0175 企業年金3 適格退職年金

適格退職年金とは、あまり聞き慣れない年金かもしれません。この「適格?」って何の適格?と思うのも当然です。これは税法上の言葉で、本来の課税に対して、定められた要件を満たせば、法人税法上の特例措置(優遇)を受けられる。この特例に該当する場合を「適格」と言うそうです。

厚生年金基金の場合、会社の規模もある程度大きくなければ設立できません。なので、中小企業などでは、この適格退職年金の制度が、年金基金の代替え的な役割でした。適格要件を満たせば法人税法上、掛金の全額損金扱い、社外で積立可能、運営は受託契約会社に一任なので、制度導入がし易い企業年金といえます。

法人税法上の適格要件は14項目あり、ここでは詳細を省略しますが、概要は従業員のための年金制度であるため、その年金資産を企業側が勝手に流用したり、操作したりできない制度設計を義務づけていました。

この適格退職年金の仕組みは、
(1)企業は従業員に対し、就業規則等に退職年金規定を設け、同時にその規定は労働基準監督署に届出をします。
(2)企業は受託機関である信託銀行や保険会社等と、適格退職年金の契約締結を行い、その契約に基づいて掛金等の払込をします。
(3)受託機関は、国税庁から適格要件の承認を得、企業から払い込まれる資金の運用を行います。
(4)従業員は退職年金規定に沿った、年金給付を受託機関から受け取ります。

給付条件は定年退職給付、中途退職給付、死亡退職給付の3つで、規定によっては一時金の支給もありました。給付期間は最低5年以上の義務づけがあり、給付内容は2種類で、
○ 確定年金(一定期間の支給、受給者が支給期間中に亡くなっても支給されます)
○ 保証期間付終身年金(終身年金ですが、保証期間内は亡くなっても支給されます)

※ この適格退職年金制度は、現在では廃止されています。平成14年4月以降から新規の設立が不可となり、既存の制度は平成24年(今年)の3月末日までに、廃止または移行で、今となっては移行手続きも終わっています。
適格退職年金を採用していた企業はおよそ72,000社で、その多くが従業員300人以下の小規模な企業でした。移行となる企業年金制度は、確定給付型、確定拠出型、中小企業退職共済等になりますが、どれにしても受託機関である金融機関が移行処理に消極的で、従業員数が少ないと移行に伴う費用でメリットなし、積立不足も多い等で、移行は難航していたようです。しかし、この制度は年金の3階部分なので、そもそも3階部なんてない会社もたくさんあります。