0154 在職老齢年金1 65歳未満

現在の年金では、60歳になると老齢厚生年金の特別支給によって、年金を受け取ることができます。しかし、60歳を過ぎても、実際に働く人は大勢います。会社に勤めながら年金も貰う。この時、どのような制度上の制限、ルールがあるのでしょう?

厚生年金保険の適用事業所で働く場合、60歳以上であっても厚生年金保険の被保険者(加入者)となります。つまり厚生年金の保険料を支払います。と同時に、老齢厚生年金特別支給(当ブログ0140、0141、0142)の受給も可能になります。しかし、この場合は「在職老齢年金」となって、年金支給額の計算が、働いていない方と異なってきます(自営業等で働く方は、在職老齢年金には該当しません)。

在職老齢年金の支給額計算の条件は65歳未満と65歳以上(当ブログ次回0155で)で分かれ、異なります。今回は65歳未満の条件を解説してゆきます。

総報酬月額相当額と基本月額との合計が28万円(平成24年度)以下の場合は、年金支給の調整は行われません。つまり、そのままです。

この「総報酬月額相当額」の算出は、年金を受け取る本人の「標準報酬月額(当ブログ0128)」と「直近1年間の標準賞与額の総額を12で割った値」とを合計した金額になります。大雑把に言えば、年収を12で割った、1か月当たりの平均給与です。

実際にこの総報酬月額相当額を計算する場合は、その月からの直近1年間の算出となります、つまり毎月ごとに1年間を遡って合計するので、給与額に変化のある方、以前はボーナスがあったが、60歳以降の再就職後はボーナスがなくなった方などは、計算する月づきで、金額が異なってきます。

もう一つの「基本月額」は、老齢厚生年金の支給額を12で割った、ひと月当たりの金額です。ただし、加給年金額や経過的加算などの加算額部分は計算から除外します。

65歳未満の在職老齢年金は、対象になる方が、老齢厚生年金の特別支給を受給される方になります。従って、特別支給に定額部分と報酬比例部分の両方を受給される場合、両方とも足した値で計算します。尚、これから受給される方の殆どは、報酬比例部分のみの受給となり、男性では昭和36年4月2日以後生まれ(女性は5年遅れ)の方からは特別支給の対象外となり、65歳からの通常の老齢厚生年金となります。

総報酬月額相当額と基本月額との合計額が28万円を超える場合は、以下の算出になり、4つのケースに分かれています。そして、A = 支給停止額(年額)です。
1,基本月額 : 28万円以下、  総報酬月額相当額 : 46万円以下
 A ={(総報酬月額相当額+基本月額−28万円)÷2 }× 12
2,基本月額 : 28万円以下、  総報酬月額相当額 : 46万円超え
 A ={(46万円+基本月額−28万円)÷2 + 総報酬月額相当額−46万円}× 12
3,基本月額 : 28万円超え、  総報酬月額相当額 : 46万円以下
 A =(総報酬月額相当額 ÷ 2 )× 12
4,基本月額 : 28万円超え、  総報酬月額相当額 : 46万円超え
 A =(46万円 ÷ 2 + 総報酬月額相当額 − 46万円) × 12

※ 支給停止額(A)が、年金支給額(基本月額×12)を超える場合は、全額支給停止となります。
※ 上記の算式に用いた28万円(支給停止調整開始額と言います)は、28万円を基準に毎年、再評価率の改定基準によって変動します。(1万円未満を四捨五入)
※ 上記の算式に用いた46万円(支給停止調整変更額)は、48万円を基準に毎年、名目手取賃金変動率(当ブログ0137)によって変動します。(1万円未満を四捨五入)
※ 上記の算式は、12を掛けた年額で算出しています。月額の算出では、もちろん12を掛ける必要はありません。通常、年金支給額の算出は年間額を出すので、基本式で表しています。
※ 上記の「基本月額」には加給年金額等の加算部分は算入しません。尚、在職老齢年金において、加給年金額の支給は(加給年金額の支給要件を満たしていることを前提、当ブログ0150で)、上記の計算で支給額があれば全額支給され、なければ全額停止になります。
厚生年金基金において、在職老齢年金の支給額算出は、代行部分は上記の計算を基本としていますが、必ずしも同じとは言えません。厚生年金基金の在職老齢年金の場合、加入されている基金団体によって算出条件が異なりますので、加入先の厚生年金基金で確認をお願い致します。

在職老齢年金の場合は、年金を受け取り、また厚生年金保険の被保険者でもあります。老齢厚生年金の支給額の計算では、この期間に平均標準報酬額や被保険者期間は更新してゆくことになります。

しかし、在職中の更新は、65歳未満の在職中の支給額計算に算入しません。実際に在職中の更新部分を年金支給額に計算すのは、65歳になったときに再計算されるか、または65歳未満で退職して、厚生年金保険の被保険者資格を喪失し、1ヶ月が経過してから再計算が行われます。