0463 交渉術1

さて、今回からは「交渉術」に話しを移しましょう。専門的ではなく簡単な話として。

普段、私たちは親しい者と会話をするとき、特に目的意識を持って喋ることはあまりありません。自然と気ままに会話をして楽しみます。先ほどの「聞く技術」では、相手である話し手が、どんどん楽しくお喋りができるように仕掛けることでした。つまり、相手を気分よく話させること自体が目的でしたが、交渉では、ある目的のために行う会話は「交渉」であると位置づけることができます。

例えば、普通の会話でも相手が異性で気を引きたい等の意識があれば、それは「気を引く」という目的が生じて、自己の利益的な側面が絡み、交渉の意味が含まれています。交渉の殆どは状況設定と言葉の選択を主とする心理的な戦術です。

あなたが男性で、これから親しくなりたい女性を食事に誘ったとしましょう。テーブルの位置は部屋の角、あなたは壁側に座り、差し向かいに座ります。これで彼女の視界から余計なものがかなり排除され、彼女が正面を向けばあなたと背後にある壁のみです。あなたは聞く技術を駆使して彼女を会話に弾ませます。ときおり「その時どんな気分だった」などの彼女に感情的質問を投げかけ、返してきた言葉に同調します。仕草もさりげなくマネします。水を飲めばあなたも水を飲み、彼女が耳を触ればあなたも自分の耳を触ってみせます。彼女の声が高めなら、あなたは彼女より少し低い声で、低めなら少し高い声で、早口なら少し遅く、遅ければ少しだけ早くコントロールします。視線はもちろん彼女の目で、視線を外すときは一瞬だけ唇に移し、次に視線を外すときは一瞬だけ髪型、次に肩、腕と視線を外すとき彼女の目から少しづつ離れた部分に移してゆきます。決してじっくり見てはいけません。気を引くことは、彼女の気分を良くすることで、警戒や不快感を与えるリスクは厳禁です。「見惚れる」より「気になる」ことを知らせるのです。次にあなたがあなた自身のことを話す機会が訪れます。この時、あなたの話す会話の内容は、彼女が話した内容から構成します。キーワードは共通の知人、共通の場所、時代と感情。彼女が学生時代の話しをしたのなら、あなたも学生時代のエピソードを。出身地や観光地、共通の知人がなければ、彼女の話しの登場人物でよく似たキャラクターの話し。なければ、共通のキーワードを広げ、旅行、音楽、職業等で彼女の話しに刺激を受けたこと、同じような感情になったこと、似たような境遇で楽しかったことを話し、話しの途中あなたは時折、今食べている料理や店の雰囲気について、一言の感想を述べます。「このサラダ美味しいね」程度のことを。この何でもない一言を断片的に散りばめ、今日、彼女と、この店で食事をし、会話を楽しんだこと、二人きりで共有した時間を印象付けます。

上記のようなことが、実際にどの程度の効果をもたらし成果を上げるかは、実際には計測できません。相手によって異なることでしょう。しかし、これらは心理学的に有効とされているもので、「特定化」「共感」「同調」「共有」「自己説得」「フット・イン・ザ・ドア」「ドア・イン・ザ・フェイス」「ロー・ボール・テクニック」「ミラー効果」

「クライマックス法」などは、その手の本を読めば必ず掲載されている内容です。
ここでの「交渉術」は、先に述べた心理的なテクニックではなく、二つの異なるアプローチからなる基礎的な交渉術の紹介で、その形を知る大まかな概要に過ぎません。しかし、この二つの交渉における思考は、必ず日常的に役立つものです。

次回に引き続きます。

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