0237 所得税45 事業所得15 貸借対照表

いわゆる決算書とは「貸借対照表」と「損益計算書」との2つの計算書類のことです。
損益計算書は、1年間の「稼ぎ」を計算した結果で、貸借対照表は決算日における事業の財務状態を表します。

また、損益計算書の最終利益(前回の所得税青色申告損益計算書では43の青色申告特別控除前の所得金額にあたります)は、貸借対照表の純資産の部で加算され、資本の増加を意味します。

現在の企業会計は様々な事象を出きるだけ正確に記録することを要求されるため、多くの会計規則や規定が存在し、規模が大きくなるほど帳簿記録は複雑です。しかし、誤解を恐れず、極めて単純な表現をすれば、入ったお金を何に使ったのか?その記録なのです。

貸借対照表は左右に分かれて、向かって左側が借方、「資産の部」で右側は貸方「負債の部」と「純資産の部」で構成され、「資産の部」=「負債の部」+「純資産の部(資本)」で、左右の金額が一致します。

右側の負債と純資産(資本)はお金の入口で、どこからいくら入ったのか。例えば、代表的な負債でいえば、銀行から融資を受けた借入金で、資本では自分自身で出資した自己資金などがあります。

仮に、全ての負債と資本の資金を、何も使わずに預金口座に入れたなら、預金は「資産」なので「資産=負債+資本」となり、貸借対照表の左右、借方貸方の金額は一致したままです。この預金のお金を引き出して、事業に必要な様々な物を買っても、お金が「モノ」に換わっただけで資産の金額は変わりません。なので左右も同じく変わりません。変わるのは資産の科目が変わるだけです。これが貸借対照表の基になる考え方です。

次に、預金から引出したお金は、実際には様々なもの使われます。仕入や運送代、電気代に水道代、賃貸料に保険代・・・・。これらの殆どは「モノ」として残らず、消耗、消費されます。しかし、事業は営利目的なので必ず、消費、消耗の対価として「売上」という、外部からの入金があります。つまり、費用を犠牲にして利益を取るのです。「売上−費用=利益」。これが損益計算書の基です。そして、この方程式は「売上=費用+利益」、「費用=売上−利益」と形が変化しても意味は同じです。右側の資産が「売上−費用」、左側の負債、資本が「利益」で左右は一致するのです。

しかし、会計取引の全てがこのように単純な記録のみで構成されれば理解し易いのですが、残念ながらそうではありません。資産では未だ現金化されていない債権や、継続的に収益を生み出すような営業権、負債では前受金や未払金のような、未だ役務の提供が終わっていない債務、あるいは引当金減価償却といった見積額や評価額。これらは必ずしも外部からの資金流入、流出があるわけではない計上で、貨幣価値に換算できる資産や負債は全て「貸借対照表」の中に組入れて表現できるような会計制度になっています。この部分が財務情報としての精度を高める一方、簡単な理解を妨げる要素でもあります。
 
企業会計貸借対照表を見てゆくと、向かって左側の資産から右側の負債、純資産は次のような科目で構成されています。

<資産の部>
流動資産
現金預金、受取手形売掛金、売買目的有価証券、商品、製品、半製品・仕掛品、貯蔵品、前渡金、前払費用、短期貸付金、未収利息、貸倒引当金など。
−固定資産−
有形固定資産 : 建物・建築物、機械・装置、車輌運搬具、工具器具備品、土地、建設仮勘定など。
無形固定資産 : 営業権、特許権、商標権、意匠権、借地権、鉱業権、漁業権、ソフトウェアなど。
投資等の資産 : 投資有価証券、投資不動産、出資金、長期貸付金、長期前払費用など。
−繰延資産−
株式交付費、社債発行費、創立費、開業費、開発費など。

<負債の部>
−流動負債−
支払手形、買掛金、短期借入金、未払金、未払費用、前受金、預り金、賞与引当金など。
固定負債
社債、長期借入金、退職給与引当金など。

<純資産の部>
資本金、資本剰余金、利益剰余金、評価・換算差額など。

上記は企業会計といっても上場企業の貸借対照表を参考にしています。ですので、所得税の事業所得等で作成する貸借対照表には「純資産の部」はありません。株主資本は存在しましません。従って純資産に該当する部分は、事業主が自ら事業に持出した資金となります。

また、企業会計(法人)で損益計算書の「当期純利益」の金額は貸借対照表の純資産に組入されますが、所得税での貸借対照表では損益計算書における「青色申告特別控除前の所得金額」が該当する科目となります。
上記の科目の並びは「流動性配列法」と呼ばれる形式で、現金化し易い順に上から並びます。通常、殆どの企業の財務諸表は、この流動性配列法で記載されています。

流動と固定の区分けは、決算日の翌日から1年以内に決済するものを流動(短期)として、それ以外は固定(長期)扱いになります。このことを「ワン・イヤー・ルール(1年基準)」と言います。この1年基準とは別に、企業が経済活動を行う上で、製造、仕入れ、販売、などを通じて投下した資金を回収する一連の流れを営業循環として、その通常の営業循環の範囲を流動とする基準のことを「正常営業循環基準」と言います。
例えば、売掛金や買掛金であれば、通常の営業循環過程にある収益や支払になるので、正常営業循環基準によって流動性の判定となります。

また、固定資産や固定負債であっても、建物の売却や借入金の返済到来日がある年度、つまり現金化される年では「流動」として扱われます。

ちなみに、上記のように資産、負債、純資産(資本)と上から順に並ぶ貸借対照表を「報告様式」と言い、向かって左側に資産、右側に負債、純資産とするものを「勘定様式」と言います。

所得税青色申告による貸借対照表は次回になります。

国税庁ホームページ「青色申告者のための貸借対照表作成の手引き」→http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/tebiki2010/pdf/42.pdf
平成24年分、青色申告決算書(一般用)の書き方→http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/tebiki2012/pdf/33.pdf
平成24年分、青色申告決算書(農業用)の書き方→http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/tebiki2012/pdf/34.pdf
国税庁平成24年分、青色申告決算の手引き→http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/tebiki2012/pdf/36.pdf

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