0141 老齢厚生年金2 特別支給1

老齢厚生年金は、基礎年金と報酬比例部分を足したものが給付額となり、65歳以上から受給権が発生します。

これに対して「特別支給」とは、旧制度に加入された者が、新制度や改正によって、新しい条件への移行に、不利が生じないように助する特例にあたります。この特別支給によって、60歳以上65歳未満の支給が可能になるわけですが、男性では昭和36年4月2日以降生まれ、女性では昭和41年4月2日以降生まれの方は、該当しないため、この特別支給とは関係ありません。

受給額算出の考え方は基本(通常の老齢厚生年金)と同じです。基礎年金にあたる部分が「定額部分」と称されていますが、計算上金額は同じになります。

この「特別支給」を理解するために、過去の厚生年金における改正内容を、簡単にふり返ってみましょう。

(ア) 1,昭和15年(1940年)に船員保険が始まり、民間人の公的年金制度は、これがどうやら最初らしい。それまでは公務員のみだった。
(イ) 2,昭和17年(1942年)に労働者年金保険、その2年後に厚生年金保険となり、そして適用対象を拡大してゆきます。
(ウ) 3,昭和29年(1954年)に厚生年金保険法が全面改正となり、現行の厚生年金の原形となります。
(エ) 4,昭和34年(1959年)に国民年金法が制定され、その2年後に保険料の徴収が始まりました。この昭和36年(1961年)の4月が実質的な公的年金のスタート。公務員やサラリーマン以外の者、つまり自営業等の年金制度を確保したことで「国民皆年金」と呼ぶようになりました。
しかし、これは完全と言えるものではなく、サラリーマンの妻や学生等は、任意加入(自己判断ですね)でした。

(オ) 5,昭和61年(1986年)に基礎年金が創設されました。これまで職業的な立場によって分かれていた年金制度を、全国民共通の制度に再編し、厚生年金の扱いは、基礎年金の上乗せにあたる報酬比例として、2階建年金となり、20歳〜60歳未満の全ての者を強制加入といえる制度に、大きく改正されました。

この1986年の改正で現在の年金制度の形が整ったことになります。そして、これ以降の改正は主に、年金の給付についてとなります。実質的な年金のスタートが昭和36年(1961年)で、その時に20歳だった人は、現在では71歳で既に受給されている年齢になっています。またその年に生まれた人は、現在51歳で、25歳の時が昭和61年にあたり、事実上の強制加入が始まり、通常なら25年の受給資格期間を満たす年数で、先述したように、この年(昭和36年)4月2日以降に生まれた男性から、特別支給は制度上廃止となります。

(カ) 6,平成6年(1994年)の改正では、老齢厚生年金の特別支給における支給開始年齢が段階的に引き上げられることになります。この時の引き上げは、老齢厚生年金の定額部分と報酬比例部分のうち「定額部分」のみが引き上げの対象となります。
(キ) 7,平成12年(2000年)の改正は、老齢厚生年金の報酬比例部分が段階的に引き上げられることになります。これで老齢厚生年金は原則的に65歳以上からの給付となり、特別支給はこの報酬比例部分の引き上げが完了と同時に廃止となります。
(ク) 8,平成16年(2004年)の改正は、年金の給付額の改定方法のことで、内容はこのブログの「0137、改定率について→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20120513」を参考にして下さい。
※上記はその年の改正内容の一部です。

上記の様に、年金制度の内容は次々と変更され、そもそも年金が国民全ての成人以降の生涯に携わる長期的かつ持続的な制度であるため、人口推移や財政状況等、多くの経済的要素が絡んできます。その上、改正するには政治的手続きを経てとなると「国民の皆さん、来月から年金支給は1人につき15万円にします」のように、そう簡単にはいかないのも頷けます。

で、つまり改正後の基本、老齢厚生年金の支給は65歳以上で基礎年金+報酬比例と決定していますが、改正以前の支給条件も考慮して、いきなりの変更では不利な立場の者が出てくるので、段階的に移行してゆき、最終的には65歳以上にもってゆくわけです。

改正前は原則60歳に達すれば、年金受給権が発生する年齢で、女性は55歳からでも一定の条件を満たせば可能でした。それから昭和61年(1986年)以前の制度では、例えば中卒や高卒で社会に出て働いた者は、20歳に満たなくとも厚生年金に加入が可能であり、60歳を過ぎても同様に可能で、現在の制度では受給要件の合算対象期間に算入が認められることになりますが、支給額には反映がされません。その分の不利益な金額は、65歳以降の老齢厚生年金に経過的加算として、給付額に加算されるようになっています。

昭和36年、働く全ての国民を対象とした公的年金制度の事実上のスタートから、昭和61年の現行の年金制度の姿になるまでの25年間は、任意加入の制度でした。それ以降20歳以上60歳未満は、いわゆる強制加入となり、これは現在でも変わらず、老齢年金等の受給権が発生する年齢は65歳になっていますが、これから更に高くなる可能性は否定できません。

すみません!続きは次回にお願いします。

日本年金機構、老齢厚生年金の特別支給について→http://www.nenkin.go.jp/n/www/service/detail.jsp?id=3748

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