0202 所得税12 利子所得4 信託について

さて、利子所得の中に「合同運用信託」「公社債投資信託」の収益の分配金があります。所得税法上は利子として認識していることになりますが、その道の人ならまだしも、どういうものであるのか、あまりピンときません。

この「信託」は大雑把に言えば、プロに財産を渡して、その財産を運営や管理、運用や処分をしてもらい、一定の利益を受取ることです。

日本の信託は、信託法と信託業法の2つの大きな信託に関する法律がありますが、実際には金銭や土地、建物等の財産の性質や、権利関係に関して、多くの法律が絡み、法律面からみると複雑です。

信託を行う関係では、信託財産を提供する者(委託者)が、その財産を引受け管理、運営を行う者(受託者)によって信託目的を成し、それによって利益を受ける者(受益者)で構成されます。この時、委託者=受益者の場合は自益信託で、それ以外は他益信託、もしくは目的信託(受益者がいない)にあたります。(ただし信託の分類には多くの分類方法があります)

不動産の信託のでは、様々な信託形態がありますが、例えば所有している土地を信託によって処分する場合、委託者が所有する土地を信託し、受託者に信託財産として渡します。この時、登記等を行い土地の所有権は受託者に移ります。受託者(信託銀行など)は、その土地を利用してマンションなんかを建て、その資金調達から建築施工を依頼、実施して、完成すれば、分譲販売を行い、その収益から借入金を返済、諸費用、信託報酬等を差引き、受益者に元本と収益を交付します。不動産では多くの場合、委託者が受益者となる自益信託です。

また、証券による信託で、今では広く認知された投資信託の場合では、投資信託委託会社(委託者)が、その商品の内容を策定し、集めた信託財産の運用指図を受託者に行い、受託者(信託業務を営む金融機関)は、その運用指図に基づいて財産運用を行います。この時、委託者である投資信託委託会社(証券会社など)は、受益権を発行します。受益者とは、正確には「受益権を持つ者」ですから、証券会社等で購入する投資信託は、この受益権を買ったことにあたります。このような関係を他益信託と分類できます。

それから個人の有志、法人等で、社会的貢献を目的とした信託、これを公益信託と言います。(信託締結の条件や手続きは異なりますが)例えば奨学金の支給や学術研究、文化財の保護や環境保護に対する助成等を目的とした信託で、特定の受益者がいない「目的信託」に該当します。

上記3つの例は、信託の中でも最も一般的な信託形態と言えますが、信託では金銭や動産、不動産問わず、あらゆる財産が信託として成立することが可能(ただし、目的信託の信託財産は、ほとんどが金銭に限られています)で、信託契約を締結するのは委託者と受託者になりますので、合意すれば信託目的は自由に設定できます。従って信託形態は多数存在し、その形態によってルールも少しずつ異なってきます。その上、例外も多くあり、ルールの内容はより複雑です。

土地、建物などの登記や、権利等で登録が必要な財産では、信託に関しても同じく登記、登録が必要ですし、原則的に財産を貸し出すのではなく、所有権が移転しますので、委託者が亡くなっても戻されることはなく、その信託財産は相続されますし、受託者に能力がなくなっても新しい受託者が選任されることになります。

信託法と信託業法は、商法や民法の特別法の位置づけですので、民法と信託法と、どちらも法律的に適用できる事象では、信託法のルールが優先されることになります。

所得税法では、この信託から得られる経済的利益、受益者が得る「儲け」は、もちろん所得とみなして課税します。そして担税力を考慮しますので、その経済的利益は、どのような性質の利益であるのかを問い、所得の種類を分けるのです。

ただでさえ複雑な所得税ですが、この信託によって、より一層に複雑さを増し、理解するのは一苦労です。

信託協会、「信託のしくみ」→http://www.shintaku-kyokai.or.jp/trust/trust01_01.html
信託協会、「信託の機能」→http://www.shintaku-kyokai.or.jp/trust/trust03_00.html
信託協会、「金融商品取引法と信託」→http://www.shintaku-kyokai.or.jp/trust/trust03_14.html
信託協会、「信託財産の独立性」→http://www.shintaku-kyokai.or.jp/trust/trust03_05.html

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