0215 所得税25 不動産所得2 不動産所得の性質

所得税における不動産所得の殆どは、いわゆる賃料、家賃等の収入、そしてその家賃等に付随する敷金や礼金、共益費等の収入が主だった所得なのですが、「不動産」に纏わる税金は他にも幾つかあります。

まず、不動産を購入するときには「不動産取得税」「登録免許税」「印紙税」「消費税」が掛ります。購入ではなく不動産の相続であれば「相続税」と登録免許税、贈与なら「贈与税」と不動産取得税と登録免許税が掛ります。

不動産の所有時には「固定資産税」や「都市計画税」、売却すれば「譲渡所得」となり、賃料を取って貸した場合の収入は、所得税と住民税が課せられます。この不動産の賃貸による収入は原則「不動産所得」、条件によれば「事業所得」となり、この区分は「事業とよべる規模」や「人的なサービスの有無」などで判定されます。事業所得である「事業」とは「対価を得て継続的に行う、社会通念上事業と認められるもの」とされています。

ここで、あらためて不動産の貸付けによる収入を考えると、所得区分では「不動産所得」「事業所得」「譲渡所得」「雑所得」の4つが可能性として考えられ、それ以外にも法人が不動産貸付による収入を得た場合や、信託としても不動産活用はたくさんあります。

もちろん法人化していれば、不動産の貸付による収益は法人税として処理されます。また、信託の場合も不動産の貸付による(賃貸型の信託)契約であれば、その信託による配当は、条件にもよりますが通常は不動産所得として扱われます。

不動産所得は個人レベルでの想定で、言わば余剰資産である土地や建物を活用して得られる収入であるのに対し、例えば法人事業でビルを建て、その中の室を賃貸オフィスとして提供した場合、ビルの保有は利益を獲得する手段であり、賃貸オフィスは「商品」であり、継続した営利目的である企業の通常の経済活動と言えます。同じ不動産貸付の収益であっても意味が大きく違ってきます。事業所得を考える場合、この個人と法人の中間的なイメージになります。

ところで、不動産所得にしても事業所得にしても、たとえ譲渡所得になっても、これらはすべて原則「総合課税」ではないか?つまり、どの所得に該当しても結局は合算して計算するので同じではないか?そう思うかも知れません。

そもそも事業所得は、この所得区分の中でも他の所得と比べて、かなり特異な所得ではないでしょうか?。不動産所得は土地や建物、船舶と航空機という、言わば「物」でありますし、譲渡も所有の転移によるものなので、これも対象になるのは「物」や「権利」(ただし、譲渡所得の意味は転移による差益です)。これに対して事業所得の事業とは「組織の形態や規模」による区分で、個人と法人の中間的な規模として営む者への措置としての区分、収益の発生である源泉としての所得とは同一線上とは言えない性質の所得区分で、このことが所得の区分けと、その計算手続きをいっそう複雑化していると言えます。

所得区分によって異なる結果、つまり納税額の違いが出てくる主な要因は、その所得が規定する「費用の範囲」で、これによって算出結果が変わってくるのです。

不動産の貸付による収益は原則「不動産所得」とされる一方で、それが個人ではなく法人組織であれば、その収益は法人税として課せられ、法人化していない事業であれば事業所得として扱われます。その意味は前述した通り、継続した営利性や社会的な役割に帰属するものですが、実務上では節税対策として事業化や法人化を利用することも少なくありません。

国税庁、不動産所得→http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/shotoku/04/02.htm
国税庁、不動産収入を受取ったとき→http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1370.htm

★当ブログ0231免責事項をお読み下さい。→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20130102

改訂新版 土地建物の税金と活用実践マニュアル

改訂新版 土地建物の税金と活用実践マニュアル