0173 企業年金1

企業年金個人年金は、公的年金と違って国が責任をもって制度を維持し、運営や給付を行うものではありません。公的年金以外の年金を「私的年金」と言い、私的年金の場合、最終的な責任は所属している企業であったり、個人の自己責任として扱われる点が、年金運営上の大きな違いになってきます。

かつて企業年金の会計処理は、損益計算書の中で掛金だけが費用として計上されていました。貸借対照表には殆ど反映されず、主要230社の企業年金による簿外債務は約10兆円に上る程の損失でした。

この企業年金も、高度成長期時代に大企業が従業員のために創立したものが多く、その頃は全て「確定給付型」とよばれる、年金の給付額が決まっている年金システムでした。この場合、年金資産の運用利回りが低下したり、損失をだしたりすると、その分が企業の債務となり、財務諸表には載らない債務が膨れあがり問題になっていました。

現在の企業会計基準では、この企業年金も退職給付引当金のとして会計処理されています。

もちろん過去の損失計上も行って、適正な財務諸表への反映とされています。それに伴って、企業年金もこの確定給付型ではリスクが高く、企業の収益を圧迫するため、確定拠出型年金に制度の変更を行っています。

この確定拠出年金は、いわゆる企業が年金運用リスクを負わない、掛金の元利合計と運用実績によって、年金の給付額が決定するもので、給付額の約束はありません。運用リスクは結果的に加入者本人の責任となってきます。

高度成長期からバブル経済に移り、それからあっけなくバブルの崩壊で、その後20年以上が過ぎた現在では、日経平均の株価が8500円で、円は1ドル80円を下回っています。
このことを高度成長期に予測することは、不可能であったでしょう。仮に現在の経済環境を予測した者がいたとしても、当時では相手にされなかったに違いありません。

確定給付型年金は企業に負担があるにせよ、従業員にはたいへんありがたい制度です。老後の生活設計を立てやすい、給付額が分かっているので安心できました。また企業側も税制上の優遇や、人材確保時に雇用条件の待遇の一つとして、提供できたのです。

それでも企業年金の運用利率の低下による損失が、企業の縮小や倒産に近い状態に圧迫することになれば、これまであった従業員の待遇も変化せざるを得ないでしょう。

確定拠出型年金は、もちろん運用の成績によって、給付額が変わってくるため、確定給付型に比べると、従業員からのメリットは少ないかもしれません。まあ、しかし、どちらにしても企業年金があるだけ幸せと思いますが。

確定拠出が年金のメリットは、それは年金資産が加入者に帰属している点です。つまり中途採用や中途退職に影響されない点です。

現在、企業年金と呼ばれるものは、厚生年金基金、適格退職者年金、確定給付企業年金確定拠出年金の企業型、非適格年金(自社年金)などがあります。
これらの年金の仕組みについて、次回以降もう少し詳しく案内してゆきます。
なので、次回は「厚生年金基金」ついて「お勉強」です。