0257 所得税63 事業所得33 繰延資産、研究と開発

繰延資産における資産計上の科目として「研究開発費」は2007年4月以後の計上が認められなくなりました。同じく試験研究費も資産計上ができなくなり、現在では「開発費」のみが繰延資産の計上が許されています。

この「試験研究費」「研究開発費」「開発費」3つは、どのような区分けをされていて、なぜ開発費だけが資産計上できるのか考えてみましょう。

企業や事業にとってその分野の研究や開発は、事業を存続する上で重要な活動と言えます。しかし、これらに生じる費用は繰延資産が意味するように「将来に渡り事業に貢献し、利益を生み出す」という性質の支出としては疑問の範囲でしかありません。継続して利益に貢献すれば資産計上すべきであるし、失敗に終わればそれは単なる費用で、支出額が莫大であれば事業の存続さえ危険な状態に陥ります。このように研究や開発に係る費用は、将来に対して何ら約束された類の支出ではなく、従って投資より投機性が高いという判断理由になります。

もう一つは研究費の段階から資産計上を可能とすると、資産項目の要件が曖昧になり、企業間における会計上の比較に正確さを欠くことになります。

このように将来の貢献度が、不明であることが資産計上を否認する原因となっているのですが、なぜ開発費だけが認められているのでしょうか。ここで「研究」と「開発」の意味と範囲の理解が必要となります。

まず研究とは「新しい知識の発見を目的とした調査、探求」と定義され、開発とは「新しい製品・サービス・生産方法(以下、製品等と言う)についての計画もしくは設計、または既存の製品等を著しく改良するための計画もしくは設計として、研究の成果その他の知識を具体化すること」と定義されています。

なんだか良く解りませんが、試験研究の範囲は新しい知識の獲得までなので、製品化されるより前の段階、技術が製品化あるいは実用化される前の理論段階、つまり成果は紙面上にある状態です。

一方、開発では新技術を利用し製品化された以後の費用で次の4つに分けられています。
(1)新技術の採用
(2)新経営組織の採用
(3)資源の開発
(4)市場の開拓

上記の中で繰延資産の範囲としての「開発費」に該当するのは(2)(3)(4)で、(1)は除外されています。

上記(1)は、研究開発費の中の開発費と言う位置づけで「研究開発費=試験研究費+開発費(1)」となります。この「新技術の採用」という開発費の意味するものは、単に初めて採用する技術や特許をそのまま使用して製品化しただけでは該当せず、あくまでも研究開発を目的とした時に必要となった、特許権使用の頭金や技術導入費を指しています。
試験研究費と研究開発費は原則、その費用が発生した期に全額費用処理することになっています。通常は「一般管理費」の項で処理されますが、その費用を製造コストに賦課しいる場合は「製造費用」として計上します。

(2) の「新経営組織の採用」では配置転換や人員整理等に要する特別退職金、機械等を含めた様々な移設費用が挙げられます。

(3) は鉱山の深鉱や試掘のための費用など。

(4)は新しい販路の開拓や市場調査、広告宣伝費などがあります。

尚、開発費は発生した期に全額費用計上することも、繰延資産にすることも、どちらでもOKとされています。繰延した場合の期間は最大5年で均等償却になります。

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