0211 所得税21 配当所得6 資本金と剰余金

さて、ここで企業会計の仕組みから、配当金とはどういうものなのか見てみましょう!

企業会計の財務諸表、いわゆるバランスシートでは向かって左側が資産、右側上が負債、そして右側下が純資産となります。配当は、この純資産の仕組みを知っておく必要がでてきます。

純資産は会社全体の資産から借金(負債)を差引いた残り、本当の資産の意味で「純資産」と呼んでいます。昔はこれを「資本」と呼んでいました。企業の安全性や実力が窺える財務諸表の最も重要な項目です。
資産や負債も様々な科目に分かれるように、純資産についても多くの科目に分かれています。
純資産は、大きく分けると「株主資本」と「株主資本以外」とに分かれます。

株主資本以外というのは、評価性の資産のことで「時価−簿価」、未だ現金化されていない、未確定な利益(または損失)のことです。有価証券の評価差額金や土地における評価差額金などがあります。また新株予約権についても、権利行使をしない限り株主とは言えず、株主資本以外の項目に含まれています。
株主資本は(1)資本金、(2)資本剰余金、(3)利益剰余金、(4)自己株式に分かれます。

(1)資本金
これは株主が会社に対して、払い込みをした金額で、会社法では株式の発行価額ではなく、実際に払込があった金額を基準とします。ただし、会社法では株主全体の払込額の半分以上をあれば、資本金としてOKです。残りは資本準備金として計上しなくてはなりません。

(2)資本剰余金
資本剰余金はさらに「資本準備金」と「その他資本剰余金」に分かれます。
資本準備金は先に説明した通り、株主の払込額のうち、資本金として組入れる最低限度額が半分なので、その条件をクリアすれば、残りを資本準備金とすることができます。それ以外の項目に振り分けることはできません。株主払込剰余金とも言われています。
その他資本剰余金は、資本剰余金の中で資本準備金以外のものになります。具体的には合併差益、資本減少差益、資本準備金減少差益、自己株式処分差益などがあります。

(3)利益剰余金
利益剰余金は、損益計算書から財務諸表の純資産の項目に算入する利益、または過去の利益の積立(留保利益)で、これもまた「利益準備金」と「その他利益剰余金」とに分かれます。
利益準備金は、会社法の規定で計上しなければならない金額で、配当を行う場合に資本準備金利益準備金の合計額が、資本金の4分の1を下回る場合には、必要額を計上しなければならない、とされています。(※、この配当の分配可能額は、会社法でもう少し細かい規定があります)
その他利益剰余金は、任意積立金と繰越利益剰余金とに分かれ、任意積立金は取締役会もしくは株主総会で決定されます。配当平均積立金や退職給与積立金など、使い道が特定されているものが多いのですが、特定されない使途は別途積立金として留保されます。

(4)自己株式
会社が自己の株主に対して、その株式を買い戻した場合、実質的には出資の払い戻しとなるため、財務諸表においての記載が、純資産項目で控除される形となります。

上記が純資産項目の内訳で、すっかり会計の話になってしまいましたが、問題は「税法上の配当とは?」でした。

で、上記の科目区分や規定は「会社法」が根拠となっています。(1)(2)である資本金、資本剰余金は、損益計算(企業が営業等で稼いだ利益)からなる利益剰余金とは通常、混同できなくなっています。つまり、株主の出資金と、企業が稼いだ利益とを、一緒に扱ってはいけません、そう規制しているのです。※原則はそうなのですが、しかし平成21年4月1日以降、一定の条件の上、手続きによって利益剰余金から資本剰余金への組入が可能になっています。

会社法が言う配当は、通常の利益剰余金から分配も、資本剰余金からの分配も同じ「配当」と称されますが、所得税法では資本剰余金からの配当は、資本の払い戻しとされていて、株式の売買いから発生する譲渡益と同じ扱いと解され、配当所得ではなく譲渡所得の該当になります。

資本金そのものは株主の払込金であり、また債権者に対する債務能力の担保である意味が強く、そのため簡単に増減できなくなっています。資本準備金については一定の条件、会計手続きの上、その他資本剰余金への取崩しが可能です。資本取引が起因する株主への金銭等の交付は、通常「その他資本剰余金」に振り替えて分配し、仮にその他資本剰余金が不足に陥った場合等は、次にその他利益剰余金からの分配となります。

一方、交付を受けた株主側からでは、取得金額より交付された金額の方が多い場合、その多い分の内訳は、交付した企業の資本金等による増加分(減少分)を譲渡所得として、それ以上の金額は利益(損金)とみなされ、配当所得としての課税の対象となります。

※ 企業会計を規定する会社法は、企業のステークホルダー(利害関係者)に対しての公正なルールとして役割を成していますが、所得税法法人税法では、その所得が何をもって獲得されたかと言う源泉と、所得の性質による担税力を考慮して規定しています。従って、会社法と税法では異なるルールなのですが、その基となるのは会計原則となるので、この理解や知識が不可欠となってきます。

楽天証券、資本剰余金からの配当→https://www.rakuten-sec.co.jp/web/market/opinion/adachi/adachi_20120216.html

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