0321 所得税124 給与所得29 源泉徴収税額

所得税は10種の所得に区分され、それぞれの規定に従って算出されます。給与所得では一般的に会社から従業員に毎月、働いた分に対して給料が支払われます。従業員からすれば、この受取った給料が所得となり、規定に従った計算により所得税を納付するわけです。

給与所得は「源泉徴収制度」の対象となる所得で、この制度では給与を支払う会社側が、従業員に支払う給料から、所得税に係る税金額を計算して天引きし、会社が従業員の所得税を納付します。
このとき会社は従業員の所得税納付額を一旦預かり、課税され納税義務が生じる従業員の代わりに納付します。このことを「源泉徴収義務者」と言います。この源泉徴収制度については→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20120911

さて、これまでこのブログ、ビジネスていレベル研究所における所得税の「給与所得」では主に、給与(収入)の計算規定を中心に案内をしてきました。給与計算においての一覧は当ブログ「0309賃金計算の概要→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20130819」を参考にして下さい。

ごく一般的な毎月の給料からみると、収入は「基本給」と残業や早出等の「割増賃金」と通勤代などを含めた様々な「手当」で、これらは全て加算項目であり、この合計が「給与支給総額」となっています。ここから非課税扱いの通勤代や、健康保険料、介護保険料、雇用保険料、厚生年金保険料等の「社会保険料」を差引いた金額が「課税対象額」ということになります。
「給与課税対象額(課税上の所得)」=「総支給額」−{「通勤代」+「社会保険料」}

この上記の課税対象額を源泉徴収税額表で、その金額に該当する課税額を調べるのですが、源泉徴収税額表には月額、日額、賞与と分かれ、支給内容によっていずれかを選定します。

そして、それらの税額表には「甲」の欄、「乙」の欄などがあり、「扶養控除(異動)申告書」の手続きによって「甲」欄が適用されます。扶養控除申告書は言わば所得税の控除手続きにあたります、従ってこの書類を提出しない場合「乙」欄の適用となり、意味的には控除がされない高い税額が徴収されます。乙欄の適用者は年末調整も受けることができません。所得控除を受けるには確定申告するほか手段はありません。

源泉徴収税額表
<月額表>
最も一般的である給料「月給」のように、毎月決められた日に支払われるものや、半月毎、あるいは10日毎(旬ごと)に支払われるもの、3ヶ月毎や半年毎などが該当します。
<日額表>
働いた給与を日毎、あるいは週毎に支払われるものが該当します。他には、日割計算で支払われるものや日雇賃金も日額表から算出します。例えば、採用され月の途中から出勤したような場合は日割り計算して日額表を使用します。
日雇い労働の場合は日額表の「丙」欄が適用されますが、条件は日額計算、もしくは時間給計算で支払う場合で、勤務が最長2ヶ月以内であること。仮に2ヶ月を超えた場合は、超えた分から日額表の「甲」もしくは「乙」が適用となります。
<賞与>
 賞与の場合は「税額表」ではなく「算出率表」を使用します。
 
もともと所得税の「所得」とは、様々な「控除」を経て残った額を課税対象とするものを「所得」と定めています。

所得税納付額が確定するまでに、様々な計算過程があり、控除は大きく「所得控除」と「税額控除」に分かれます。税額控除は計算上では最終段階のもので、税率を乗じて算出した税額から差引きます。従って節税効果の大きい控除となりますが、この控除は通常、確定申告において認められるため、源泉徴収や年末調整の段階で税額控除はありません。例外的に「住宅借入金等特別控除」などは、2年目以降に年末調整で控除可能です。ただし、住宅等を取得した年の翌年、初回の手続きには確定申告が必要です。

さて、所得控除ですが、所得控除は次のようなものがあります。尚、各種その控除の性質上、どの段階で控除されるのかを3つの段階に示しています。源泉徴収の場合は<源>、年末調整の場合は<年>、確定申告が必要な場合は<確>で表し、ケースによって控除段階が、異なる可能性があるものは複数を記し、必ずしも1つであるとは限りません。
(1)雑損控除<確>・・・・・・・・・・災害、盗難などによる資産の損失。
  →http://d.hatena.ne.jp/sotton/20131027
(2)医療費控除<確>・・・・・・・・・生計を共にする親族にかかる医療費で、一定額以上の場合。
  →http://d.hatena.ne.jp/sotton/20131107
(3)社会保険料<源><年>・・・・・・健康保険料、介護保険料、雇用保険料、厚生年金保険料など。
  →http://d.hatena.ne.jp/sotton/20131109
(4)小規模企業共済等<年>・・・・・・小規模企業共済の掛金、心身障害者扶養共済制度の掛金、確定拠出年金個人型の掛金など。→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20131111
(5)生命保険料<年>・・・・・・・・・ 一定の要件を満たす生命保険や個人年金など。
  →http://d.hatena.ne.jp/sotton/20131121
(6)地震保険料<年>・・・・・・・・・一定の要件を満たす地震等の災害保険。
  →http://d.hatena.ne.jp/sotton/20131125
(7)寄附金控除<確>・・・・・・・・・国や地方自治体、公益団体などへの寄附金。
  →http://d.hatena.ne.jp/sotton/20131129
(8)障害者控除<源><年>・・・・・・本人、配偶者、扶養親族が障害者または特別障害者である場合。
  →http://d.hatena.ne.jp/sotton/20131201
(9)寡婦寡夫)控除<源><年>・・・一定の要件を満たす寡婦もしくは寡夫である場合。
  →http://d.hatena.ne.jp/sotton/20131203
(10)勤労学生控除<源><年>・・・・・本人が学生で一定の要件を満たす場合。
  →http://d.hatena.ne.jp/sotton/20131209
(11)配偶者控除<源><年>・・・・・・納税者と生計を共にする配偶者。幾つか要件あり。
  →http://d.hatena.ne.jp/sotton/20131215
(12)扶養控除<源><年>・・・・・・・納税者と生計をともにする親族で6親等内の血族および3親等内の姻族。
  →http://d.hatena.ne.jp/sotton/20131221
(13)配偶者特別控除<年>・・・・・・・納税者と生計を共にする配偶者で一定の要件を満たした場合。
  →http://d.hatena.ne.jp/sotton/20131215
(14)基礎控除<源><年>・・・・・・・全ての納税者が対象、38万円の控除。
  →所得控除の計算手順→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20131223

上記の控除で<源><年>となっている場合は、源泉徴収で控除されなかったものは手続きによって年末調整で控除、洩れや不備で控除されなかった場合は確定申告において控除できる可能性があります。
この控除を考慮して「源泉徴収税額表」では、主に扶養親族の人数によって税額が異なってきます。つまり扶養親族の数が多いほど源泉徴収額は低額となります。

源泉徴収税額表の「甲」欄では、その扶養親族の人数、0人〜7人までの税額表が記されています。人数が多いほど税額は低くなりますが、この扶養親族の人数カウントは、単純に何人いるか?ではなく、上記の所得控除に該当する数を差しています。
上記の控除項目のうち、源泉徴収時に控除される項目は(3)(8)(9)(10)(11)(12)(14)です。(3)は社会保険料なので、給与から天引きされています。(14)の基礎控除は全ての納税者が前提ですから、税額表でいう扶養親族数が0人の場合が、基礎控除のみの税額となります。

「乙」欄は、「扶養控除申告書」を提出していない者が該当する欄で、つまり控除手続きを行われていない税額となります。この場合は確定申告で控除を受けるしかありません。
社会保険料基礎控除を除いた控除項目は、障害者、寡婦寡夫)、勤労学生、配偶者、扶養親族の5つで、これらの控除項目の一つが税額表「甲」欄の扶養親族の1人としてカウントします。

例えば、納税者に配偶者がいると扶養親族のカウントは1人で、配偶者と扶養親族が1人いるとカウントは2人ですが、その扶養親族が障害者である場合、カウントは3人となります。尚、扶養親族が16歳未満の場合はカウントしません。

このように、源泉徴収税額表では、まず給与の支給内容で「月額」「日額」「賞与」と分かれ、扶養控除申告書の提出がされているか否かで「甲」欄「乙」欄のが選定され、適用条件に応じた欄から所得額の範囲にある税額を導き出します。

国税庁、税額表の種類と使い方→http://www.nta.go.jp/taxanswer/gensen/2511.htm
国税庁、平成25年源泉徴収税額表→http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/gensen/zeigakuhyo2012/data/all.pdf
国税庁平成26年源泉徴収税額表→http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/gensen/zeigakuhyo2013/01.htm
国税庁源泉徴収のしかた→http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/gensen/shikata2013/01.htm
★賃金計算の概要(給与計算)→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20130819
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