0198 所得税8 所得税額の計算手順

前回の所得税の種類が横幅とすれば、今回の所得税納付額を確定する手順は、その奥行きって感じになります。当ブログ税金10の所得税の仕組みの中で、大まかな流れを書きましたが、実はこの奥行きの計算には、嫌になるほどの手間が存在します。

前回で所得の10分類を行いましたが、そのなかで申告分離課税源泉分離課税は合算できませんが、総合課税に当たる所得は合算して算出します。10種類の所得の中で総合課税となる所得は(1)配当所得(総合課税として選択が必要)(2)不動産所得(3)事業所得(4)給与所得(5)譲渡所得(証券や不動産を除く一般資産)(6)一時所得(7)雑所得、です。

それから申告分離課税に当たる所得は配当所得、退職所得、山林所得、譲渡所得(証券や不動産の場合)、源泉分離課税は利子所得、配当所得です。
源泉分離課税源泉徴収制度は同じ意味でありません。

上記の意味を踏まえて、所得税の納税額を算出する手順は、次のようになります。尚、総合課税と分離課税は分けて計算します。通常は先に総合課税を計算し、次に分離課税の計算を行います。

(A)1月1日〜1月31日までの各種所得額の算出。尚、前回のブログ0196の算式を参考に計算。
※納税額算出の第一段階、各種の所得額計算です。収入そのものの額を所得額とするのではなく、税法上の所得とは前回ブロクで紹介したように、収入から規定の費用を差し引いた額を所得としています。
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(B)損益通算。赤字所得と黒字所得の相殺。これには制限や、計算順序があります。源泉分離課税以外は損益通算の対象可能性があります。
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(C)合計所得金額から損失の繰越控除額を引きます。
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(D)Cの算出額が総所得金額(課税標準)で、このB、C、Dまでの一連の計算を「課税標準の計算」と呼んでいます。これは、つまり「収入−経費=儲け」で、課税対象とする「儲け(課税標準)」までの計算です。
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(E)所得控除。この控除は費用の見積額ではなく、夫婦ともに収入がある場合の調整や、社会的弱者の支援措置、個人が負担する社会保障費用の軽減等、政策的な意味の控除。
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(F)課税総所得金額。課税標準から所得控除を行った額が課税総所得金額になりますが、これは総合課税の算出で、分離課税はここまで、それぞれの所得において特別措置等の控除を行った額になります。E、Fは課税される所得を算出する手続きで、「課税所得金額」の計算になります。
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(G)税率適用。総合課税は累進課税制度で所得額が多い程、適用される税率も高くなる制度です。分離課税はそれぞれの所得によって適用される税率が異なりますが、累進ではなく定率となっています。
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(H)算出税額。それぞれの適用税率で計算した額を合わせます。
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(I)税額控除。各種、特例措置等の控除。算出した税額から差し引くので、控除の効果は大きくなります。
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(J)定率減税額の控除。  (K)源泉徴収税額の控除。
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(L)申告納税額。
(M)予定納税額の控除。
(N)確定申告による実納税額。過不足の清算

これで所得における納税額の計算は完結します。

簡単におさらいすると、所得10種の各収入から規定費用をひいた所得金額を出し、損益を相殺し、今度は所得控除を行い、そして税率を乗じます。分離課税は個別に計算し、税率も個別に乗じます。計算して出した所得税額から税額控除があれば差し引いて、源泉徴収などの前払い分があれば、その分も差し引いた額が、納税額となり、確定申告や年末調整で、この清算を行います。