0256 所得税62 事業所得32 繰延資産

繰延資産は、減価償却費であった無形減価償却資産(無形固定資産)の考え方と似ています。

繰延資産の性格は、その資産が当期に限らず次期以降数年に渡り事業に貢献をするような資産で、その支出額を一定の期間(5年)に渡り均等償却します。

繰延資産は貸借対照表の資産に計上しますが、減価償却費と同様に当期分は損益計算の中で費用処理されます。尚、青色申告の決算書を見ると、資産計上では貸借対照表の中「繰延資産」としてありますが、費用処理の場合には減価償却費の科目で、いっしょに計上されています。

繰延資産に該当する範囲は次のようになります。

(1)開業費
事業を開始するまでの開業準備期間に、特別に支出した費用で、その効果が1年以上に及ぶもの、とされています。ただし、開業費の繰延資産の計上は任意とされています。
具体的には広告宣伝費、交際費、交通費、借入金の利息、アルバイト費や光熱費など、任意で経費計上できます。10万円以上の物品、店舗等の保証金は開業費として計上できません。

(2)試験研究費は平成19年3月末日までの費用で、以後は資産計上できなくなっています。

(3)開発費
開発費の繰延資産計上も任意とされています。
新経営組織の採用、資源開発、市場の開拓のため特別に支出した費用。具体的には、技術習得に係る指導料やセミナーの受講料、特許権使用料やコンサルタント料、マニュアル作成費、人件費、その他。
★研究費と開発費については、もう少し詳しい次回ブログ0257→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20130401

(4)その他
イ : 公共的施設の建設、設置、改良等での負担。
福祉施設や図書館、公衆トイレ、体育館、銀行、百貨店、学校や病院など他。負担した者がその施設の一定の使用ができる場合は、対象物耐用年数70%(最大10年)の償却期間となります。それ以外は耐用年数40%相当の償却期間となります。

ロ : 共同的施設の建設、設置、改良等での負担。
商店街等のアーケードや日よけ、共同宿泊所や共同案内所、協会等の会館など他。負担した者がその組合員、協会員等としての使用ができ、その施設が協会等の本来の目的にそった運営が行われている場合は、その対象物の耐用年数70%(最大10年)の償却期間となります。ただし、負担金が土地の取得による部分であれば償却期間45年となります。
また、商店街のアーケードや日よけ等に関しては、償却期間は通常5年で、その対象物の耐用年数が5年未満である場合は、その耐用年数が償却期間となります。

ハ : 建物を賃借する権利金等の支出。
店舗や事務所の賃借契約で、礼金や保証金,更新料等で将来に返却されることがない金額については償却期間が5年で、契約期間が5年未満であればその契約年数、または更新時あらたに保証金等の支払いが生じる場合には、その更新までの期間が償却期間となります。
また、新築建物で賃借契約における権利金等の支払いが建設費の大部分に相当し、その建物が存続する程度の長期にわたり賃借状態である場合には、その建物の耐用年数70%相当が償却期間になります。

ニ : ノウハウの頭金等
フランチャイズ・チェーンの加盟料、一時金等が該当します。償却期間は通常5年ですが、有効期限が5年未満である場合や、契約更新時に再び一時金や頭金の支払いが生じる場合にはその更新までの期間が償却期間にあたります。

ホ : 広告宣伝用の資産を贈与したことにより生じる費用
事業名や製品名などの広告効果のある資産を取引先等に贈与した場合の支出。償却期間はその対象物の耐用年数ですが、最大5年までとされています。

ヘ : 業者団体等の加入金
事業を継続的に営む上で、同業種等の団体組織に加入した時に支払う加入金等。償却年数は5年です。

ト : 出版権の設定の対価
「出版権の設定」とは大雑把に言うと、複製して頒布ができ、その販売によって利益を得る権利で、通常では作家(複製権者)が出版社(出版権者)に対して設定を行います。償却期間は設定契約に定めている期間、設定契約に定めがない場合は3年です。

チ : スポーツ選手等の契約金
契約期間が償却期間となり、契約期間の定めがない場合には3年です。

リ : ソフトウェア
当ブログ0258 ソフトウェアの償却についてを参考にして下さい→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20130403

尚、法人企業では上記の他、「創立費」「社債発行費等」「株式交付費」が繰延資産としての計上を認められています。

国税庁、公共的施設の負担→http://www.nta.go.jp/taxanswer/hojin/5462.htm
国税庁、会館建設の負担金→http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/hojin/06/01.htm
柴田尚之税理士事務所、繰延資産→http://www.shibata-office.jp/article/13725083.html

★当ブログ0231免責事項をお読み下さい。→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20130102

★上記の本の感想は当ブログ0250で読めます→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20130312