0216 所得税26 不動産所得3 不動産所得と事業所得

個人が営む不動産賃貸業の収益は不動産所得に該当しますが、同じ不動産賃貸の収益であっても事業所得として扱われる、その基準とは何だろうか?

所得税法では、事業から生じる所得を「事業所得」としていますが、どういう要件を確保すれば「事業」に値するのか、それは規定されていません。

事業と称するには「対価を得て継続的に行う」「社会通念上、事業と認められるもの」とされていますが、これだけであらゆるケースを判定するのは困難です。

国税庁のホームページ「No,1373 事業としての不動産貸付とそれ以外の区分→http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1373.htm」によると、
事業としての判定は「要件」ではなく「基準」で、「原則として社会通念上事業と称するに至る程度の規模で行われているかどうかによって、実質的に判断します」となっています。その上で、
(1)貸間、アパート等については貸与することのできる独立した室数がおおむね10室以上であること。
(2)独立した家屋の貸付については、おおむね5棟以上であること。
と、されています。

また、所得税基本通達によれば
(3)ケース貸しの場合、店舗の部分貸付けと同様で不動産所得に該当します。
(4)貸間、アパート等の賃貸で食事の提供がない場合は不動産所得ですが、下宿等のように食事の提供が成される場合は、事業所得または雑所得に該当します。
(5)広告等で、土地や家屋の屋上または側面、塀などにネオンサインや広告看板を取り付けることによって得られる収入は不動産所得に該当します。
(6)不動産業者が販売目的で取得した土地や建物等で、その不動産を一時的に貸付けた場合の所得は、不動産販売業の付随的業務から生じた事業所得に該当します。また、貸金業者が代物弁済等により取得した不動産を一時的に貸付けた場合の収入も同様に、事業所得にあたります。
(7)事業主が従業員に宿舎等を提供して得られる賃料収入は、福利厚生的な意味が強く、通常では実費程度となっていることから、事業所得に該当します。

上記の(3)〜(7)については、そもそも「不動産所得」に該当する所得であるかどうかの範囲規定であるのに対し、(1)(2)は不動産所得に該当する範囲の性質ではあるが、収入母体が事業規模であるため事業所得として扱う、その判断基準となります。

※ 鉱業権、砂鉱権、漁業権などは、土地の利用でもなく、不動産上に有する権利にも該当しないため、不動産所得にはあたらず、これらの権利から生じる所得は事業所得または雑所得になります。

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