0319 所得税122 給与所得27 割増賃金

割増賃金は、労働者が労基法で規定している労働時間を超えた時間外労働や、休日出勤による賃金計算の法規定です。原則、1日8時間を超えた分、1週間で40時間を超えた分が時間外労働となり、割増賃金の対象となります。また、休日では1週で1日、4週で4日が法定休日なので、この休日未満である分が割増賃金の対象と言えます。

変形労働時間における時間外労働や休日規定などについては当ブログ0309を参考にして下さい。→
http://d.hatena.ne.jp/sotton/20130819

時間外労働以外には「深夜労働」が割増賃金の対象となります。これは、労働基準法で夜10時〜翌朝5時までが対象時間として規定しています。この場合、通常では25%の割増となり、時間外労働の時間が深夜に及んだ場合は、時間外労働の25%と深夜労働の25%を加算した50%が割増賃金となります。

割増賃金が労基法より労働者にとって有利な条件を事業場の労使協定や就業規則などで定めていた場合は、有利な方が優先されます。
また24時間の勤務体制で、労働協約就業規則で予め深夜手当を含んだ賃金を規定している場合は、その規定された賃金のみで、その上で割増が付加されることはありません。

近年ではうつ病精神障害、自殺などの増加傾向、あるいは減少に歯止めが掛からず、従業員の労働環境においては、企業や事業主側には労働基準法はもちろん労働安全衛生法安全配慮義務などの責任が社会的にも求められています。
また、労働時間とこれらの病気の発症関係が科学的にも立証された経緯もあり、平成22年4月以降、割増賃金の対象時間として、時間外労働が月間60時間を超える部分に対し50%の割増賃金を課せています。

ただし、月間60時間を超える割増については、以下の条件を満たす規模の中小企業においては、現在のところ猶予されています。

小売業   : 資本金5,000万円以下、もしくは常時使用する従業員数が50人以下。
サービス業 : 資本金5,000万円以下、もしくは常時使用する従業員数が100人以下。
卸売業   : 資本金1億円以下、もしくは常時使用する従業員数が100人以下。
その他の事業: 資本金3億円以下、もしくは常時使用する労働者数が300人以下。

割増賃金の計算は、一時間あたりの賃金を算出し、その金額に対して割増率を乗じて計算します。割増賃金規定を整理すると次のようになります。
「通常の時間外労働」・・・・・・・・・・・・・・・・・・25%割増、1.25倍
「月間60時間を超えた分の時間外労働」・・・・・・・・・・50%割増、1.5倍
「深夜時間労働」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25%割増、1.25倍
休日労働」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・35%割増、1.35倍
「時間外労働+深夜時間労働」・・・・・・・・・・・・・・25%+25%割増、1.5倍
休日労働+深夜時間労働」・・・・・・・・・・・・・・・35%+25%割増、1.6倍
「月間60時間を超えた時間外労働+深夜時間労働」・・・・・50%+25%割増、1.75倍

割増賃金の基礎となる1時間あたりの賃金の算出は、基本給が時給である場合は、その時給額が1時間あたりの基礎賃金となります。日給の場合は「日給÷1日の所定労働時間」=基礎賃金となります。

月給の場合では、一般的に次のような算出で基礎賃金を計算します。
まず月収の総額から個人的な事情から支給されている諸手当を差し引きます。例えば「家族手当」「通勤手当(通勤代)」「住宅手当」など。・・・・・・・・(A)

次に、1ヶ月あたりの平均所定労働時間数を算出します。
「365日−年間休日数」=「年間労働日数」、
「(年間労働日数 × 1日の所定労働時間) ÷ 12」・・・・・・・(B)

1時間あたりの基礎賃金 = (A)÷(B)

尚、実際の計算における端数処理については、まず時間の端数について1ヶ月単位であれば時間外労働や休日労働の時間で30分未満を切り捨てることができます。この場合、30分以上であれば切り上げしなくてはなりません。一日単位でこの方法をとることはできません。
賃金についての端数処理は、1ヶ月単位では1円未満の切り捨てOKですが、時間計算では50銭未満を切り捨て、50銭以上は切り上げとなります。
端数処理についても原則、受取る側の労働者が不利となる計算は認められません。

※東京労働局、賃金関係→http://tokyo-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/yokuaru_goshitsumon/tingin.html
★賃金計算の概要(給与計算)→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20130819
★当ブログ0231免責事項をお読み下さい。→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20130102