0204 所得税14 利子所得6 合同運用信託(貸付信託)

貸付信託も合同運用指定金銭信託の一種ですが、内容は少し異なってきます。

貸付信託には「貸付信託法」という個別信託法に位置する法律があります。
金銭信託の場合、その運用対象となる幅は広く、貸付金、手形割引、公社債、預金、不動産、株式となっていますが、貸付信託の運用では通常、貸付と手形割引に限られています。そして自益信託(当ブログ0202で解説、委託者=受益者)として設定され、受益者の受益権は、受託者が発行する、受益証券を保有することで受益者の地位が約束されます。受益証券は金融商品取引法上の有価証券にあたります。

貸付信託には「収益分配型」と「収益満期受取型」の2つがあり、分配型は収益金を半年ごとの決算日の翌日に受取るタイプで、満期受取型は2年と5年の満期日に収益計算されます。通常は予想配当率が表示され、収益計算は運用されて得た収益から諸費用や信託報酬を差引いた収益が分配されます。

信託期間では、貸付信託の場合2年以上という規定がありますが、1年を過ぎれば受託者の買取り可能とさています。
それから、この貸付信託も運用方法が特定されていない金銭信託にあたり、受託者が信託銀行であれば、元本保証の特約を付けることができます。
※ 「特定」は一般語でなく、この場合は用語として使用されています。前回のブログ0203で説明しています。

貸付信託の受益証券には「無記名式」と「記名式」とがあります。貸付信託法では原則、無記名式とされていますが、現状は記名式の方が多数とされています。手続きによってどちらでも可能ですが、法的な対応が異なってきます。

例えば、受益証券の場合は、証券なので譲渡(売買い)や質入れが可能であるわけですが、実際に譲渡等を行う場合、無記名式では、当事者合意のほかに、受益証券そのものを引渡す必要があります。記名式の場合は手続きのみとなりますが、記名式であっても、受託者の承諾がないと譲渡はできないとされています。

また、記名式の受益証券では、受益者の請求によって証券の分割や合併が可能とされていますが、無記名式ではできません。

貸付信託も合同運用指定金銭信託と同様の扱いで、所得税法上では利子所得に該当します。予定配当率や元本保証が利子所得の有力な対象条件と考えられます。ただし、譲渡においての経済的利益は譲渡所得の対象になります。

また受益証券は印紙税法の課税文書とされています。

信託協会、「信託の分類」→http://www.shintaku-kyokai.or.jp/trust/trust03_10.html
信託協会、「金銭信託、貸付信託」→http://www.shintaku-kyokai.or.jp/trust/trust01_08_01.html
信託協会、「信託税制」→http://www.shintaku-kyokai.or.jp/trust/trust03_09.html

※  利子所得の税率は現在所得税が15%、住民税5%の計20%の税率ですが、来年の平成25年1月1日から、現行の予定では平成49年12月末までの期間は、現行の所得税率に2.1%乗じた額が上乗せされます。これは東日本大震災の復興による特別措置とされています。所得税率が結局1.021倍になりますから平成25年以降の利子所得の税率は15.315%+5%で、計20.315%になります。


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