0235 所得税43 事業所得13 財務諸表

ここでは「決算書」とも言える財務諸表について、少しお話しておきます。
財務諸表は、会社の財務状態や一年間の収益の成績などを、会社の内外部の関係者に報告する計算書類です。

これら財務諸表による計算書類によって、その企業の財務状況の安全性や優良度、を知ることはもちろん、過去の財務諸表や同業他社との比較によって、どういった箇所が改善されたのか、どこが悪化したのか、どの部分が強く、脆弱な部分はどこなのか、そういった分析が可能になり、対策や経営計画に役立たてることができます。

また、取引先の企業では、このまま取引を続けて問題は起こらないだろうか、あるいは新規の取引を始めるとき、相手の財務状況を確認することは当然のことでもあります。

銀行等の金融機関にしても、融資をしてきちんと返済してくれるだろうか?融資の規模は適切なのか、その手がかりも多くは決算書から判断されます。
上場企業の株式を保有する投資家は、今のうちにもっと買った方が得であるのか、売りに出した方が無難であるのか、財務相表を有力な投資の判断材料としています。
 
財務諸表は幾つかの計算書類で構成されています。簡単に説明すると以下のようになります。当たり前といえばそれまでですが、財務諸表の各計算書類は貨幣単位(日本の場合は円)で表記されます。

(1) 貸借対照表
決算日における企業の財務状態。資産、借入金、純資産(資本金)の状態を表します。左右(向かって左側が資産、右側が負債と純資産)の金額が一致することからバランスシートと言い、場合によってはBSと略されています。

(2) 損益計算書(次回ブログ0236で、もう少し詳しく)
決算日まで1年間の企業の営業成績。一年間の企業の経済活動の結果を、売上、費用、営業外収益、営業外費用などを加減して最終的な利益を確定します。プロフィット・アンド・ロス(Profit and Loss Statement)で、場合によればPLと略されています。

(3) キャッシュフロー計算書
現金収支。発生主義による会計では、帳簿上の収支と、実際の取引から生じる現金の収支は一致しません。なので上記の計算方法とは別の方法で算出して、現金収支の報告が必要となります。このキャッシュフローが重要であるのは、帳簿上の売上や利益が上がっていても、現金収支の余裕がなければ、資金繰りに行き詰ったり、債務の弁済能力が疑問視され、投資や融資に影響します。キャッシュフロー計算書 (Cash Flow StatementでCFと略されます)の内容は大きく営業CF、投資CF、財務CFの3つに分かれていて、営業CFは損益計算書にあたるキャッシュフローで、投資CFは貸借対照表の資産部、財務CFは負債、資本部にあたります。このキャッシュフローは身近なところでは家計簿がそうですし、事業の資金繰りも同様です。

(4) 株主資本変動計算書
これは貸借対照表の純資産における株主資本に関する計算書で、株主資本については当ブログ0210(配当所得6資本金と剰余金)簡単にふれています。株主資本の内訳は、資本金、資本剰余金(資本準備金、その他資本剰余金)、利益剰余金(利益準備金、その他利益剰余金)、自己株式で、これに評価・換算差益等と新株予約権が加わり純資産を構成し、純資産の変動を株主に報告するためのものです。

(5) 個別注記表
上記の財務諸表の計算書類で注記事項を纏めたものです。主には算出方法についてですが、会社の継続的な事業活動に大きな問題が発生したり、業績が著しく変化した場合等は、その事象の記載が必要とされています。

※ 財務諸表を構成する計算書は「会社法」に準じていますが、会社法には上記(3)キャッシュフロー計算書の作成義務はありません。キャッシュフロー計算書は金融商品取引法で上場会社に開示が義務付けられています。

※ また上記の計算書類の他にも、親会社や子会社といったグループ会社で一定の規模を超えると連結財務諸表(連結計算書類)の作成が義務付けられています。

個人事業を営んで、事業所得として申告する場合、確定申告に最も必要となるのが上記(2)損益計算書です。これに基づいて収入や経費、課税所得の金額が計算可能となります。もちろん(1)の貸借対照表も作成した方が事業継続の点では有効ですが、通常の確定申告では多くの場合において直接必要ではありません。青色申告の場合は決算書の添付において(1)(2)ともに必要になります。

上記の財務諸表で(3)(4)(5)は上場会社のみ必要な計算書類なので、事業所得の申告には無関係です。

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