0233 所得税41 事業所得11 自家消費と必要経費の判定

事業としての資産である商品や製品、農作物などを販売せずに自分で消費をした場合、無論実際の売上はありません。外からの資金の流入はありませんが仕入れ等の経費は掛かっていますので、棚卸資産の勘定を行うと経費は自動的に算入されることになります。

所得税法では上記のような収入金額が生じない場合でも収入の計上が必要とされています。(所得税法39条)この時の収入額にあたる計算は所得価格、もしくは販売額(時価)の70%のどちらか多い方を計上することになっています。収入計上する時期については、事実があった年に属します。

また、自家消費ではなく、商品等を他人に無償であげた場合など(贈与)についても同様な会計処理となります。
贈与の中でも、その商品(棚卸資産)の移転原因が相続にあたる場合は、所得税法上の課税には該当せず、相続人がそのまま取得価額を引き継ぐことになります。

自家消費でもなく、贈与や相続でもなく、低額譲渡に該当する場合、低額譲渡とは販売価額(時価)の70%未満を指しますが、「時価の70%の価額 − 譲渡額」の差額分が贈与に当たるため、事業所得として収入計上が必要になります。例えば、販売価額が時価50,000円の椅子を知人に20,000円で譲渡した場合、50,000円×0.7=35,000円となり、差額の15,000円分が事業所得としての収入に計上し、20,000円は譲渡所得として課税されます。ただし、商品の時間的経過で型落ち等の事由で、値引や割引に関する相当価額は該当しません。

※ 農作物の自家消費の場合、農作物に関しては特則があり、収穫をすれば時価の価額で収入計上する必要があります。

前述した「自家消費」では、費用だけの算入を認めると、そのぶん利益が圧迫され課税対象となる収入金額が減ります。つまり国からすれば税収が減ることになります。所得税法はこれを認めておらず、同時に相当額の収入を立てて、費用の算入を相殺させる方法を取っています。このことだけに限らず、事業所得では必要経費の扱いの範囲をどのように定めているのか、その考え方についても知っておく必要が出てきます。

必要経費として認められる費用は、もちろん事業としての経費に限定されます。従って、個人的に使用した分の費用は除外されるのですが、混在している場合も多くあることでしょう。

「事業としての経費」とは、事業上の利益を獲得するために要した費用を指します。従業員の給料や店舗の家賃など、費用が事業のみに生じる場合は簡単に区分けできますが、例えば、携帯電話の購入や通信料などでは、通話明細で事業における関係者との通話か、個人的な知人との通話かを調べて計算することも可能ですが、通常では事業用と個人用の2つを使い分ける必要があります。

接待等での飲食代なども、本当に事業関係者と行ったのかどうかが問われます。領収書はもちろん、領収書だけでは判定できないので、事業日誌等に接待した相手先の企業名や出席者名の記録をしていた方が無難です。

また、資格試験等にかかる費用では、例えば、設計事務所の方がCADの資格を取るために生じた費用であれば、経費として認められる可能性は高く、仕事と直接的な関係がない資格であれば経費としての算入は否認されます。

仕事場と自宅が同じ建物、例えば、店舗兼自宅や事務所兼自宅等の場合では、光熱費や事務所の使用料は、「事業使用割合」として単純に比率を按分します。先に述べた電話代にしても、1台を仕事上でもプライベートでも使用している場合は、同じ按分で計算できます。

この事業使用割合は床面積の使用比率、建物全体の床面積のうち何割を事業として使用しているかの比率を、そのまま費用の比率として按分するのですが、この按分方法には規定がありません。「この場合はこうしなさい」という決まりがないので、一般的には事業用と個人用と混在する費用の按分する根拠となる基準は、前述した使用面積の割合、使用時間の割合、あるいはその二つを考慮した計算となります。自動車等の場合は使用実態にあった割合とされています。

賃貸の家の一部を事業用として使用している場合は、単純に月々の賃貸料に按分比率を乗じた計算でいけますが、持ち家の場合は、住宅ローンの金利や固定資産税、減価償却費、火災保険などを按分して算出します。

自動車も事業使用割合で計算します。ガソリン代や車検の費用、任意保険料などが該当しますが、購入時に付随する諸費用のほとんどは全額必要経費として認められます。しかし、交通違反等の罰金に該当する費用は計上できません。これは交通違反だけに限らず、違法から生じた罰則にあたる支払は通常、経費として扱われません。

年金や健康保険等の費用は事業所得としての経費には算入できませんが、所得税の算出時に控除できます。

この他では、父親が所有しているビルの1室を借り、事務所として使用したとき賃貸料を父親に支払った場合、借手である息子(事業主)が父親と一緒に生活をしていると経費計上はできません。同一生計(同じ世帯に住み、収支を共同で生活している)であれば費用としての算入は否認されます。これは、つまり支払った費用が外部の流出にならないからです。身内へ支払う費用であっても、世帯が別で収入や支出も別であれば費用計上は可能です。

国税庁、個人事業者の自家消費の取扱い→http://www.nta.go.jp/taxanswer/shohi/6317.htm
国税庁、たな卸資産等の自家消費の場合の総収入金額算入》関係→http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/shotoku/06/01.htm

★当ブログ0231免責事項をお読み下さい。→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20130102