0147 老齢厚生年金8 繰上げ支給(一部)

前回に引き続き、老齢厚生年金の繰上げ支給、一部繰上げの場合です。

一部繰上げができる対象者は限られています。男性では昭和16年4月2日〜昭和24年4月1日生まれ、女性では昭和21年4月2日〜昭和29年4月1日生まれの方までです。

上記の生まれに該当する方は、老齢厚生年金の特別支給で、報酬比例部分は60歳に達し、一定の要件を満たすと、受給権が発生しますが、定額部分は上記の範囲の生年月日によって1年ずつ引き上げられてゆきます。

この定額部分の支給開始年齢に到達する前に、老齢基礎年金の一部繰上げを請求した場合、定額部分も同時に繰上げが行われます。別の言い方をすれば、定額部分の支給が開始される年齢になった場合、この一部繰上げは請求できなくなります。

※ つまり、一部繰上げは、60歳になる前月までに請求が必要です。尚、定額部分の繰上げした額のことを、「繰上げ調整額」と呼びます。
日本年金機構、繰上げ繰下げについて→http://www.nenkin.go.jp/n/www/service/detail.jsp?id=3902

老齢基礎年金の一部繰上げの算式は以下の通りになります。
 A = 定額部分の繰上げ月数 ÷ 老齢基礎年金の繰上げ月数
1,繰上げ調整額
  定額部分 × (1 − A)
2,一部繰上げの老齢基礎年金
  老齢基礎年金 × A × (1 − 老齢基礎年金の繰上げ月数 × 0.5%)
3,老齢基礎年金の65歳以後の加算額
  老齢基礎年金 × (1 − A)

上記の算式で、全部繰上げより一部繰上げの方が有利であるのは、3の65歳以後の加算部分で、これがないと「一部」の意味がありません。

では、大雑把ですが、実際に例をあげて計算してみましょう。尚、定額部分の計算は、被保険者期間は480月、生年月日に応じた乗率は適用外の年齢です。物価スライド率に関しては無視します。単価は1676円で算出。経過的加算は除外します。それから老齢基礎年金は年額、804,200 円で算出します。

女性で昭和25年4月2日〜昭和27年4月1日生まれの方が、60歳到達から繰上げ支給を請求した場合、特別支給の定額部分は63歳からの2年間(24ヶ月)支給なので、上記Aに当たる部分の計算は、36÷60=0.6と、なります。
1,繰上げ調整額では
 1676×480×(1−0.6)=321,800円
2,一部繰上げの老齢基礎年金
 804,200×0.6×(1−30%)=337,800円
3,老齢基礎年金の65歳以後の加算額
 804,200×(1−0.6)=321,700円          (10円単位を四捨五入)
 
この計算でいくと、1の調整額は繰上げしても、累計受給額はほぼ同じになり、不利とはいえません。1と3は殆ど同じ計算をしています。
全部繰上げの場合、ひと月あたり0.5%減額となりますから、繰上げ月数60ヶ月で30%の減額が一生続きます。計算では804,200円×(1−0.3)= 562,900円 
これに対して一部繰上げでは、ほぼ659,500円となりますから、一部の方がかなり利益的な選択といえます。しかし、この制度は2014年3月まで(女性のみ)の請求で事実上、該当者がなくなります。それ以降は、全部繰上げしかできません。

日本年金機構、老齢厚生年金の繰上げ→http://www.nenkin.go.jp/n/www/service/detail.jsp?id=5538

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