0194 所得税4 所得税の課税方法

所得税の課税にはいくつかの方法があり、その方法を紹介してゆきます。原則としては、「総合課税」とよばれる方法で、各種の所得が合算して計算でき、税率には「超過累進税率」が適用されます。

● 総合課税
個人の一年間の所得は10種に分けて、それぞれの規定に沿って一定の計算の後、それらの所得を合算して、次の計算に移ってゆきます。総合課税の特徴は、この他の所得との「合算」にあります。合算ですから、いずれかの所得に損失(いわゆる赤字)が生じれば、他の儲けた所得で相殺(損益通算)され、課税対象額が減るような仕組みになっています。一般的には多くの種類が総合課税となっていますが、お決まりの例外もたくさんあり、そこが税法の難しいところです。
総合課税には原則、累進課税が適用されます。累進課税はその名の通り、所得金額が多いほど、税率も高くなってゆきます。以前は3〜37%でしたが平成19年以降は5〜40%になっています。実際にはこれに住民税(府市民税など)の一部が累進課税になっているため、その分が地方税として、所得税とは別に納税義務が生じてきます。

● 分離課税
所得税の原則は総合課税でありますので、分離課税は例外的な扱いになりますが、対象になる源泉は少なくありません。利子や配当、株の売却利益、不動産の譲渡など、金融機関が扱う金融商品や、取引が高額になる土地や建物などが、この分離課税の対象になっています。ただし、金融商品であれば全部が、不動産であればどのような場合でも分離課税であるか、と言えばそうではありません。適用になる条件や範囲がありますので、注意が必要です。
また、分離課税は「申告分離課税」と「源泉分離課税」の2つの課税方法に別れます。申告分離課税は、通常の分離課税のことで、日本の所得税の納税方式は「申告納税」ですから、総合課税でない分離課税は申告分離課税となります。源泉分離課税の場合は、分離課税の中でも源泉徴収義務者が、その発生した収益から規定の税額を徴収し納付するシステムで、納税義務者には既に納税額分を引かれた収益が渡ることになります。例えば、銀行に1000万円預けて1年後に利子が20万円の利子収入があった場合、源泉徴収義務者は銀行となり、仮に税率が20%であるなら4万円の源泉徴収を行い、預金者には16万円の税金を引いた額を渡すことになります。簡単に言うと「天引き」にあたります。

この分離課税の措置は、超過累進税率の適用にふさわしくない、と言う課税上の配慮によるものです。所得の種類や条件によって累進税率ではなく、一定率の税率を適用するものですが、不動産の譲渡などは、その譲渡額自身が高額になりますし、上記の利子の場合に超過累進税率を適用すると、銀行に預ける動機が薄れてしまいます。

分離課税の場合、消費税のように、その対象になる金額に一定率を乗じます。この場合でも、対象になる金額が大きいほど納税額は高くなります。超過累進税率の場合は対象になる金額が大きいほど税率も高率になっていきますから、課税政策として分離課税があるのはむしろ自然と言えます。

原則が累進課税というのも、税金の役割である「再分配機能」を考えると、当然の制度であります。しかし、実際には単純に何に対しても超過累進税率を適用すると、無理な状況が出てきますので、そこで課税上の政策的な配慮で、特例や改定などが多数存在し、制度が複雑化してゆく根源になっています。もっと簡単な方法はないのでしょうか?

尚、源泉徴収制度については次回、詳しく勉強します。


図解 わかる税金―収入・財産・生活にかかる税金〈2012‐2013年版〉

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