0245 所得税52 事業所得22 青色申告の減価償却費

青色申告決算書の3ページでは減価償却費の記入、計算が必要です。この項は「平成23年青色申告決算書(一般用)の書き方」を参考に説明します。→http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/tebiki2011/pdf/33.pdf

上記のPDF青色申告決算書を基にして、この減価償却費の計算について見てみましょう。
※尚、既に「平成24年分の青色申告決算書の書き方」が発信されていますが、平成23年分と比較し、追加された部分を次回に解説します。→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20130301

1段目には「木造建物店舗分」、2段目には「シャッター」、4段目は「陳列棚」、5段目「レジスター」、この4つをサンプルとして減価償却費の計算を検証してゆきます。
便宜上、木造建物店舗分=「木造」、シャッター=「シヤ」、陳列棚=「陳列」、レジスター=「レジ」に略します。
縦軸には減価償却資産、横軸には計算で順番にみてゆきます。

(イ)の欄・・・取得価額
取得価額をそのまま記入します。下部にある( )内は償却保証額で、平成19年4月1日以後に取得した減価償却資産で、償却方法が「定率法」であった場合に記入します。その計算方法は、取得価額に保証率を乗じて算出します。

4つの中で平成19年4月以後取得、計算方法が定率法なのは「レジ」が該当します。
「レジ」の取得価格は390,000円で耐用年数は5年なので「減価償却資産の償却率表」による保証率は「0.06249」。390,000×0.06249=24,371.1 小数点以下切上げかどうかは確認していませんが、記入例は「24,372」となっています。

この保証率は平成19年の税制改正で、減価償却資産の計算方法が改正され、最終的な残高が1円まで償却できるようになり、計算上で償却額が償却保証額に満たなくなった年以後は毎年、同額が償却されます。
国税庁、定額法と定率法による減価償却http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/2106.htm

(ロ)の欄・・・償却の基礎となる金額
計算方法が定額法の場合、平成19年3月31日までに購入した減価償却資産は、取得価額ではなく、「0.9」を乗じた値になります。従って「シヤ」はそのまま取得価額ですが、「木造」は6,000,000×0.9=5,400,000円となります。

定率法では、償却した残額に償却率を乗じて算出します。基礎になる金額は、つまり償却率をかける金額のことですから、「陳列」の計算は、
平成18年・・・240,000×0.25×0.5=30,000(0.25は償却率で0.5は半年であるため)。240,000−30,000=210,000、この残額21万円が次年度の「基礎になる金額」にあたります。
平成19年・・・210,000×0.25=52,500・・・・210,000−52,500=157,500
平成20年・・・157,500×0.25=39,375・・・・157,500−39,375=118,125
平成21年・・・118,125×0.25=29,532・・・・118,125−29,532=88,593
平成22年・・・88,593×0.25=22,149・・・・・88,593−22,149=66,444
従って平成23年の「償却の基礎になる金額」は66,444で合致します。※小数点以下は切上げで算出しています。

(ハ)の欄・・・償却率または改定償却率
耐用年数に応じた償却率を記入します。「減価償却資産の償却率表」に従った条件そのままで、「陳列」は旧定率法、「レジ」は定率法が該当します。
改定償却率を適用する場合は、平成19年4月1日以後に取得した減価償却資産で、定率法によって償却し、調整前償却額が(イ)の欄に記入した償却保証額を下回ったときに適用することになります。
★このあたりの説明は当ブログ0247未償却残高で→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20130305

(ニ)の欄・・・本年度の償却期間
通常は12ヶ月分の12、つまり通年ですが、新しく減価償却資産を取得した場合、対象になる年度の何月に取得したのか、1年分の数ヶ月として割合で算出します。

(ホ)の欄・・・本年分の普通償却費=(ロ)×(ハ)×(ニ)

(へ)の欄・・・割増(特別)償却費
租税特別措置法における特別措置として、幾つかの割増償却があります。例えば「特定再開発等の割増償却」「サービス付き高齢者向け賃貸住宅の割増償却」などですが、条件や償却方法については規定があり、詳しくは専門の税理士、または税務署等にお問わせ下さい。

(ト)の欄・・・本年分の償却費合計=(ホ)+(ヘ)

(チ)の欄・・・事業専用割合
これは個人事業等で自宅兼店舗や、自宅の一部を事務所として使用した場合の、事業として使用する割合を示したものです。当ブログ0233→
http://d.hatena.ne.jp/sotton/20130117

(リ)の欄・・・本年分の必要経費算入額=(ト)×(チ)

(ヌ)の欄・・・未償却残高

参考にした4つのサンプルの未償却残高を計算してゆきましょう。

「木造」は、償却方法が定額法なので、1年の償却額は(ホ)の欄の金額「248,400円」です。取得が平成18年7月で、決算日は平成23年12月31日を想定していますので、5年と半年、6,000,000−248,400×5.5=4,633,800円。
「シヤ」は、600,000−9,200=590,800円で、そのままです。
「陳列」は、償却方法が定率法なので、上記(ロ)の欄を参考に66,444円で、償却率が0.25なので、66,444−66,444×0.25=49,833円。
「レジ」も計算はそのままです。

さて、減価償却費の計算(リ)の欄「本年分の必要経費算入額」は、決算書1ページにある「損益計算書」の18欄「減価償却費」に記入する金額となります。
また、決算書3ページにある「貸借対照表」では、資産の部「建物」の金額は、減価償却費の欄「木造建物店舗分」と「シャッター」の未償却残高を合計した金額です。ライトバンの未償却残高は「車輌運搬具」。「陳列棚」「レジスター」「一括償却資産」の3つ未償却残高合計額が「工具・器具・備品」の欄に記入になります。
減価償却費の「アーケード負担金」は事業の直接的な資産ではないので、繰延資産として処理されているようです。

★当ブログ0236損益計算書http://d.hatena.ne.jp/sotton/20130123
★当ブログ0237貸借対照表http://d.hatena.ne.jp/sotton/20130129
★当ブログ0238青色申告貸借対照表http://d.hatena.ne.jp/sotton/20130201
国税庁平成24年分、青色申告決算書の手引き→http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/tebiki2012/pdf/36.pdf
減価償却費の計算の仕方(彦根市総務部)→http://www.city.hikone.shiga.jp/somubu/zeimu/pdf/keisantebiki3.pdf
国税庁、確定申告作成コーナー→http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/kakutei.htm 

★当ブログ0231免責事項をお読み下さい。→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20130102

外資系の流儀 (新潮新書)

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上記の書籍のガイドは→http://sotton.hatenablog.com/entry/2013/06/14/230742