0232 所得税40 事業所得10 棚卸資産の評価方法

棚卸資産の評価方法には大きく二つに分かれます。一つは「原価法」で、もう一つは「低価法」と呼ばれるものです。
節税を考える場合、期末の棚卸資産が少ない程、当期の費用算入額が増えますから、その分の収益が減少し、課税対象となる所得額が少なく計算されます。

棚卸資産の計算は「単価×数量」です。数量は実際に棚卸を実施して種類別にカウントします。問題は「単価」の算出方法なのですが、単価を出す前に仕入れた商品などの「取得価額」については当ブログ0229→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20121227で説明した通り、運搬料等の付随費用を含めます。その上で事業所得における棚卸資産の評価(計算)は、通常認められている「原価法」によって計算しますが、その原価法には現在6つの算出方法があります。

(1) 個別法
 この計算は期末棚卸資産の全部を、その一つひとつ個別の取得額で算出し、その額を評価額とします。従って大量取引の商品や、規格によって価格が決まっているような物には適用できません。例えば貴金属や宝石等が該当します。

(2) 先入先出法(購入順法)
 先に仕入れた商品(古い順)から販売されたもの(払出し)とみなし、その商品単価を決める方法です。従って期末の棚卸資産では、最終仕入の単価に近い値で計算することになります。この方法では物価が上昇する局面では利益が増し、デフレのように物価下落時には利益が減少する傾向があります。

(3)総平均法
 棚卸資産の期首繰越額と当期の期中仕入れ額を合計して平均単価を算出し、その単価で期末の棚卸資産を計算します。

(4)移動平均
 同じ種類の商品で、仕入れの度に取得価額が異なる場合、現在の在庫における取得価額と新たに仕入れた取得価額との平均単価(加重平均)を払出単価として計算し、それを仕入毎に繰返してゆきます。この評価方法では仕入れ値等の変動を、比較的正確に反映させますが、記録としては手間が煩雑になります。

(5)最終仕入原価法
 当期の期末、最後に取得した価額を単価として、期末棚卸資産の算出をします。この方法は、計算そのものは簡単ですが、単価算出に最終仕入れの「時価」が強く反映された結果となりますので、大きく変動すれば所得額に影響を与えます。

(6)売価還元法
 通常の販売額の総額に原価率を乗じて、期末の棚卸資産の評価額を行います。この場合の原価率の計算は、
「{期首棚卸資産の取得価額の総額 + 期中の取得価額の総額} ÷ {期中の販売額の総額 + 期末棚卸資産の通常販売額の総額}」となります。

少し複雑に思えますが基は「仕入値÷売価」で、その変形と言えます。「期中の販売額」とは、値引きや割戻しがあった場合、そのまま計算に含み、「期末棚卸資産の通常販売額」では、値引き等の考慮はありません。この方法は、種類や販売量の多い小売店や卸業者等で多く選択されています。

新規開業などにおいては、この棚卸資産の評価方法を選択して、事業開始の翌年の3月15日までに、所轄の税務署長に届出をする必要があります。

届出をして、その棚卸評価方法が認められると通常3年間は、その評価方法による算出で申告しなければなりません。
また、届出をしなかった場合は「最終仕入原価法」の算出が適用されます。

評価方法の変更についても、申請手続きによって所轄の税務署長の承認が必要とされています。上記以外にも棚卸の評価方法は幾つかありますが、その評価方法を選択する場合も、申請手続きによって税務署長の承認が必要となります。
※ 「後入先出法」「単純平均法」の評価方法は平成21年12月31日をもって除外され、選定できません。

所得税における棚卸資産の評価方法は原則、原価法となっていますが、青色申告の事業主には低価法の選択が可能となります。

この低価法とは、予め選定した棚卸資産の評価方法によって計算した額より、12月31日おける時価での棚卸資産の算出額の方が低い場合、低い方である時価での計算で申告が認められています。これによって原価>時価であれば、「原価による単価−時価による単価」その差額が評価損として費用計上されることになります。

※自家消費については次回に!→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20130117
国税庁棚卸資産の評価方法→http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/shotoku/08/01.htm
国税庁棚卸資産の評価方法の届出手続き→http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/17.htm

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