0349 所得税151 課税標準の計算

所得税の課税は「資産の増加」を根拠に課税されます。
所得税の仕組み→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20120907
所得税の課税方法は主に3つあります。「総合課税」と呼ばれるものは、他の所得と合算して税率を乗じ、課税額を算出します。「申告分離課税」はその所得を単独で計算して納税します。源泉所得税は、支払を受けたとき既に所得税が天引きされています。
所得税の課税方法→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20120909
源泉徴収制度→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20120911

所得税の計算手順は次のようになります。
「各種の所得額」→「損益通算」→「総所得金額の算出」→「繰越控除」ここまでが「課税標準」と呼ばれる、収入、費用、損失の清算です。

次に「所得控除」→「課税総所得金額」と「分離課税」で規定の税率を乗じて「算出税額」を計算します。、その次に「税額控除」で控除した後の金額が「所得税額」です。
所得税額を算出した後、源泉徴収や予定納税等の先払いしていた税金分を差引いて「納税額」となります。確定申告は、この「納税額」までの計算となります。

すべての収入は所得税を計算する場合、10種の所得に区分されます。ここでの「所得」とは、収入そのものの金額ではなく、区分された10種の所得は各規定の控除があり、控除後の金額が「所得」となります。つまり、各所得は税法で決められた「経費」を差引いた金額となります。

経費を差引いた金額、「所得」は次に「損益通算」「繰越控除」と所得から損失を差引く手順に移ります。「不動産所得」「事業所得」「譲渡所得」「山林所得」は、通常は利益を生みますが、必ずしもそうではなく損失が発生する場合もあります。この損失を決められた手順によって他の所得から差引きます。次に一定の所得を合算して「総所得金額」を出し、繰越控除とよばれる、過去の損失の控除を行います。
ここまでの計算を「課税標準」と言います。収入、経費、損失の処理までをルールに従って算出した金額です。

それでは、この課税標準までを過去ブログを参考にして、一覧にまとめてみます。

まず、10種の所得の概要から
(1)利子所得(当ブログ0199〜0205)→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20120919
資金を金融機関に預けた利息の金額。元本割れがない。個人的に他人へ貸付た利息は対象外。利子所得の場合、時間経過と共に勝手に利益を生み出すので、経費として該当する控除はありません。
課税方法:原則、源泉分離課税で一部に総合課税の場合あり
所得  :「収入金額−0円」→総所得金額の合算
損益通算:損失発生なし。差引かれる所得。

(2)配当所得(当ブログ0206〜0213)→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20121003
資金は出資にあたり、元本保証がなく、出資先の利益の還元にあたる。配当所得は主に株式等の配当で、その元本にあたる部分について借入により取得し、その利息費用が経費として該当するわけですが、これは負債が発生した元本の確定やその期間、申告手続きなどの規定があります。
課税方法: 総合課税、分離課税、申告不要制度のいずれかを選択
所得  :「収入金額−負債利子」→総所得金額の合算
損益通算:損失発生は認められない。差引かれる所得。

(3)不動産所得(当ブログ0214〜0219)→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20121109
不動産所得は、土地や建物等を活用して得られた利益で、通常では建物の維持管理に関する費用は経費として扱われます。しかし、この費用である「維持」とは本来の機能を戻す程度のもので、資産価値を高めるような投資であれば経費として認められません。
課税方法: 原則、総合課税。
所得  :「収入金額−必要経費」→総所得金額の合算
損益通算:損失発生が認められている。差引かれる、差引く所得の両方。

(4)事業所得(当ブログ0221〜0265)→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20121117
法人以外の個人事業が主な所得者ですが、この場合の経費は「事業費用」と「私的流用」との区分が明確である必要が生じ、一定の規定があります。店舗費用や設備等の維持管理費、人件費、仕入代、電気ガスなどの光熱費と通信費、事業にかかる借入金の利子等が該当します。
課税方法: 原則、総合課税。
所得  :「収入金額−必要経費」→総所得金額の合算
損益通算:損失発生が認められている。差引かれる、差引く所得の両方。

5)給与所得(当ブログ0293〜0321、0335、0336)→
http://d.hatena.ne.jp/sotton/20131229
企業や事業所などに勤務して得る所得。通常は毎月の給料から源泉徴収として天引きされ、年末調整によって年間所得を精算します。収入によって一定額を経費として控除します。
 <給与収入額>                      <控除額>
 ・給与収入が180万円以下・・・・・・・・・・・・・・収入金額×40%
 ・給与収入が180万円超〜360万円以下・・・・・・・・・収入金額×30%+18万円
 ・給与収入が360万円超〜660万円以下・・・・・・・・・収入金額×20%+54万円
 ・給与収入が660万円超〜1000万円以下・・・・・・・・収入金額×10%+120万円
 ・給与収入が1000万円超〜1500万円以下・・・・・・・・収入金額×5%+170万円
 ・給与収入が1500万円超・・・・・・・・・・・・・・・245万円
課税方法:総合課税、源泉徴収
所得  :「収入金額−給与控除額(上記参照)」→総所得金額の合算
損益通算:損失発生が認められない。差引かれる所得。

(6)譲渡所得(当ブログ0266〜0292)→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20130417
 譲渡所得の考え方は「手離した時の価額−手に入れた時の価額」の差益です。この譲渡にかかる費用は、業務上であれば会計上での減価償却累計額や、業務でなければその期間の減価額、設備費や改良費、譲渡手続きに係る諸費用などが該当します。加えて特別控除額が最大50万円まであります。また、株式等の譲渡であれば、その株式取得に係る負債利子分が期間対応の上、経費として算入できます。
譲渡は様々なケースがあります。短期保有と長期保有で条件が異なる上、不動産や動産、株式や権利、動産であれば中古品や生活必需品など、そのケースも多様で軽減税措置の特例も多く、注意を要します。
課税方法:総合課税、分離課税、申告不要制度あり(株式等の特定口座)
所得  :「(譲渡収入−譲渡に係った費用)−(取得価額+取得費)」→総合課税を選択の上で、短期譲渡所得はそのまま総所得金額の合算で、長期譲渡所得は半額(2分の1)を合算、繰越控除前。
損益通算:損失発生が認められるが、一部条件により不可。差引かれる所得、差引く所得の両方。

(7)一時所得(当ブログ0340)→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20140123
 一時所得は「営利目的」「労働の対価」「譲渡の対価」に該当しない収入で、懸賞金や一定の条件を満たす保険金の受取金が該当する収入ですが、その収入を得るために係った費用は経費として控除できます。加えて特別控除額が最大で50万円あります。
課税方法:原則、総合課税で、一部に源泉分離課税
所得  :収入金額−必要経費−特別控除→所得額の半額(2分の1)を総所得金額として合算、繰越控除前。
損益通算:損失発生が認められない。差引かれる所得。

(8)雑所得(当ブログ0341)→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20140125
 雑所得は他の9つの所得に該当しない所得が「雑所得」として扱われ、講演料や原稿料、特許権使用料などがあります。年金収入もこの雑所得として区分され、年金受給では「公的年金収入−公的年金等控除額」となります。
課税方法:原則、総合課税で、条件により源泉徴収あり、金融商品では源泉分離課税申告分離課税もあり。
所得  :「収入金額−必要経費」または「公的年金収入−公的年金等控除」→総所得金額として合算。
損益通算:損失発生が認められない。差引かれる所得。

(9)山林所得(当ブログ0220)→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20121113
 山林所得は、通常は伐採した樹木等の譲渡収入、権利に関するものですが、様々なケースがあり山林所得以外に、事業所得、不動産所得、雑所得に該当する場合があります。経費は譲渡にかかる費用や伐採費、運搬費用があります。(原則、分離課税)
課税方法:分離課税
所得  :「収入金額−必要経費−特別控除(最大50万円)」→総所得金額に合算しない。
損益通算:損失発生が認められる。上記8つの所得で損失相殺しても損失が残っている場合には、差引かれる所得。

(10)退職所得(当ブログ0338、0339)→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20140115
 退職によって発生する所得。控除額は勤続によって異なり、勤続が20年以下であれば「勤続年数×40万円(最低80万円)」で、勤続が21年以上であれば「800万円+70万円×(勤続年数−20年)」が控除額となり、課税対象となる所得はその控除した額の半分となります。
課税方法:源泉徴収、分離課税
所得  :「収入金額−必要経費−退職所得控除(上記参照)」→総所得金額に合算しない。
損益通算:損失発生なし。上記9つの所得で損失相殺しても損失が残っている場合には、差引かれる所得。
上記が各所得の性質と、算出規則です。

次に損失が発生した時の処理、「損益通算」となります。
損失が認められるのは「不動産所得」「事業所得」「譲渡所得」「山林所得」の4つに限定されています。損失(赤字)は分離課税である「山林所得」「退職所得」以外の8つの所得から相殺し、それでも残った損失を山林、退職所得の順で差引きます。

前述した8つの所得は、損益通算の後に合算して「総所得金額」となりますが、このとき「総合長期譲渡所得」と「一時所得」はその金額の2分の1を合算します。
その後に「繰越控除」が行われ、ここまでの算出が「課税標準」となります。

損益通算、損失の対象範囲(当ブログ0345)→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20140211
損益通算、通算の順序(当ブログ0346)→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20140213
繰越控除(当ブログ0347)→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20140215
★当ブログ0231免責事項をお読み下さい→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20130102
★ニーサ→http://d.hatena.ne.jp/sotton+column/20130627/1372343935