0196 所得税6 課税単位

この「課税単位」というのは、税金を納める者が個人であるか、集団を一つの単位として課税するのか否かの問題です。

例えば、法人では一企業単位ですが、実際には連結納税がありグループ企業で一単位とも言えます。もちろん個人の所得を他人と合算するわけにはいけませんが、夫婦や家族という単位はどうでしょうか?

独身者と夫婦共稼ぎの場合を比較すると、仮に完全個人別に所得税を課税した場合、一人あたりの収入と納税額は公平ですが、消費を考えた場合は少し違ってきます。独身者の方も、部屋を借りると家賃が発生し、生活をすれば光熱費や通信費等が必ず消費されます。しかし夫婦二人で暮らすと、家賃や光熱費が二人分係るわけではありません。一人あたりの収入が同じであったなら、費用は独身者に比べて夫婦共稼ぎの方が少なくて済みます。この場合、結果的には独身者より夫婦の方が「担税力がある」となり、一人あたりの収入が同等であっても、課税は果たして公平と言えるかどうかが問題となってきます。

また、夫婦であっても片方しか収入がない場合もあれば、共稼ぎであっても子どもが一人、あるいは二人、三人と養ってゆく場合、他には離婚をして独身ではあるが養う子どもがいる場合等、個人単位の課税といっても状況による差異を無視して、一律に同じ対応をすれば、現実的な担税力の差を考慮していない不平等さが生じてきます。

日本の課税単位は、現在では一人ひとり個人単位として課税されます。様々な状況によって異なってくる担税力については、政策的な控除を設けて、ある程度の調整が成されています。

この個別に課税することを「個人単位主義」と呼び、共同の消費が成される単位に課税することを「消費単位主義」と呼ぶそうです。消費単位主義の場合は個人と違って、どのような意味でその単位を区分するのかで、また税負担が変わってきます。例えば、夫婦共稼ぎの場合や、片方だけ収入がある場合、同居する家族すべての収入を合算して課税するのか、と言うように、単位をどのように括るのか、その区分は選択できるのか、消費単位であればこれらのような問題が必然的に起こってきます。

日本が個人単位主義であることは、昔からそうなのですが、過去には夫婦の収入を合算し、特別な計算で課税していた時代もありました。現在は所得税累進課税は6段階で最高税率は40%とされていますが、昭和40年、50年の頃は19段階で最高税率は75%もあったため、高額収入な方は、この合算で計算する方がかなり節税できたのです。個人単位主義と言いながらも、消費単位主義である夫婦の収入合算が認められていました。

個人単位である必要性は、一つは単純に課税対象の範囲や税額計算が、複数を合算するより明解で簡単であること。もう一つは、家族経営などの事業において、夫婦や家族の所得を自由にコントロールできる立場であれば、制度を利用して有利な節税が可能であったり、または不正を誘う温床にもなりかねない。そのようなことになれば不公平な課税制度になるためとされています。

課税単位に関しては、様々な考え方や、過去には実質的に消費単位主義に近いようなこともありましたが、現在では個人単位主義として、一人ひとり独立した課税計算されることが原則となっています。