0168 併給調整

年金の受給は1人、1年金が基本とされています。

公的年金制度の給付は、老齢基礎年金と老齢厚生年金のように、2階建て年金で老齢基礎年金と老齢厚生年金とがセットになって1年金とされています。ですから、老齢基礎年金と老齢厚生年金とは併給(両方とも給付される)されます。

年金受給には様々なケースが出てきますから、1人の方に受給権が複数、発生する場合が出てきます。このようなときは、65歳未満であれば原則として、受給権者本人がひとつの年金を選択し、その他の年金は支給停止となります。尚、65歳以上については、併給される特例がいくつか設定されています。

老齢厚生年金、遺族厚生年金、障害厚生年金は、それぞれ老齢基礎年金、遺族基礎年金、障害基礎年金の基礎年金部分と併給ですが、基礎年金部分が他の基礎年金と受給権が重なったときは、いずれか一つの選択となります。

この複数の受給権で、多く見られるパターンは遺族厚生年金と老齢厚生年金です。この2つの年金を受給できるときの状況は、例えば夫婦とも年金暮らしで、夫が亡くなったとき、残された妻には自分の老齢厚生年金と、夫が亡くなったために遺族厚生年金として妻に支給されることになります。

このとき支給額は併給調整されることになり、妻本人の老齢厚生年金の支給が優先され、以下の最も有利な支給を選択できます。
(1) 老齢基礎年金 +  老齢厚生年金
(2) 老齢基礎年金 +  遺族厚生年金
(3) 老齢基礎年金 + (遺族厚生年金×3分の2)+(老齢厚生年金×2分の1)
※ 上記で?が、いちばん支給額が多ければ、遺族厚生年金の支給はありません。?か?が?を上回れば、?との差額分が遺族厚生年金として支給されます。
※ 老齢基礎年金、老齢厚生年金は本人(妻)の年金です。
※ 遺族厚生年金の支給額は、老齢厚生年金支給額の4分の3です。
詳しくは当ブログ0160、0161でお願いします。→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20120629

また平成18年4月以降から障害基礎年金についても併給が一部可能になっています。
「障害基礎年金 + 老齢厚生年金」と「障害基礎年金 + 遺族厚生年金」の場合です。
障害年金の場合、例えば、当初に障害等級2級の認定を受け、その認定によって障害基礎年金等の受給をされ、後日に体の別の箇所に障害が起こり、更に2級の認定を得たとしても、2つ分の年金を受給することはできません。この場合、障害認定日に2箇所の障害を合わせた、新たな等級が認定され、その新しい等級によって給付額が再決定されます。このことを「併合認定」と言います。
※ 障害基礎年金、障害厚生年金の失権または支給停止に関する事由は以下の通りです。
(1) 受給権者が亡くなったとき。(失権)
(2) 厚生年金保険法による障害等級(1級〜3級)に該当しない状態で、65歳になったとき。ただし、障害等級の該当から外れて3年が経過していない場合は、3年経過したとき。(失権)
(3) 併合認定などによって、新たな障害年金の受給権が発生した場合、今までの受給権は失権します。
(4) 他の年金給付による受給権が発生し、その受給をされたとき。(複数の年金受給権で、1つに選択した場合など、支給停止)
(5) 障害基礎年金では1級、2級。障害厚生年金では1級〜3級の障害等級が該当しなくなったとき。(支給停止)
(6) 労働基準法(77条)における障害補償を受けることができる場合は、6年間の支給停止となります。ただし、障害に関する事由が同じであるときに限ります。
(7) 労働災害補償保険法の障害補償給付の場合、障害基礎年金および障害厚生年金は全額支給されますが、障害補償給付の給付金は調整率によって減額されます。
※ 以下は20歳未満における障害基礎年金の支給停止事由です。
(8) 恩給法、労働災害補償保険法などによる、給付を受けられるとき。
(9) 監獄または、それらに準ずる施設で拘禁されているとき。
(10)少年院などの施設に収容されているとき。
(11)日本国内に住んでいない場合。
(12)前年の所得(政令で定めている額、約380万円以上)によっては、全額もしくは半分の額が、その年の8月から翌年の7月まで支給停止となります。

● 遺族厚生年金と遺族共済年金の場合、調整の扱いは以下の通りです。
(1) 遺族厚生短期、遺族共済短期の場合、どちらか選択です。
(2) 遺族厚生短期、遺族共済長期の場合、どちらか選択です。
(3) 遺族厚生長期、遺族共済短期の場合、遺族共済年金の支給のみです。
(4) 遺族厚生長期、遺族共済長期の場合、併給されます。
※ 短期、長期は、遺族厚生年金と遺族共済年金における短期要件、長期要件のことです。詳しくは当ブログ0160でお願いします。