0174 企業年金2 厚生年金基金

厚生年金基金の加入者は現在約444万人で、公的年金(約6900万人)に比べると1割にも満たない加入者で、大企業とよばれる社員が殆どを占めています。

設立に関しても国の認可が必要になります。単独設立では常時雇用者が1000人以上、連合設立の場合は複数の企業で雇用者が1000人以上、総合設立では5000人以上が対象となっています。
※ 連合設立は、株式の持合や、人的交流等の関係がある複数の企業で設立。
※ 総合設立は、同業種または地域内の複数の企業が共同で設立。

この厚生年金基金の特徴は、公的年金である厚生年金保険の一部を国にかわって代行するところにあります。そして、その上に企業の独自の上乗せ部分の支給があり、実質的な企業年金の部分が加算されます。

厚生年金基金の代行に関する部分は、国の年金資金の一部を移行されるため、厚生労働省による監督下にあり、財政状態のチェックや受給権の保全など厳しい管理体制にあります。また、年金資産の運用についても、厚生労働省が定める受託機関との契約が義務づけされています。企業年金部分は信託銀行による信託契約、保険部分では生命保険との厚生年金基金保険契約、運用では投資顧問会社との投資一任契約が成されています。

最近では、この投資顧問会社AIJ投資顧問による年金詐欺があったばかりで、ウソの投資実績を示して、年金資産を集めたうえ、実際には運用すらしていなかったことに加え、報酬である給与は年間7000万円と言うのですから驚きです。これからますます年金資産の管理については厳しくなってゆくでしょう。
年金基金の加入者は、その運営を行う母体企業の従業員で、企業は代行部分も含めた掛金を年金基金に納めます。そのため厚生年金保険の代行にあたる部分について、本来国に納める年金保険の掛金が一部免除される仕組みとなっています。

保険料の掛金については、予定利率等を含めた年金数理計算によって決まりますが、これは加入先の年金基金によって異なります。計算によって出された掛金も、企業によって従業員と企業が負担する割合も異なり、通常は折半ですが、規約に定めれば半分以上の掛金を企業が負担することも可能です。また、年金基金独自の加算部分については、殆どの企業が、企業のみの負担となっています。
受給資格については、通常の厚生年金にあたる代行部分は、老齢厚生年金と同様で、年金基金独自の加算部分は20年以上の加入期間が必要で、脱退一時金は3年以上とされています。

支給額では、老齢厚生年金に相当する基本部分(いわゆる代行部分)においても、通常の老齢厚生年金の支給額と+αがあります。これによって代行部分の約1割程度を確保しなければならない、とされています。尚、新設の場合この割合は5割とされています。

年金基金が行う加算部分の給付については、独自の給付設計が認められていますが、基本は老齢厚生年金に準じたものになっています。(この場合、加算部分なので、給付額については年金基金によって差がありますが、給付条件である年齢などに関しては、老齢厚生年金に準ずるかたちとなっています。)

厚生年金基金は、公的年金と同様に、その運営が立ちゆかなくなっています。一つは過去の高い利回りで算出していた年金給付と、もう一つは加入者と受給者のバランスです。結局のところ、この不足額は運営母体の企業が穴埋めをするわけですが、それも難しくなってきているのが現状です。そのため、年金基金の代行部の返上や、基金団体そのものの解散が進んでいます。解散の場合は、一時金として積み立てた年金資産を加入者に分配するか、企業年金連合会に移換することになります。

※移換とはこの場合、加入者の年金資産等を企業年金連合会に移すことになります。移換は、解散時にだけ行われるのではなく、例えば厚生年金基金の加入者が中途退職をして、次に勤めた先では別の年金基金団体に加入します。このようなことが、受給年齢まで何度も行われると、受給者は様々な厚生年金基金から受給しなくてはなりません。このような場合に対応して、中途退職者など複数の年金基金をまたがるようなときは、企業年金連合会に移換することになります。