0097 労災保険4 心の病気

労災保険の対象になる疾病の中には「心の病」についても含まれています。過労死や自殺、そしてうつ病精神疾患など、経営者が従業員に対して果たすべき範囲は責任上の義務、また法律的にも広がりをみせています。従業員の過度なストレスに対して、見て見ぬふりや「知らなかった」では済まされない時代なのです。
企業が労働者に対して責任を負う法律としては「労働基準法」「労働安全衛生法」と大きくは2つあります。労働条件における法的規制と労働者の安全と健康の確保が目的です。
労働安全衛生法には安全衛生の管理体制にも一定の約束事や義務を明記しています。それからこの安全衛生に関して、その義務を果たさなくてはならない、という「安全配慮義務」という責任も2008年からは「労働契約法」の中に明文化され、「業務遂行に伴う疲労や心理負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意、配慮する義務」となります。

 労災保険の認定対象となる精神性の疾病は、下記の10種に分けられています。
F0:症状性を含む器質性精神障害(脳そのものの病気)
F1:精神作用物質による精神および行動の障害
F2:精神分裂症、分裂病型障害および妄想障害
F3:気分(感情)障害
F4:神経症性障害、ストレス関連性障害および身体表現性障害
F5:生理的障害および身体要因に関連した行動症候群
F6:成人の人格および行動の障害
F7:知的障害(精神遅滞
F8:心理的発達の障害
F9:小児期および青年期に通常発症する行動および情緒の障害、詳細不詳の精神障害
 
そして「心理的負荷による精神障害に係る業務上外の判断指針」が示す「職場における心理負荷評価表」には、負荷レベルを3段階にわけています。しかし、これはあくまでも判定における基準であり、状況や個人差で負荷強度は異なると考えられています。

強度1 → 日常的に経験する心理負荷で、一般的には問題とならない程度 
     「同僚とのトラブル」「勤務形態の変化」「昇進や昇格」「部下の増減」「研修や会議の参加を強要」など。
強度2 → 日常的でない、やや強い心理負荷
     「上司とのトラブル」「左遷、転勤」「ノルマの不達成」「拘束時間の長時間化」
     「違法行為を強要された」など
強度3 → 生涯において希にみる、かなり強い心理負荷
     「重度の病気、ケガを負う」「いじめや暴行」「会社の経営に関わる重大なミス」「解雇や退職を強要される」など

また、上記の心理強度にたいする出来事の類型として、
1, 事故や災害の体験、目撃
2, 仕事上の失敗、過重な責任の発生など
3, 仕事の量や質の変化
4, 身分の変化など(退職、左遷、差別など)
5, 役割、地位の変化(転勤、配置換え、部下の増減など)
6, 対人関係のトラブル(いじめ、セクハラ、パワハラなど)
7, 対人関係の変化

上記の判定内容を基に、労災認定の判断が行われますが、心理負荷評価には業務外もあり、そこで個体要因や私的な部分での心理負荷が発生していないか、つまり業務起因性という私的な原因を精査して判断されます。尚、職場以外での心理負荷評価表での「出来事の類型」は
1, 自分自身の出来事
2, 家族、親族の出来事
3, 金銭関係
4, 事件、事故、災害の体験
5, 住環境の変化
6, 他人との人間関係
で、強度?に値する内容は「離婚や別居」「家族や親族の死亡、流産」「犯罪や災害に巻き込まれる」「財産の多大な損失」など、となっています。

まとめてみると、精神障害における労災認定の判断要件は、
● 対象疾病に該当する精神障害を発病している。
● 発病前の約6ヶ月前に、客観的に業務による強い心理負荷が認められること
● 業務外、個体要因によって発病したと認められないこと。
となります。
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