0169 年金分割

年金分割とは、夫婦であった者の年金が、離婚等によって年金給付を夫、妻の受給分として分割することです。以前はできなかったのですが、平成16年の改正で制度上認められるようになり、平成19年4月から「合意分割」、平成20年4月から「3号分割」が実際に、できるようになりました。

年金分割は何でも半分にできるわけではありません。分割にもルールが定めてあります。

分割対象になる年金の種類は厚生年金、共済年金の2つで、基礎年金に関しては分割できません。

「合意分割」と言うのは、離婚時に年金の分割をルールに沿って、厚生年金や共済年金の報酬比例部分の分割を指し、夫婦間の合意または裁判等によって、分割される給付額を決定するものです。

また「3号分割」とは、国民年金(基礎年金)の第3号被保険者のみが対象で、第3号であった被保険者期間に対する、厚生年金の報酬比例部分を半分に分割することです。
※ 分割対象となる基本的な範囲は、被用者年金制度(サラリーマンや公務員等の雇われた人の年金のことで厚生年金と共済年金を指します、第2号被保険者)の2階建て部分、つまり厚生年金の場合、1階が基礎年金になりますので、2階の報酬比例部分にあたる老齢厚生年金のことです。共済年金の場合は、厚生年金と同様に2階部分の給料比例部分が該当しますが、3階部分にあたる職域加算部分も分割対象になります。
※ 第3号被保険者とは被用者年金の配偶者、第2号被保険者の配偶者(大部分はサラリーマンや公務員の妻が該当します)を指します。例えば、20歳ですぐ結婚して60歳まで専業主婦だった場合、ずっと第3号被保険者なので、年金受給は老齢基礎年金のみになりますが、分割は夫の老齢厚生年金の半分が可能と言うことになります。尚、第1号、第2号等の被保険者区分は「当ブログ0119」→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20120407を参考にお願いします。
※ 3号分割の場合、平成20年(2008年)4月以降の厚生年金保険(または共済年金)の加入分に対する分割に合意は必要ありません。しかし、それ以前に加入している分の分割は、結局のところ合意が必要となります。

さて、例えば夫も妻も両方働いて、夫婦ともに厚生年金保険に加入していた場合の分割はどのようになるのでしょう?
簡単に言えば、分割する割合を離婚当事者の協議によって決めるのですが、そのとき夫婦の年金額を足した半分が上限とされています。

上記のルールでいけば、夫と妻の年金額が全く同額であった場合は分割できません。って言うより分割の必要が生じません。一般的にはどちらかが多いので、少ない方に分けることになります。この時、多い方(つまり持っている年金額が減少します)を「第1号改定者」と言い、少ない方(年金額が分割によって増額になる)を「第2号改定者」と言います。

分割時の計算は「保険料納付記録」が算出の基礎となります。この記録は加入者本人のいつからいつまで、どの会社に勤め、その勤めた期間にいくら給与を貰っていたのかを記録してある物です。ただし、給与は標準報酬月額、標準報酬賞与額(当ブログ0128→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20120425)で記録されています。社会保険庁から送られてくる「ねんきん定期便」に記載されています。

年金分割は、第1号改定者から第2号改定者に対して、分割されるものです。収入が多い方から、少ない方へ分割されるのです。第1号改定者と第2号改定者の対象期間である標準報酬の総額をたし、2で割った額が上限となり、分割の比率を決めます。この割合を「按分割合」と言います。

例えば、妻の標準報酬総額が3000万円で夫が7000万円であった場合、合わせて1億円になります。夫が第1号改定者で妻が第2号改定者となり、半分の5000万円を上限として按分割合を協議することになります。

按分割合で妻が4000万円で夫が6000万円なった場合、夫から妻に1000万円が移ります。第1号改定者から第2号改定者に1000万円で、第1号改定者からすれば7分の1が減ります。この時の割合を「改定割合」と言います。分割の計算は、この改定割合によって算出されます。
1 ÷ 7 = 約0.143 = 改定割合
夫の方は7000円×(1−0.143)になり、妻は3000万円+7000万円×0.143となります。

※ 上記の計算は、理解し易いように簡素化しています。実際には様々な条件があってかなり複雑な算出になります。例えば、夫婦でお互いに会社勤めをしている中、離婚となって年金分割をする場合、対象期間は厳密にどこからどこまでが該当するのか?また、標準報酬総額計算では、過去の金額を現在価値に直す「再評価」が必要になります。(再評価については当ブログ0143へ)再評価は再評価率を掛けて計算しますが、現在では従前額保証での計算の上、夫と妻の年齢が離れている場合等は、再評価にも差異が生じ、それを補正する計算もしなければなりません。他にも細かな計算上のルールがあります。なので、実際に年金分割を行う場合には、専門家の方にご相談や確認をお勧めします。

※ 念のためですが、上記の例に出した年金分割の、妻が1000万円増加して・・・・は標準報酬額です、年金支給額ではありません。大雑把に言えば、上記の額に給付率をかた金額が年金の受取額になります。

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