0195 所得税5 源泉徴収制度

源泉徴収はサラリーマン、会社勤めの人は毎月の給料でお馴染みではないでしょうか?

そう「給料から天引き」という、言わば税金の前渡しです。

日本の所得税の納付方式は「申告納税」なので、1年という期間で区切り、年に一度自ら申告して納税するはずなのですが、先に取られてしまいます。そして年末調整や確定申告によって清算されるのです。国もこのあたりは抜かりなく、収入のある国民全てを1人ひとり対応すると、膨大な数の上、かなりの手間で煩雑な作業になり、それに係るコストも膨大になります。それに誤魔化され易くなります。

しかし、この源泉徴収制度にすれば、会社(事業主)が源泉徴収義務者、言わば税金の取り立てを代行してくれます。納税者からすれば、難しい計算をして納税する手間が省けます。これで一石二鳥ということで、源泉徴収制度の功労者は社会の公器である「企業」で、重要な役割を果たしています。

源泉徴収制度は、制度しては申告納税の補完的役割である位置付けとなっていますが、税金の徴収システムからすれば、納税者が個々に申告手続きをするより、はるかに優れています。世界中多くの国がこの制度を採用しています。

日本が初めてこの制度を導入したのは明治32年となっていますから、近代化されて間もなく制度化されたようです。最初は利子所得だったので銀行が源泉徴収義務者となっていたわけです。確か、明治の終わりくらいまで、当時の銀行は全て国営だったので、利子所得が源泉徴収制度の最初であったのも頷けます。ちなみに当時の国営銀行は名前がなく番号で呼んでいました。現在でも銀行で「十六銀行」や「百五銀行」などの数字が入っている銀行は、当時の名残りです。最終的には約2500程度の銀行が国営銀行として存在し、後に民営化されました。

源泉徴収による所得の規定範囲は「居住者」「非居住者」「内国法人」「外国法人」によって範囲が異なりますが、個人の所得で一般的には「居住者」に該当する方が殆どなので、ここでは「居住者」である方のみ扱います。
※ 居住者とは国内に住所を有する者、もしくは1年以上居所を有する個人が該当します。住所とは個人の生活する本拠で、居所は本拠でない現実に住んでいる場所になりますが、自営業や普通に会社勤めをする方は居住者となります。

所得税の中で、この源泉徴収となる所得は次のような所得が該当します。
(1) 利子等(利子所得) → 公社債の利子、預貯金の利子、公社債投信の収益分配金、勤労財形貯蓄契約である生命保険契約等に係る差益など、その他。㊟一般の貸付金の利子は税法上の利子に該当しません。(利子所得は当ブログ、0199〜0205)
(2) 配当等(配当所得) →  法人から受け取る剰余金の配当、基金利息、投資信託の収益分配金など、その他。(配当所得は当ブログ0206〜0213)
(3) 給料や賃金等(給与所得) → 俸給、給料、賃金、賞与、その他
(4) 公的年金(雑所得) → 老齢基礎年金、老齢厚生年金、付加年金、退職共済年金。㊟障害基礎年金や障害厚生年金、遺族基礎年金や遺族厚生年金等は、非課税所得の扱いとされています。
(5) 退職所得等(退職所得) → 退職手当、一時恩給、退職手当とみなされる一時金など。
(6) 報酬・料金等(給与所得に準ずる扱い) → 原稿料、デザイン料、講演料、弁護士等の報酬または料金、プロ選手等の報酬や契約金、芸能人の報酬や料金、ホステスやコンパニオンの報酬や料金、馬主が受ける競馬の賞金など、その他。
(7) その他の所得 → 定期預金の給付補填金、生保や損保と保険契約等に基ずく年金特定口座の上場株式等の譲渡による所得、割引債の償還差益金など他。

源泉徴収義務者
 源泉徴収義務者は企業や組合、学校に官公庁、人格のない社団法人、そして個人も場合によっては該当します。
源泉徴収義務者とは、前述したおとり源泉徴収の対象となる所得を、実際に課税され納付する者に代わって預かり、支払義務を負う者です。給料から所得税を納付する義務者は、給料を受け取った本人(従業員)ですが、源泉徴収の場合、給料から課税分を天引きして、勤め先の会社が、その税を税務署に納めることになります。つまり会社が所得の支払い者で「源泉徴収義務者」というわけです。利子所得の場合、多くは金融機関が源泉徴収義務者となり、配当所得では利益分配した、株等を発行した発行元の企業が源泉徴収義務者になります。

個人が源泉徴収義務者となるケースでは、細かい規定によって判定されます。例えば、弁護士等の報酬では、弁護士と雇用関係にあるかが問題となります。一度きりの報酬支払いの場合、義務は生じませんが、継続して給与形態で支払う場合は、源泉徴収義務者になります。同じようなケースでもこれがホステスに支払う報酬であれば、一度きりでも源泉徴収が必要とされています。

源泉徴収義務者は企業や組合、学校に官公庁、人格のない社団法人、そして個人も場合によっては該当します。例外的に該当から除外される組織もありますが、国際通貨基金国際復興開発銀行などの一般的には、あまり関わりのない組織です。

また、大使や公使および外交官、大使館員、そしてその配偶者に対しては、所得の性質に問わず、全ての所得について課税しない。と、ウィーン条約で規定されています。

●納付期限 
徴収した税金は、原則として支払った月の翌月10日までに納付しなければならない、とされています。期限である10日が土曜、日曜、祝日などに当たる場合は、休日の明けた日が期限となります。尚、給与支給が10人未満の源泉徴収義務者は、特例として半年に一度の納付で可能となっています。1〜6月までの支給分は7月10日までに、7〜12月までの分は1月20日までに、とされています。

もし期限までに納付されなかった場合、源泉徴収義務者は延滞税や、不納付加算税などの、いわゆる罰則金が加算され、その分の負担が増加します。