交渉でのリスク、ソフト型、ハード型、原則立脚型など論理的に理解し易い内容です。

●「ウォートン流人生のすべてにおいてもっとトクをする新しい交渉術」→
http://d.hatena.ne.jp/sotton+book/20150310
新しい交渉学との位置づけ、実際にあった様々なケースの交渉を元二、合意に達する方法に何が必要であったのかを「ツール」として検証、紹介している。交渉の基礎的な共通部分ももちろんあります。

●「絶対に負けない交渉術」→http://d.hatena.ne.jp/sotton+book/20140222/1393036410
上記2冊は米国の有名大学の研究による者だが、この本は日本の弁護士、と言っても大学教授(名古屋商科大学)が書いたもので、交渉のポイントが分かりやすく整理され、初心者の方には無理なく読めて、かつ頭に入りやすい、時間のない方には一番良いかも。

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 今年の予定

明けまして、おめでとうございます。昨年は、この「ビジネスていレベル研究所」を、たくさんの方にご利用を頂きありがとうございました。

一応、予定していた通りには進んだのですが、後半は進捗が遅く、ご迷惑をおかけして申し訳なく感じ、反省するところであります。また、併設している他のブログ「ブックガイド!」「コラム?」「資格!」についても、その殆どが更新のない状態で、期待を裏切った形となり、これも深く反省しています。

今年は、去年よりより多くのブログを提供したい意欲はあるのですが、内容が「社会人の便利帳」的な意味が強く、過去の記事に対しても、新たな改編が必要と考えています。そのため現在進行中の「転職のスキル」を一時的に休止、あるいは進捗を現行よりも、より遅い間隔で進め、春先までは過去のブログの内容を、より新しい記事に修正をすることを中心に「ビジネスていレベル研究所」の仕事を進めてゆきたい、そう思っています。
また、文章のスタイルや記事のタイトルについても修正すべき点があり、このあたりも同時に進めてゆきたいと考えています。

「転職のスキル」は現在、「準備編」の途中出、この後に「実践編」と続きます。従って今年の目標としては「過去の記事の改編」、転職のスキル「準備編」の完結、そして「実践編」の完結、このあたりまで行けば良いかな、そんな感じで頑張ります。

ブックガイド、コラム、資格、についても月に各2回くらいは書ければ、そうなるように努力してゆきます。
今後とも「ビジネスていレベル研究所」を、どんどん活用して頂けるよう頑張りますので、応援を宜しくお願い致します。


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 0463 交渉術1

さて、今回からは「交渉術」に話しを移しましょう。専門的ではなく簡単な話として。

普段、私たちは親しい者と会話をするとき、特に目的意識を持って喋ることはあまりありません。自然と気ままに会話をして楽しみます。先ほどの「聞く技術」では、相手である話し手が、どんどん楽しくお喋りができるように仕掛けることでした。つまり、相手を気分よく話させること自体が目的でしたが、交渉では、ある目的のために行う会話は「交渉」であると位置づけることができます。

例えば、普通の会話でも相手が異性で気を引きたい等の意識があれば、それは「気を引く」という目的が生じて、自己の利益的な側面が絡み、交渉の意味が含まれています。交渉の殆どは状況設定と言葉の選択を主とする心理的な戦術です。

あなたが男性で、これから親しくなりたい女性を食事に誘ったとしましょう。テーブルの位置は部屋の角、あなたは壁側に座り、差し向かいに座ります。これで彼女の視界から余計なものがかなり排除され、彼女が正面を向けばあなたと背後にある壁のみです。あなたは聞く技術を駆使して彼女を会話に弾ませます。ときおり「その時どんな気分だった」などの彼女に感情的質問を投げかけ、返してきた言葉に同調します。仕草もさりげなくマネします。水を飲めばあなたも水を飲み、彼女が耳を触ればあなたも自分の耳を触ってみせます。彼女の声が高めなら、あなたは彼女より少し低い声で、低めなら少し高い声で、早口なら少し遅く、遅ければ少しだけ早くコントロールします。視線はもちろん彼女の目で、視線を外すときは一瞬だけ唇に移し、次に視線を外すときは一瞬だけ髪型、次に肩、腕と視線を外すとき彼女の目から少しづつ離れた部分に移してゆきます。決してじっくり見てはいけません。気を引くことは、彼女の気分を良くすることで、警戒や不快感を与えるリスクは厳禁です。「見惚れる」より「気になる」ことを知らせるのです。次にあなたがあなた自身のことを話す機会が訪れます。この時、あなたの話す会話の内容は、彼女が話した内容から構成します。キーワードは共通の知人、共通の場所、時代と感情。彼女が学生時代の話しをしたのなら、あなたも学生時代のエピソードを。出身地や観光地、共通の知人がなければ、彼女の話しの登場人物でよく似たキャラクターの話し。なければ、共通のキーワードを広げ、旅行、音楽、職業等で彼女の話しに刺激を受けたこと、同じような感情になったこと、似たような境遇で楽しかったことを話し、話しの途中あなたは時折、今食べている料理や店の雰囲気について、一言の感想を述べます。「このサラダ美味しいね」程度のことを。この何でもない一言を断片的に散りばめ、今日、彼女と、この店で食事をし、会話を楽しんだこと、二人きりで共有した時間を印象付けます。

上記のようなことが、実際にどの程度の効果をもたらし成果を上げるかは、実際には計測できません。相手によって異なることでしょう。しかし、これらは心理学的に有効とされているもので、「特定化」「共感」「同調」「共有」「自己説得」「フット・イン・ザ・ドア」「ドア・イン・ザ・フェイス」「ロー・ボール・テクニック」「ミラー効果」

「クライマックス法」などは、その手の本を読めば必ず掲載されている内容です。
ここでの「交渉術」は、先に述べた心理的なテクニックではなく、二つの異なるアプローチからなる基礎的な交渉術の紹介で、その形を知る大まかな概要に過ぎません。しかし、この二つの交渉における思考は、必ず日常的に役立つものです。

次回に引き続きます。

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 0462 転職のスキル、準備編59 コミュニケーションスキル7

前回の続きです。

このように相槌は会話の流れを上手に組立てるパーツです。物語の展開を促す役割を担います。小説を読んでいるページに次に捲(めく)ってゆきます。これに対して「質問」は話しの幅や深さ、背景や奥行を広げてゆきます。話しに出てくる登場人物の性格やエピソード、関係性や感情の在り方、場所、季節、付随する物語。相手が話す内容が様々な質問によって膨れ上がり、また、質問をしないことによって短い内容にもできるのです。

聞き手の相槌によって、話し手である相手は「ロジカルシンキング(論理思考)」を促すことになります。聞いてもらいたい内容を思い出し、どのような構成、範囲、表現を物語の順を追って思考し、話します。
質問は相手にとって「ラテラルシンキング」を与えます。質問に反応して話しの中の人物像、場所の雰囲気、関係性やその時の感情を思い出させる他、頭の中を整理して会話にその背景や付帯的なエピソード等の幅を膨らめてあげるのです。

質問は、その性質によって様々な区分がありますが、相手との関係性や情報の共有性、目的意識、立場等によってその質を選択する必要が出てきます。つまり聞き手である自分が相手の話しを盛上げる役割であるので、「はい」「いいえ」で返答できる質問(クローズクエスチョン)は殆ど不要で、内容を付加する質問(オープンクエスチョン)に限られます。その中でも否定的な追求質問は避けるべきです。

質問はその話す内容を小説とみなし、登場人物とその関係性、場所、時代や季節、そんときの感情、その後や現在との変化などを問います。

<質問>
(4)登場人物の性格、関係性や状況などの質問。
(5)場所や雰囲気、季節、時代、時間的な質問
(6)相手本人のその時の感情、その他の登場人物の感情、あるいは感情の想像を質問。
(7)原因や動機、どうしてそのような事柄が起こったのか。
(8)どのような方法、手段をとったのか、より具体的な質問。
(9)予測の不一致。相手は考えて行動したはずなのに、どうして思っていた通りに進まなかったのか。
(10)if的質問。もしその時、別の手段をとっていたのなら?
(11)その後の関係性や、現在との関係に対する質問。
(12)これから、未来に対する質問。

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 0461 転職のスキル、準備編58 コミュニケーションスキル6

●聞く技術
聞くと言うことは、相手が話している状態なので、そこに「技術」という言葉が加えられることで「より快く相手が話しをする」ように仕掛けること、そうなります。もちろんその前に、相手に興味を持って接し、相手が話しをしやすい環境を作りだし、好感を持たれる態度が必要です。

大きなポイントとしては、相手にストーリーを語ってもらうことです。つまり、相手の話したいことを小説化してもらうように応じるのです。具体的な対応としては「相槌」と「質問」です。 

相槌は会話上、潤滑油の役割となりますから、たいへん重要な役目を担っています。会話が弾むということは、お喋りの「ノリ」なわけで、お喋りは話し相手の刺激によって反応し、活性されてゆくわけです。この相槌が、まったく気のない返事だったり、どうでも好い様な表情をすれば、相手のお喋りは、次第にテンションが下がり、不満足なかたちで会話が途切れてしまうでしょう。

これは、例えば返事をするときにも、できるだけ「はい」を避けて返事をします。そうすると、別の言葉を考えることになります。「そうですか」「分かりました」等の簡単な代替や、話しや伝聞の中の人、物、場所、時間等の「繰返し」が相手には「しっかり聞いている」という印象を与えます。

相槌には「共感」と「驚き」、そして「感想」があります。これらは「よく聞いてるよ」と知らせる以上の「興味を持ってるよ」と、好奇心や期待を相手に返し、それによって、より会話や関係を充実したものに導く、ちょっとしたアイテムと考えて下さい。

<相槌>
(1)共感・・・・・・共感は相手の話している内容や、立場、感想に対して、肯定的に受け止めていることを知らせる、同意や調子合わせです。
(2)驚き・・・・・・大袈裟にならなくとも、驚きを相手に返すことは会話の潤滑油として十分な効果があります。直接的な表現でなくともアクセントを変えるだけも効果があります。加えて「驚き」には「誉める」という効用があります。例えば、部下に仕事を頼んで、直ぐに完了を報告したとき「もうやり終えたのか、仕事が早いねぇ」と言わず「おっ、早いね!」と、ちょっとした驚きでも「誉める」と同等の効果があります。誉め言葉が省略された形になっています。
(3)感想・・・・・・感想には共感と批判があります。共感の感想は簡単に一言で良く「面白い」とか「楽しそう」等でOKです。批判的感想は、つい相手の話しに対し、共感できない部分や流れがあったとき、直接的な表現を避けるために使用します。例えば、「そんな方法でやるからダメなんだ、失敗するんだ」等の批判が口に出てしまうような場合でも「君がそう考えたことは残念だ」とか「がっかりした」とかの感想的な表現に置換えます。個人的感想は相手が否定、批判ができない感情表現です。

この感想表現は、職場でも部下や女性に対して批判や叱るような場面で、有効とされています。相手の失敗や欠点等を直接的な言葉で強く叱り、また否定や批判をすると、相手はあなたに対して「防御態勢」を取り、素直な受取ができなくなります。繰返し同じようなことが起こると関係性は悪化し、改善が困難になります。


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 0460 転職のスキル、準備編57 コミュニケーションスキル5

(3)ノックアウト・ファクター
これはリスクの一つですが、会話をする相手のどこに潜んでいるかは分かりません。ノックアウト・ファクターは相手が嫌悪を顕(あらわ)にするコミュニケーションでの言動です。

例えば、あなたが何かのセールスで新規開拓のため飛込み訪問をするとします。初対面、見ず知らずの人に自社の製品について、どれだけ優秀で、どれだけあなたに利益を生み出し多くの貢献をするのか、その製品の必要性を説くのです。あなたは喫煙者で緊張を解(ほぐ)すため、馴れない仕事のストレスを感じて、大事な新規開拓の訪問前にタバコを何本となく吸ってから臨んだのです。ところが相手はタバコ嫌いで、煙はもちろん、その匂いを仄(ほの)かに感じただけで強い不快感に襲われ話を聞くどころではありません。しかし、あなたは気がつく事もなくセールストークに夢中です。これでは商談の結果も困難になってきます。

このようにノックアウト・ファクターは、あなたの言動によって相手は嫌悪と不信を抱き、心理的に強い不満や警戒心、あるいは強固な防御態勢をとり、あなたの発言内容はもちろん、あなたそのものの関係性を拒否する可能性を孕(はら)みます。

話し手からすれば、このリスクはコミュニケーションを行う上で避けなくてはなりません。また、同時に受け手である相手も望んでいないことで、常に触れたくない部分を意識しているわけでもありません。しかし、ノックアウト・ファクターの問題は、予め予想できる範囲と、全く予測不能な固有の問題が存在します。聞き手が無防備で、好意的であったとしても、話し手の言動がきっかけとなって感情を刺激することは少なくありません。
ノックアウト・ファクターで予測できるリスクというのは、常識的な範囲に留まります。「相手との関係性」「立場や状況」「性格や理解力」「会話の場所」等が主なリスク要因となり、聞き手の決定権と同様ですが、ノックアウト・ファクターはその致命的リスクを指します。

これに対して個別に発生するリスク、ノックアウト・ファクターは相手個人の性格的な性質、例えば悲観的であったり、心配性、神経質、懐疑的、楽観的、価値観や先入観、知識格差、興味の喪失など、その個人の特有な性質、状況を考慮するものです。しかし、これらの対応には、相手に対する人的興味はもちろん、関係性や親密度、立場や場所などの環境的考察、相手と接することで観察や想像によって注意を払い、探る他ありません。
さて、先に紹介したコミュニケーションにおける3つの法則は、その法則を知らずとも、また意識しなくとも現実に起こるリスクであり、効果であります。聞き手の決定権とノックアウト・ファクターは自分が話し手であるときのリスクで、聴く効用については自分自身の役割は受け手であり「聞く技術」が試されます。

ノックアウト・ファクターはどこにどのようなリスクがどの程度、潜んでいるのかは関係性の継続、いくらかの時間を共有しないと困難です。性格や先入観はもちろん、年齢や性別、その場所での状況、様々な要因が考えられますので、対処があるとすれば「常識の精度を高める」といった、少し曖昧な表現でしかありません。
聞き手の決定権についても同様なことが言えますが、大雑把(おおざっぱ)なリスクを紹介するよりかは「交渉術」と「詐欺師」の話しから具体性を探った方が楽しいでしょう。しかし、これより先に「聞く技術」の簡単な紹介から始めましょう。

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