0156 在職老齢年金3 雇用保険との調整

在職老齢年金の場合には、雇用保険の給付内容によって、公的社会保障制度内で支給が重なる場合が出てきます。このとき支給額を調整することで、重なった給付を、軽減する方法をとっています。

雇用保険の中で、在職老齢年金の支給額調整が行われる給付は「高年齢雇用継続給付」です。高年齢雇用継続給付は更に2つの給付金に分かれます。
1,「高年齢雇用継続基本給付金」と2,「高年齢再就職給付金」の2つです。
1は、60歳からの再就職で、退職しないで、そのまま会社に雇用され時の給付金です。
2は、会社を退職し、雇用保険から基本手当を受給した後に、再就職された時の給付金。
※ 上記1,2の要件詳細は、当ブログ「0106雇用保険7」→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20120313を参考して下さい。
※ 1と2が重複する状況の場合、どちらか一方の選択になります。
※ 高年齢継続給付は、60歳以降に支払われる賃金額が、60歳到達時の賃金額の75%未満であれば支給されます。(例外あり)
※ 雇用支給率は以下の通りです。(賃金低下割合→雇用支給率:%)
75%以上→ 0  74.5%→ 0.44  74.0%→ 0.88  73.5%→ 1.33  73.0%→ 1.79
72.5%→ 2.25  72.0%→ 2,72  71.5%→ 3.20  71.0%→ 3.68  70.5%→ 4.17
70.0%→ 4.67  69.5%→ 5.17  69.0%→ 5.68  68.5%→ 6.20  68.0%→ 6.73
67.5%→ 7.26  67.0%→ 7.80  66.5%→ 8.35  66.0%→ 8.91  65.5%→ 9.48
65.0%→10.05  64.5%→10.64  64.0%→11.23  63.5%→11.84  63.0%→12.45
62.5%→13.07  62.0%→13.70  61.5%→14.35  61%未満→15.00

在職老齢年金と高年齢継続給付が重複する状況であるとき、2つの給付は支給金額を調整されて、受給することになります。このことを併給調整と言います。
この調整では、高年齢継続給付は算出されたそのままの金額を受給し、在職老齢年金の支給額が調整によって、算出された金額分が支給停止となります。この時、支給停止になった金額を「調整額」と呼びます。

調整額の計算は以下の通りです。
1, 標準報酬月額が60歳到達時の賃金額が61%未満のとき
調整額 = 標準報酬月額 × 0.06(年金停止率)
2, 標準報酬月額が60歳到達時の賃金額の61%以上75%未満のとき
調整額 = 標準報酬月額 × 年金停止率
3, 標準報酬月額と高齢者雇用継続給付の合計が、支給限度額(344,209円:平成23年8月現在)を超えるとき。
調整額 = (支給限度額 − 標準報酬月額) × 0.4
※ 年金停止率は、上記の雇用支給率に0.4を掛けた値になります。なので、1に出てくる年金停止率「0.06」は、6%のことで、15×0.4=6のことです。つまり、高齢者継続給付額の4割に値する金額が年金支給でカットされます。

 簡単な例で算出すると、60歳到達時の賃金が45万円で、60歳を超えた賃金に対応する標準報酬月額が20万円であった場合
 200,000円 ÷ 450,000円 = 約44% 
 従って、高年齢雇用継続給付は、200,000 × 15% = 30,000円になります。
 一方、年金支給の調整額は、200,000 × 0.06 = 12,000円となり、
 つまり30,000円の4割=12,000円が年金の支給額から減額されます。

在職老齢年金の考え方は、65歳未満を主としていますが、基本的には「仕事をしたい」「まだまだ、仕事ができる」という立場を取り、年金を支える側の役割が強いといえます。

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