0177 企業年金5 確定給付企業年金

確定給付型は、予め従業員に対して給付内容の提示している企業年金なので、そう言った意味では、前にお伝えしました「適格退職年金」や「厚生年金基金」も確定給付型に違いありません。今日は一般的な確定給付企業年金が対象で、適格退職年金と厚生年金基金以外になります。

この確定給付企業年金には設立形態が2種類あります。

(1)基金企業年金
基金型は、企業年金を運営する団体が、母体となる企業とは別に法人格を持った年金基金の運営会社を設立し、資産管理等を行います。事業主と労働組合の合意の下、設立を行い、基金団体には労使双方から選ばれた「代議員会」が規約等の作成にあたります。
集められた資金を実際に運用するのは、契約を交わした受託機関、信託銀行や生保会社で、年金基金団体が運用結果について責任を負いますが、従業員に企業年金として給付の約束を交わしているのは母体企業になりますので、結果的には企業が最終的な責任を負うことになります。
厚生年金基金との違いは「代行部」がないところです。

(2)規約型企業年金
規約型は、基金型と比べてさらに簡素化され、基金団体の設立はありません。労使合意のもと規約を作成し、事業主である企業は、その年金資産の運用や管理を、外部の受託機関である信託銀行や生保会社と契約して、企業年金を運営します。

年金の実質負担である掛金については、基本的には事業主が全額支払うことになっていますが、規約に定め、加入者の同意があれば、掛金総額の半分を上限に可能とされています。

上記のどちらの設立形態であっても、適格退職年金のように、事業主(経営者)が勝手に従業員の年金資産を操作や処分ができないように、受給権保護の規定があります。
(1)年金資産の積立義務・・・・・規約に定めている給付が行えるように、掛金の拠出、運用の検証、年金財政状況の確認など。
※積立不足が生じた場合、事業主は不足分の積増しを行わなければなりませんが、逆に運用が良好で、資産に余剰ができた場合があっても、事業主への返還はありません。年金資産は制度内で留保されますが、その分の掛金の減額は可能です。
(2)受託者責任・・・・・・・・・加入者に対して行為基準の明確化、分散投資義務等の責任規定、利益相反行為の禁止など、加入者に忠実でなければならない。
(3)情報開示・・・・・・・・・・年金制度、年金規約の周知、掛金納付状況、資産運用状況、財務状態等を、事業主は加入者に情報開示をしなければなりません。
 
対象となる加入者は、厚生年金適用事業所の被保険者もしくは私立学校教職員共済の加入者などで、不当な差別があってはなりませんが、規約作成には加入者資格を定めることが可能になっています。

給付内容は、原則60歳〜65歳までの間で、年金規約に定められています。一時金や脱退一時金の支給、障害給付や遺族給付も行うことができます。また、最低5年以上の給付は必要とされています

企業年金の通算措置(ポータビリティ制)が進んでいます。中途退職して、別の企業に再就職した場合、年金資産を個人単位で移換できるような仕組みを図っています。転職した先の企業年金に移換ができない場合は、企業年金連合会が移換の受入をしてくれます。ただし、この移換には本人の申し出が必要で、加入期間が20年未満で受給者でない者となっています。