0350 所得税152 課税総所得金額〜納付税額

前回の「課税標準」までの算出は、所得税上の言わば「純利益」にあたり、収入、経費、損失の清算と言えます。
この損失処理の後、政策的な控除である「所得控除」と呼ばれる額を差引きます。これは社会保険料や扶養家族の人数や夫を亡くした妻など、社会性や担税力(税金を払う余力)を考慮して規定した控除です。この控除の後、税率を掛けて「算出税額」が計算されます。

所得控除の種類と控除順序→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20131223

所得控除が成された後、次に税率を乗じて「算出税額」、納付税額の一歩手前の課税額となります。
このとき総合課税は、前回の課税標準で「総所得金額」となり、「総所得金額−所得控除」=「課税総所得金額」となり、この金額に所得税率を乗じて算出します。

一方、独立して算出される分離課税の計算も所得控除をした後に、それぞれ個別科目の税率を乗じて算出します。
(1)算出税額=「課税総所得金額(総合課税)」×税率−控除額
<課税総所得金額>            <税率>         <控除額>
・195万円以下・・・・・・・・・・・・・・・・5%・・・・・・・・・・・・・0円
・195万円超〜330万円以下・・・・・・・・・・10%・・・・・・・・・・97,500円
・330万円超〜695万円以下・・・・・・・・・・20%・・・・・・・・・427,500円
・695万円超〜900万円以下・・・・・・・・・・23%・・・・・・・・・636,000円
・900万円超〜1,800万円以下・・・・・・・・・33%・・・・・・・・1,536,000円
・1,800万円超〜・・・・・・・・・・・・・・・40%・・・・・・・・2,796,000円
課税標準の計算→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20140219

次に分離課税の税率です。原則である税率で案内しています。
(2)算出税額=「分離課税の上場株式等に係る課税配当所得」×15%
注意点→申告分離課税の税率は、平成21年1月1日から平成25年12月31日までの間に支払を受けるべき上場株式等の配当等については、10%(所得税7%、地方税3%)(平成25年に支払を受けるものについては10.147%(所得税及び復興特別所得税7.147%、地方税3%))の税率が適用されます(平成26年1月1日以後に支払を受けるべき上場株式等の配当等については、20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、地方税5%)の税率になります。)。
平成25年から平成49年の各年分の確定申告においては、所得税と復興特別所得税(原則として、その年分の基準所得税額の2.1%、つまり1.021を乗じた額)を併せて申告・納税することになります。
★配当所得の課税方法→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20121005

(3)算出税額=「課税短期譲渡所得金額」×30%
所得税率の30%の他、地方税である住民税が9%も加算されます。加えて所得税の税率はここから前述した「復興特別所得税」の2.1%が加算され、30.63%の税率となります。
課税短期譲渡所得は「譲渡価額−(取得費+譲渡費用)−特別控除」で、この算出にある「特別控除」とはマイホームの買換えや売却による譲渡損失の繰越控除を意味していますので、通常はありません。
★譲渡所得の計算→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20130609
★不動産の譲渡→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20130611
(4)算出税額=「課税長期譲渡所得金額」×15%
所得税率の15%の他、住民税が5%と加算されます。特別復興所得税も加算がありますから所得税率は実質15.315%となります。
課税長期譲渡所得は「譲渡価額−(取得費+譲渡費用)−特別控除」で、短期譲渡と同じく特別控除についても同様の意味です。

(5)算出税額=「株式等に係る課税譲渡所得の金額」×15%
所得税率15%の他、住民税が5%加算され合計20%の課税です。これは平成26年以降の受取り分からなので、平成25年分の受取りは所得税が7%と住民税が3%の計10%です。
前述した「復興特別所得税」の加算もあり、現行では実質15.315%になります。
★株式の譲渡、分離課税→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20130619

(6)算出税額=「先物取引に係る課税雑所得金額」×15%
先物は差金決済の金額です。所得税率、原則15%、復興特別所得税の加算で実質15.315%になります。加えて地方税の5%が加算されます。
★雑所得→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20140125

(7)算出税額=「課税山林所得金額」×5分の1×税率×5
山林所得は「収入−必要経費−特別控除額(最大50万円)」で、算出税額の計算は5分5乗方式とよばれ、上記のような算式となります。税率は(1)の課税総所得金額と同じですが、5分5乗方式を含んだ速算表は以下を参考にして下さい。
<課税される所得金額>          <税率>         <控除額>
・975万円以下・・・・・・・・・・・・・・・・5%・・・・・・・・・・・・・0円
・975万円超〜1,650万円以下・・・・・・・・・10%・・・・・・・・・・487,500円
・1,650万円超〜3,475万円以下・・・・・・・・20%・・・・・・・・・2,137,500円
・3,475万円超〜4,500万円以下・・・・・・・・23%・・・・・・・・・3,180,000円
・4,500万円超〜9,000万円以下・・・・・・・・33%・・・・・・・・・7,680,000円
・9,000万円超〜・・・・・・・・・・・・・・・40%・・・・・・・・13,980,000円
★山林所得→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20121113

(8)算出税額=「課税退職所得金額」×税率−控除額
税率と控除額については超過累進課税である(1)の課税総所得金額の税率と同じです。
課税退職所得金額の算出は「(退職金−退職所得控除額)×0.5」で、控除額は勤続年数が20年以下であれば「40万円×勤続年数」で、20年を超えれば「800万円+70万円×(勤続年数−20)」で算出します。
★退職所得→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20140115

上記の各所得の計算した「算出税額」を合算して、次に「税額控除」と呼ばれる政策上の控除を行います。
税額控除は、ご理解の通り、税率をかけた後の「算出税額」から差引きますから節税効果が高い控除です。しかし、この控除は限られたもので全て確定申告しなければ控除されません。配当控除と外国税額控除の二つは、所得の性質上で二重課税の考慮から設定されている控除で、あとは特別措置による政策上の特例にあたる控除となります。これは主に住宅ローンによる控除が該当します。
住宅ローン(住宅借入金等特別控除)は初回の手続きで確定申告が必要ですが、給与所得者では次回から年末調整の手続きで控除が済みます。
★税額控除→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20140217

この税額控除をした後の金額を「所得税額」と呼び、ほぼ納付税額と同じです。
確定申告は1年間の収入に対する、課税の精算ですから「所得税額」から、既に支払っている「源泉徴収税額」や「予定納税額」があれば、その分を差引いて「納付税額」となります。
予定納税は、通常では企業や事業主が7月と11月に、前年の経常的な所得を基礎に計算された所得の前払いです。
源泉徴収税額→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20131023

★確定申告→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20140223
★当ブログ0231免責事項をお読み下さい→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20130102
★ニーサ→http://d.hatena.ne.jp/sotton+column/20130627/1372343935