0098 労災保険5 通勤途上

今回は労災認定の「通勤途上」を含め、出張や営業先からそのまま帰宅した場合など、どこまでの範囲が認定の基準であるかを紹介します。これも先に洩れず「私的行為」にあたる部分が判断の境界となります。

まず、住居と就業場所ですが、住居の場合、労働者が日常生活をおくる家屋で、例外的な事例を挙げれば、交通スト等で、やむをえない事情で友人宅に泊まった場合、居住に該当する判例もあります。就業場所では、例えば営業で得意先にまわってそのまま帰宅した場合、最後に立ち寄った場所が就業場所と判断されます。ただし、もちろん仕事上での立ち寄り先で、私的行為でないことが条件です。

通勤途上の規定では「合理的な経路上」であるべきで、これは意思と無関係で物理的な経路を指します。例えば、仕事が終わって、就業場所を出てすぐ「今日は友人と映画に行く」場合でも、映画に行くと思って行動しているのですから「私的行為」にあたり保護されないと考えることもできますが、映画に行く途中であっても、その経路が帰宅する時に日常的に利用する通勤経路内であれば労災認定の範囲として有効な結果となる可能性が高いといえます。つまり客観的に通勤で使う合理的な経路上であれば「私的行為」と判定されない。逆に、この合理的な経路から逸脱すると、通勤途上であるという合理的な説明が成されない限り「私的行為」とみなされ、労災認定上の「通勤」とされない結果になります。

では、この通勤途上の帰り道、百貨店に立ち寄り、以前から欲しいと思っていた旅行鞄を買い、その後また通勤経路に復帰した場合はどうだろうか?通常、通勤上の合理的な経路から一度外れると、経路に再び復帰しても認定されない、となっています。

ただし、以下の場合は例外的に復帰を認めています。
1,日用品の購入など、日常生活において必要な行為
2,職業能力開発促進法に規定する公共職業訓練施設において行われる職業訓練、学校教育法第1条に規定する学校において行われる教育、その他これらに準ずる教育訓練であって、労働者の職業能力の開発向上に資するものを受ける行為
3, 選挙権の行使、これに準ずる行為
4, 病院または診療所において診察、治療を受ける、またはこれに準ずる行為
5, 要介護状態にある配偶者、子、父母、配偶者の父母並びに同居し、かつ扶養している孫、祖父母および兄弟姉妹の介護(ただし継続、または反復して行われるものに限る)
これらの場合は、その行為中を除き、通常通勤で利用する合理的な経路上に復帰すれば、そこから労災認定における「通勤」と判定されます。

単身赴任者が家族のいる本来の家に帰省する場合も「通勤」と認定されます。これには少し制限があり、一般的に認められる帰省は、出勤日の当日もしくは翌日に帰省し、赴任先に戻る場合は、出勤日の当日もしくは前日が該当します。反復、継続的であることも判定条件にあります。

他には、マイカー通勤の夫が、一緒に妻を乗せて、妻が勤務する店まで送っていって、途中で事故に遭遇した場合、夫の通常利用する通勤経路から殆ど逸脱してない、経路からかなり近い場所であれば「通勤」と判定され、3キロ以上離れている場合の判定では認められないとなっています。そして妻が妊婦であった場合は、合理的理由として認められています。

上記はほんの一例ですが、判定に至る判断基準や要素は、その場面によってはかなり微妙で難しい内容になってきます。

上記の例は労災保険情報センターのホームページを参考にまとめています。より詳しい内容を希望される方は「労災保険情報センター」のホームページにアクセスして下さい。→http://www.rousai-ric.or.jp/case/tabid/71/Default.aspx

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