1989年→IOT

世の中の出来事を1年で区切ると、それは毎年「激動」と呼ぶことになるでしょう。しかし一つの大きな転換点と言える「劇的」な年があるとすれば、それは1989年です。

この年、昭和64年は1週間で終わり平成元年となります。日本経済は歴史上最高の景気で、東証大納会で株価は3万8千円超を記録しました。主婦は小遣いで株式投資を始め、サラリーマンは会社の経費で夜ごと飲み会に明け暮れ、就活で面接に来た学生はホテルでのフルコースが用意されたり、カメラや商品券等も贈り物として頂ける、今の就活から考えれば夢のような、そんな具合だったのです。

街角やTVからは流行のランバダが響き、北野武初監督の「その男、凶暴につき」が話題を呼び、洋画では「恋人たちの予感」のメグ・ライアンが可愛く、村上春樹の「ノルウェーの森」と吉本ばななの「TUGUMI」が売れに売れました。

初めて消費税が導入されたのも確かこの年です。
しかし、2月には手塚治虫が亡くなり、4月には松下幸之助が去り、6月には美空ひばりが他界し、11月には松田優作が逝き、彼がハリウッド進出した「ブラックレイン」は奇しくもこの年に公開されたものでした。

日本がバブル景気に浮かれる中、世界は着実に「激変」してゆきます。8月にハンガリーで起こったヨーロッパピクニックは、やがてベルリンの壁の崩壊へと導くこととなり、このことは米ソが対立していた東西冷戦が事実上終結したことを意図するものでした。

89年に起こった日本と世界この2つの劇的な終焉は、少なくとも30年後の今日に至るまで様々な変化を必然的にもたらすことになります。
日本の場合、バブル以降、土地神話は崩れ、経済成長や企業成長の約束はなくなり、年功序列型の雇用制度も困難となり、就職難や結婚離れ、非正規等の収入格差、個人の価値観やライフスタイルは「連帯」→「個別」へ激変してゆきました。

一方、冷戦後の世界のパワーバランスは国家間の政治的、軍事的な要素に加えて、宗教、民族、企業、地政学的要素と複雑さを増し、資本主義が世界の支配を加速すると、国や民族、地域や個人によって金持ちと貧困の差を継続拡大させ、世界はその争いと報復に満ちあふれる毎日となりつつあります。

さて、これらバブル経済と東西冷戦構造の2つの崩壊以外にあともう一つ大きな変化をもたらせたことがあります。それはテクノロジーの進化「デジタル技術」のことで、つまりパソコンや携帯電話等の普及を意味します。


70年代は銀行のATMや私鉄の自動券売機自動改札等のシステムにコンピュータが活躍し、少しづつ普及してゆきました。しかし、比較的大企業である一部の専用業務に限られていたのが実情でしょう。小型化され中小企業が利用できる価格帯になったのは80年代で、現在のデスクトップ型PC、89年にはノート型のパソコンも東芝から発売されました。ちなみにアップル社のマッキントッシュの発売は84年で当初メモリーは128キロバイトフロッピーディスクによる物でした。このころ家庭向け、個人向けに普及していたのは、まだワープロと呼ばれるもので、ワープロでも高級な製品では一部表計算ロータス123)ができる製品もありました。

90年代に入りパソコンが急激に普及してゆきます。更に90年代後半からは携帯電話も爆発的に普及してゆくことになります。

現在のNTTが電電公社から民営化された年が85年でそのころの携帯電話はショルダーホンと呼ばれる大きく重たいものでした。とても携帯とは呼べません。小型で薄型、ポケットに入るようなサイズになったのは89年で、この頃はまだアナログでの通信でした。一番最初に発売されたデジタルの携帯電話は93年で、この年からデジタル通信網が急激に発達してゆきます。

95年には「ウィンドウズ95」が発売され、この頃パソコンの価格はサラリーマンでも個人的に購入できる程度となり劇的に普及してゆきます。ウィンドウズ95の初期型ではインターネット接続機能は殆どなく、あとからバージョンアップしてからインターネット対応となってゆきます。パソコンの普及、携帯電話にビジネスチャンスを見いだした企業の参入で、携帯電話のサービスや価格、利便性から一気に普及してゆき、デジタル通信のインフラも急ピッチで発展してゆきます。89年の携帯電話普及率は人口あたり僅か0.3%で95年では約10%、2000年では58%、2012年には100%を超え、現在では130%以上の普及率(PHSを含む)となっています。またPCの処理速度は90年代前半から比較すると100倍以上、通信速度はアナログ時代から比較すると1000倍以上の速さと言えます。

今どきではパソコンは買わず、スマホやアイフォンだけで過ごす若者も増えていて、日常生活において利用する端末とすれば、PCよりスマホの方が利便性の高い端末となってきています。

このスマートフォン、アイフォンの普及によって情報の自動化が加速してゆきます。現在でも、例えばスマホのニュースアプリをダウンロードして利用すると、新しいニュースが届いたことを画面は知らせてくれます。スケジュールや健康状態でもそうです。
例えば、近い将来電気自動車を購入したとします。運転しているとナビの画面は様々な情報をリアルタイムで知らせてくれます。目的地までの距離や時間は既にサービス化されています。あと、バッテリーがどの程度残っていて、充電ステーションまでの距離や場所案内も知られてくれて、タイヤや消耗するパーツの交換情報も知らせてくれます。

これらのサービスは通信によって常に新しい情報が提供され、一方、その情報の提供先である様々な企業は、これらの個別情報の解析などをコンピュータそのものが自動で行い、適切で具体的な情報をユーザーに送り返すシステムが進行しているのです。これがIOT(internet of things)と呼ばれるものです。

今後IOTはますます発達してゆきます。このソフトウェア中心の物作りが企業の成長や収益を大きく左右するかも知れません。また、ユーザーの商品の購入やサービスの利用についてライフスタイルもより多様化されてゆくでしょう。

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