0153 老齢厚生年金14 加給年金額の支給停止

この加給年金と振替加算につていの、「支給される」「支給されない」の判定は、年金の教科書を読んでも、年金専門のホームページを見ても、なかなかスッキリしない解説が多く、悩めるところです。

もともと年金の法改正も多く、その度に特例等も増え、複雑になったルールを、大勢いる国民の個別のケースに当てはめるわけですから、場合によっては、即答できない事例も出てきて不思議ではないでしょう。

加給年金、振替加算は当ブログ0150、0151、0152で一定の解説を行ってきましたが、その編集にあたって一番「謎」であった部分が、加給年金の支給停止の箇所でした。年金ダイヤルでこの辺りの確認作業をしましたが、結果的には、様々なケースがあって実際に請求や申出を行わないと「判定」できない、でした。

これは「裁定請求」によるもので、年金制度上のルールがまず在り、そのルールに沿って支給や加算、停止や不支給を実行します。そのためには、まず本人の年金請求が届いて、その内容によって、その時点で権利範囲を確認して、支給額や加算部分の有無が決定される仕組みなので、それは仕方のないことです。
 
具体的な例を挙げて説明します。ただし、できるだけ簡素な例でとします。それから「配偶者」という言葉は使用しない。この配偶者という言葉は受給者本人を指すのか、その相手の妻(夫)を指すのか混乱を招くうえ、どちらを指すのか確認できない文章が度々存在したので、使用しません。それから、加給年金と振替加算の仕組みや条件については、当ブログ0150、0151、0152を一読、参考の上、お願い致します。
★当ブログ150→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20120609

夫:平成24年6月10日で65歳
妻:平成24年7月10日で55歳、会社勤務しています。
上記の場合、夫は昭和22年生まれになります。厚生年金も20年以上加入し、基礎年金の受給資格期間も満たしています。
 
夫が60歳になる3ヶ月前くらいに、年金機構から「年金請求書」が送られてきます。自分自身や妻のことについて記入し、添付書類を送り返します。妻は会社勤めをしていて、当時は厚生年金加入が通算で11年でした。

夫の年金請求書は年金機構で裁定され、老齢厚生年金の特別支給は60歳から報酬比例部分が支給され、64歳から定額部分が支給されます。加給年金額についても、条件に該当するので、報酬比例部分だけの支給時には加算されませんが、64歳の定額部分の支給が始まると加算されます。この場合、妻は昭和32年生まれですので、加給年金額に特別加算額の年額165,000円程度が上乗せされて支給されます。

そして、夫が65歳を迎えると、これまでの老齢厚生年金特別支給の受給権は消滅し、新たに老齢基礎年と老齢厚生年金の受給権が発生、切り替えにも一定の手続きが必要となります。

この夫の場合では、平成24年5月末に「国民年金・厚生年金保険給付裁定請求書(ハガキ形式)」(諸変更裁定請求)が送付されます。これを誕生日月の末日までに提出し、年金機構によって裁定(諸変更裁定)が行われます。しかし、この夫婦の状況は、夫の64歳の定額部分支給時と何ら変わりませんので、前述同様に加給年金額と特別加算額が上乗せされ支給されます。

妻が58歳時に社会保険庁から「年金支給見込」というものが送られて来るかもしれません。けれども、これは請求ではないので裁定されません。夫の時と同様に、妻の60歳になる3ヶ月前くらいに「年金請求書」が送られてきます。これによって、妻の自分自身のこと、夫の状況を記入し添付書類と一緒に送り返し、年金機構が妻の年金請求の裁定を行います。

妻は昭和32年生まれなので、平成29年の60歳時では、老齢厚生年金の特別支給における報酬比例部分が支給されます。定額部分は段階的な引き上げのため、支給はありません。ここで問題になるのが妻の厚生年金の加入期間です。

この妻が58歳の時に会社を辞めて、それ以後、厚生年金に加入するような仕事に就かなかった場合、厚生年金の被保険者期間は19年。つまり、厚生年金保険の被保険者期間は20年未満となり、夫の年金受給額は何ら変わりません。そして、妻が65歳になり、諸変更裁定請求によって、夫の支給額に加算されていた加給年金はなくなり、振替加算として、今度は妻の老齢基礎年金に加算されて支給されます。(年額4万円弱)

しかし、妻が60歳まで会社勤めをして、厚生年金保険の被保険者期間が20年以上になった場合、妻の年金請求の裁定によって、今までの夫の年金受給額から加給年金額と特別加算額の合計が減額されます。つまり、加給年金額は支給停止となります(加給年金額が支給停止になれば、当然特別加算額はありません)。そして妻が65歳になっても規定によって、妻の振替加算は対象外となり、加算額はありません。

上記のように、加給年金額の支給条件である「妻の厚生年金保険の被保険者期間が20年未満か以上か」ここが大きなポイントになります。そして「支給停止」という表現も注意すべき点です。「権利消滅」や「該当せず」ではなく、支給停止には、条件によっては支給再開も起こり得る、と言うことです。
その確認は年金請求によって、年金機構が裁定することで決定されますから、例えば、年金請求が遅れて、加給年金額の過剰支給が後になって判明した場合、その過払い分を年金機構から返還請求されます。

日本年金機構「60歳になったとき」→http://www.nenkin.go.jp/n/www/service/detail.jsp?id=5114

★当ブログ0231免責事項をお読み下さい。→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20130102

図解 わかる年金〈2013‐2014年版〉

図解 わかる年金〈2013‐2014年版〉

社会保険 150%トコトン活用術 (DO BOOKS)

社会保険 150%トコトン活用術 (DO BOOKS)