0161 遺族厚生年金2 支給額と失権について

遺族厚生年金の支給額算出は以下の通りです。

A = 平均標準報酬月額×0.0075×平成15年3月以前の被保険者期間の総月数
B = 平均標準報酬額×0.005769×平成15年4月以降の被保険者期間の総月数
長期要件:支給額 = (A+B)×1.031×物価スライド率×0.75(3分の4)
短期要件:支給額 = (長期要件支給額÷被保険者期間の総月数)× 300

※長期要件、短期要件の解説は前回のブログ0160を参考にして下さい。
※ 長期要件と短期要件の違いは、亡くなった方の厚生年金保険の被保険者期間(加入期間)の総月数が300ヶ月以下(短期)か301ヶ月以上(長期)で分かれます。

※ 短期要件では被保険者期間の300日を保障してくれます。つまり、被保険者期間が300日未満の場合でも300日として算出するため、長期要件の算出した金額を被保険者期間の総月数で割り、ひと月あたりの支給額単価を出して、300を掛ける計算になります。

※ 平均標準報酬月額は、過去の賃金水準を現在価値に適正するため再評価をおこないます。厚生年金保険に加入時の標準報酬月額に平成6年時の再評価率を掛けた値です。この辺りの解説は当ブログ0143でもやっていましたが、もう一度おさらいすると、年金の給付額算出においては、物価変動や賃金変動を反映させます。しかし、どの数値を基準にするのかで計算された給付額が変わってきます。平成16年改正では、平成12年度の給付額等を軸に算出され、再評価においては受給者の生年月日に応じた再評価率が毎年改定されることになりました。しかし、特例で従前額保証(以前の数値の方が有利なので、それで計算します)を行っています。それで平成12年改正の前の平成6年の再評価率で計算を行い、その算出された額に1.031(平成6年〜平成11年までの物価上昇率の累計数値)を掛けて平成12年の水準に戻し、その上で現在の物価スライド率を掛けていますので、もう殆ど「謎の数値」となっています。

※ 上記A、Bの平均標準報酬月額と平均標準報酬額の後にくる数値(0.0075等)は給付乗率のことで、正確には生年月日で異なる乗率が規定されています。が、昭和21年4月2日以降生まれの方は、全て上記の給付乗率が適用されます。それ以前生まれの方は、一般的には既に裁定が済み、受給されている年齢なので省略させて頂きます。尚、短期要件の算出時には、この生年月日による給付乗率の読替はありません。

※ 物価スライド率は毎年改定されます。平成24年で0.978、平成23年の0.981からマイナス0.3%の値です。

※ 老齢厚生年金を受給する65歳以上の方が、配偶者が亡くなって遺族厚生年金を受給する場合、上記の計算で支給される額か、もしくは「上記の算出額の3分の1」と「受給される本人の老齢厚生年金の支給額の半額」との合計か、どちらか有利な方を選択できます。ただし、老齢厚生年金の計算に子の加給年金額の加算があった場合、算出には除外されます。

●遺族の失権について
(1) 対象になる遺族共通の事由としては、受給権者が死亡したときはもちろん、婚姻、直系血族や直系姻族以外の養子となったとき。また死亡した本人との養子縁組の解消。これらの事由は、法的な婚姻や養子縁組に限らず、生活実態が婚姻や養子にあたる場合も失権対象となります。
(2) 受給権者が妻である場合、妻が30歳未満であれば、受給権者となってから5年を経過すると受給権は消滅します。つまり受給期間が5年と限られます。
(3) 子、孫は18歳を過ぎた最初の3月末日を超した場合や、障害等級が1級、2級の子及び孫が、20歳を超えた時に失権となります。また、20歳未満であっても、障害認定が解消された場合も同様です。
父母または祖父母が受給権者の場合、死亡者本人の妻が何らかの事由で受給権者に該当せず、その妻が当時妊娠していた子が出生すると、その子が受給権者となり、父母または祖父母は失権となります。