0176 企業年金4 中小企業退職共済制度

前回の適格退職年金の移行先で一番多かったのが、この「中小企業退職共済制度(中退共)」です。中小、零細企業では、事実上の退職金制度がない条件も少なくありませんが、この制度を利用すれば、国の助成や掛金の低額など、比較的容易に退職金制度を従業員に提供できるようになります。

● この中退共に加入できる事業規模は以下の通りです。
(1) 小売業 → 従業員50人以下、資本金5,000万円以下。
(2) サービス業 → 従業員100人以下、資本金5,000円以下。
(3) 卸売業 → 従業員100人以下、資本金1億円以下。
(4) 一般業種(製造業、建設業など) → 従業員300人以下、資本金3億円以下。

上記の事業規模でその従業員が対象となりますが、原則雇用関係にある従業員は全て加入が必要ですが、期間従業員や使用期間中の従業員、休職中の従業員等は、未加入であっても良しとされています。また、個人事業の事業主や、その配偶者、家族が従業員である場合、法人企業の役員や別の退職共済に加入されている場合は、対象外となり加入できません。

● 掛金について
掛金は原則、全額を事業主が負担します。
掛金は5,000円〜30,000円まで16段階に分かれていて、従業員の年齢や勤続年数などで選択できるようになっています。パートタイマー等に対応できるように特例掛金もあり2,000〜4,000円になっています。
また掛金の増額や減額も手続きによって変更が可能になっていますが、減額の場合は対象になる従業員の同意が必要になります。
新規でこの中退共に加入される場合(加入後4ヶ月目から)では掛金の半額を、加入後の掛金の増額については、2万円未満において、その増額分の3分の1が、それぞれ1年間助成の対象になります。

● 支給について
この退職金の支給方法については、事業主を通さず直接、中退共からしきゅうされます。
一般的には一時金として、納付額や納付期間に応じた額を一括払いになりますが、一定の要件を満たせば、5年または10年の分割払い、あるいは一時金と分割払いの併用が可能です。
支給額の算出は、通算の納付金額が軸になりますが「基本退職金」と「付加退職金」とに算出が分かれ、基本退職金の方は運用における予定利回りを年率1%で設計しています。ただし、この利回りは法令によって改正があります。付加退職金の計算は、この予定された運用利回りを超えた場合、その分が累積され上乗せになりますので、予め約束されているわけではありません。この2つの算出額を合算した金額が退職金となります。

※ この中退共は「企業間通算制度」が一定の条件の下、利用できます。通常は退職金の場合、その勤めた企業との雇用条件であるため、転職などで他の企業に勤め先が変わった場合、退職金の引き継ぎは行われませんが、中退共の加入者では、前勤め先の退職時に退職金請求をせず、新しく雇用された先が中退共に加入できる場合、そのまま継続して制度を利用できます。ただし、前勤め先での掛金が1年以上の納付があること、転職による掛金支払いの中断が2年以内であることが条件になります。
※ この企業間通算制度は、中退共と「特定退職共済制度」とも通算が可能になっています。
※ また、課税については事業主が掛金として支払う場合、全額損金扱いとなり、退職金として従業員が受取る場合、一時金では退職所得の扱い、分割受取りの場合では雑所得として公的年金控除が適用できます。

※ 今回の中小企業退職共済制度は「年金」ではなく退職金の制度内容ですが、適格退職年金の流れで続けて案内をしました。