0099 労災保険6 補足

労災認定に纏わる企業側の責任について補足しておきます。

事故がおきる要素として施設内の欠陥や不良があった場合、当然その経営者は責任を負います。物理的な要素の不備以外、つまり従業員の健康管理については「維持、促進」を行うように事実上義務づけられています。

具体的には健康診断や衛生管理者などの法律上の約束事はもちろん、従業員が仕事上の悩みなどを相談する、相談できる体制を整えたり、健康管理やコーピングの勉強会を開いたり、多くの企業が現在こうした取り組みを積極的に行っています。

このような従業員の衛生管理面を支援する外部機関EAP(従業員支援プログラム)も最近では多数存在します。

EAPの目的は従業員の労働環境や心理負荷軽減を提案、対応して生産性を上げることです。生保や損保では企業向けの保険として、このEAPのサービスがセットの保険商品となって販売されているものもあります。

ちなみに労働安全衛生法上企業に義務づけているものは「衛生教育の実施(第59条)」「中高年齢者等に対する配慮義務(第62条)」「作業環境測定義務(第65条)」「作業における管理義務(第65条の3)」「健康診断実施義務(第66条)」「健康診断実施後の措置義務(第66条の5)」「病者の就業禁止にかかる措置義務(第68条)」などがあります
 
労災認定において経営者の責任問題の一番は長時間労働が上げられます。労働者が事故を起こした場合もそうですし、うつ病、そして過労死や自殺に関しても長時間労働がその原因の要素として重要視されます。一般には年間3000時間以上、月間250時間以上の勤務時間があれば労災認定の可能性として範囲に入ります。
事業者としては時間外労働を45時間以下にする方がリスクは少ないでしょう。医学的にも45時間を過ぎると、業務が起因する脳と心臓疾患のリスクが高まるとされています。尚、1週間40時間が定時としてそれ以上の時間が「時間外労働」としてカウントした場合です。

また時間外労働が月間60時間以上になってくると、過重労働とされる従業員に、個別に面接指導や何らかの具体的な措置を講じる方が良いとされ、時間外労働が80時間以上が連続した月、あるいは時間外労働が100時間超の月は、措置を講じる必要があります。
 
企業(事業者および経営者)のリスクとしては、労働安全衛生法は最低限度の労働条件基準を定めている取締法規なので、違反すると刑事罰の対処となります。加えて安全配慮義務違反では民事上の損害賠償責任を問われます。

労働安全衛生法では違法行為として、安全配慮義務では労働契約上の債務不履行として、慰謝料や損害賠償請求の対象となり、上場企業などがマスメディアで従業員の扱いや違法行為などが公になると収益そのものに影響が出てきます。そして企業イメージの失墜、内部では従業員のモラル低下を引き起こします。結果、場合によると甚大な損失を孕んでいる課題と言えます。

三者、例えば企業が違法行為や義務違反を問われ、被災者(労働者)からの損害賠償請求に応じ、賠償金の支払いが成される場合、すでに労災保険給付が支給された後であれば、結果その給付金額を差し引いた分が、賠償金として支払われることになります。これは賠償金も労災保険給付も損害を被った額の補填が目的とされているので、二重払いを認めない立場をとっています。

労災保険が先に支給し、後に損害賠償金が支払われる場合(上記と同じ)、労災保険側は賠償金を立て替えた形になっています。ですので支給した額を、労災保険側は被災者に代わって賠償金を支払う者に請求することとなります。(この場合、支給した事実と損害賠償請求権を交換した形→代位取得と言い、この権利を行使することを→求償と言います)

これとは逆に、先に賠償金が支払われた場合、その金額を差し引いた分が、労災保険の給付額として支給されます。→控除と言います。

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