0236 所得税44 事業所得14 損益計算書
事業所得を計算して申告する時に、基になる計算書類がこの損益計算書と言えます。
この損益計算書は、個人事業であっても大企業であっても、大まかな考え方は同じで、「売上 − 費用 = 利益」の計算構造です。
所得税における青色申告決算書の損益計算書、その算出構造をみてゆくと、
(1)売上 : この売上金額は返品や割引等の処理した後で、雑収入があれば、その収入も加算します。
(2)期首商品棚卸高 : 前期決算書の貸借対照表、その中の「期末棚卸資産」が今期の期首商品棚卸高として繰越となります。
(3)仕入金額 : 割戻し等があれば調整後の金額。製造業の場合は製品の製造原価。
(4)小計 : (2)+(3)の合計金額。
(5)期末商品棚卸高 : 決算日付けで実施した商品の棚卸高
(6)差引原価 : (4)−(5)の金額。つまり今期の売上原価。
(7)差引金額 : (1)売上 −(6)売上原価 = 粗利益
ここまでは「粗利」の計算。利益獲得のための直接的な費用ですが、次の(8)以降の科目は、販売・管理・その他の費用科目で、利益獲得のための間接的な費用です。
(8)租税公課 : 事業税や固定資産税、税込経理方式での消費税の納付額など。(消費税について当ブログ0242,0243
→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20130213
(9)荷造運賃 : お客様に商品等を発送したときの包装代や送料。仕入れ時の送料等は仕入原価に含みますので別です。
(10)水道光熱費 : 自宅と事業場が兼用の場合は「事業使用割合(当ブログ0233→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20130117)」として計算。
(11)旅費交通費 : 従業員の出張や通勤代、高速代やガソリン代なども。
(12)通信費 : 電話はもちろんプロバイダー料、切手やハガキも。
(13)広告宣伝費 : チラシ等は当然、従業員の募集やITを利用した広告も。
(14)接待交際費 : 顧客、取引先等の相手が対象の飲食代、慶弔金などです。
(15)損害保険料 : あくまで事業上での損害保険に限定されます。
(16)修繕費 : 事業用として使用する建物や設備、機械などの修繕。
(17)消耗品費 : 原則、購入額が10万未満の物。
(18)減価償却費 : 原則、20万円以上で購入したものが対象になります。
(19)福利厚生費 : 従業員が対象で、事業主も含めます。
(20)給料賃金 : 青色専従者給与は別の欄に記入します。
(21)外注工賃 : 外部に加工や修理などを依頼、処理した費用。
(22)利子割引料 : 借入金等の支払利息を期間対応して処理します。
(23)地代家賃 : 支払賃料などを期間対応して処理します。
(24)貸倒金 : 事実上、損失として費用処理となります。
(25)〜(30) : 空欄となっています。特別に必要な費用計上があれば、科目を記入して算入します。
(31)雑費 : 上記以外の費用。
(32)計 : (8)〜(31)までの合計額
(33)差引金額 : (7)−(32)で営業利益です。
このあと企業会計では「営業外収益」と呼ばれる収入、受取利息や配当などを加算し、「営業外費用」と呼ばれる支出、支払利息などを減算した金額、「経常利益」と呼ばれる企業の実力を示す利益額とされています。
営業利益が本業の稼ぎで、経常利益は本業以外の稼ぎ又は損失を足したもので、企業会計ではこの経常利益のあとに「特別利益」「特別損失」を加減して最終的な利益を算出します。特別利益は固定資産売却益など、特別損失は固定資産売却損や災害での損失等を計上したものです。
この最終的な利益は「税引前当期純利益」とされ、ここから法人税や住民税、事業税等を減算して「当期純利益」が確定します。
しかし、事業所得の場合は、利子や配当は別の所得として課税され、火災等の災害による損失は、他の所得と通算、繰越などの処理となるため、企業会計のように営業外や特別損益などの科目は存在しません。
所得税の青色申告決算書による損益計算書は次に「各種引当金・準備金等」の項へ進みます。ここでは繰戻、繰入があり、科目の欄には「繰戻額等」の箇所に、
(34)貸倒引当金 : 貸倒引当金戻入として金額を加算します。
(35)、(36) : 空欄となっています。他の引当金戻入があれば記入します。
(37)計 : (34)+(35)+(36)です。
次に「繰入額等」とされ、
(38)専従者給与 : 青色専従者(当ブログ0234→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20130119)の給与額。
(39)貸倒引当金 : 貸倒引当金繰入なので費用計上、減算となります。
(40)、(41) : 空欄となっています。他の引当金繰入があれば記入します。
(42)計 : (38)+(39)+(40)+(41)です。
(43)青色申告特別控除前の所得金額で、(33)+(37)−(42)です。
(44)青色申告特別控除額で、控除額は65万円です。
(45)所得金額 : (43)の金額から65万円を引いた金額です。
以上が、所得税の青色申告決算書による「損益計算書」の概要で、実際の申告で提出する用紙を参考にしています。尚、売上金額と仕入金額、従業員の給与、青色専従者の給与については、青色申告決算書の2ページに記入欄が別枠としてあり、売上と仕入は月毎に記入、従業員と専従者は氏名別に記入、計算が必要です。
次回は「貸借対照表」です。
上記の青色申告決算書における損益計算書は税務署から公表されている「平成23年分 青色申告決算書(一般用)の書き方」を参考にしています。
そのPDFは → http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/tebiki2011/pdf/33.pdf
※平成25年分、青色申告決算所の手引き→http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/tebiki2013/pdf/36.pdf
※平成24年分、青色申告決算書(一般用)の書き方→http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/tebiki2012/pdf/33.pdf
※平成24年分、青色申告決算書(農業用)の書き方→http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/tebiki2012/pdf/34.pdf
※国税庁、平成24年分、青色申告決算の手引き→http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/tebiki2012/pdf/36.pdf
★当ブログ0231免責事項をお読み下さい。→ http://d.hatena.ne.jp/sotton/20130102