0094 労災保険1 概要

労働災害補償保険」、一般的とは言えませんが、よく口にするのは「労災保険」という呼び方でしょう。

さて、この保険はみなさんの給料から天引きされることはありません。労災の保険料は事業主が全額負担であり、話の流れでは「給料から天引き」されている社会保険について調べているのだから、除外して良い項目なのかもしれません。

しかしながら労働や生活におけるリスクを考慮すれば、全く無視することも合理的と言えません。その根拠となる考え方は、収入から労災保険料という直接的な費用は発生しないにしても、業務上で重大な事故に巻き込まれた場合、仕事も家庭も深刻な状況下におかれ、それは未知なる費用を発生させ、収入と支出のバランスを継続して欠き、甚大な精神的影響を与えかねない。

それに対して労災保険は、保険であるのだから、やはり認定条件や、給付等において範囲が定められています。給付金で賄えることができなければ、自己負担になる可能性が高く、そして労災認定そのものも様々な事故内容で異なります。
 
労働災害の場合、労働基準法労働安全衛生法などの関連法規と密接な責任上の関係があり、つまり経営者が従業員に対する「責任の質と範囲」が問われる問題でもあります。
 
経済同友会が2003年にCSR(企業の社会的責任)元年を唱い、翌年には経団連これに続きます。利益至上主義の時代から社会正義や社会貢献という価値が、企業の継続的利益を生み出す時代へと変化してゆき、環境問題や地域貢献、様々な活動によってステークホルダー(利害関係者→消費者、取引先、投資家、従業員、地域住民など)に評価され、企業価値が高まると認識するようになったのです。

このCSRを推進してゆく中、前提として取り組みが必要になるのが「コンプライアンス」です。よく法令遵守と訳されますが、法律はもちろん、社内ルールを守り、不正を告発し、日常的にモラルを高め、「誠実さ」のより高い形成が要求されます。「正義+真面目」と言う感じ。

この平凡な価値は、実は簡単に手に入るものではありません。不正が発覚すると新たにルールを作り、ルールが増えると不正も増え、CSRのアピールする程、もみ消しが行われ、そして組織統制にあたるコストは増大してゆきます。

経営者がコンプライアンスの徹底を従業員に要求すれば、従業員からは不正や差別のない経営者の誠実な行動を監視します。人を粗末に扱う企業に、優秀な人材が集まることはありません。従業員が厳格にルールを守ると、企業側はより高いレベルで約束を果たさなければなりません。それは労働者の待遇や環境そのものです。

現在では上場企業に限らず、優良と評価される殆どの企業はCSR推進に励んでいます。コンプライアンス日本版SOX法という内部統制に当たる企業責任は、不祥事を未然に防ぐというリスク回避、趣旨そのものが外部関係者に向き、結果的には株主に対する信頼を構築する手法と言わざるを得ません。
けれども、これらの「ルール厳守」によって以前に比べると、従業員の環境はかなり改善されと思います。具体的にいうと、サービス残業名ばかり管理職、有給休暇の消化率、セクハラ、パワハラ、社員と非社員の待遇格差。企業規模や企業体質によっても改善度はことなりますが、違法性や誠実さという観点ではCSR推進以前より、年々意識が高まっています。

CSRが社会のあり方を重んじる相互信頼の成長であれば、一方でCO2 の削減に取り組み社会から評価を受けても、もう一方で企業内部の従業員が鬱病になって自殺という残念な事が起これば、CSRのあり方に誰もが疑問に思うでしょう。事実この10年は日本における自殺者の数は殆ど減少していません。(すべての自殺者が仕事に起因しているわけではありません)

労災保険は業務上や通勤途上の事故によって発生するケガはもちろん、うつ病などの気分障害精神障害においても、業務起因の事実が一定の条件を満たしていれば、労災認定される可能性、またその範囲も、以前に比べてかなり労働者の立場に歩み寄った判断になってきています。そして経営者における従業員の管理責任の範囲も「事故を未然に防ぐ」「健康の保持増進」という安全配慮義務まで幅広く問われる時代です。
 
少し横道となりましたが、次回は労災保険の認定基準等について具体的に書いてゆきます。

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