0238 所得税46 事業所得16 青色申告の貸借対照表

貸借対照表は決算日における財務状態を表すものです。

12月31日の決算日で区切ると、その時点で残った運転資金や商品、代金回収をしていない債権や未払いの債務、事業を継続して行うための土地や建物、設備や権利などが資産として計上されます。

前回で企業会計による貸借対照表とはどういうものなのかを簡単に説明しました。今回は所得税で必要な場合の貸借対照表なので、考え方は何も変わりませんが、純資産にあたる資本部分の扱いがなく、資本に該当するものは、事業主が自分の事業に投資した自己資金で、科目では「事業主借」と「元入金」が該当します。

前回のおさらいになりますが、この自己資金や金融機関からの借入金が、事業に投資する資金の全て、貸借対照表では向かって右側(貸方)にあたります。投入された資金の多くは仕入れや製造等の販売商品のために使用され、販売に付随する費用や人件費を含め、大半は消費されます。その結果として利益を生み出し、これが損益計算書にあたる会計なのです。

この時に決算日で区切ると、販売に至らなかった商品が在庫として残り、棚卸資産として計上され、事業の回転資金として金庫や口座に留保されているお金、また、商品を販売しているが、代金の回収が未収の債権、これらが流動資産として計上されます。収益を上げるための直接的な資金投下と言えます。

これとは別に、間接的に貢献する資産、例えば、土地や建物、設備などは事業を継続して活動するためには欠かせない財産と言えます。営業権や商標権なども同じ役割を果たします。このような性質の資産は固定資産として計上します。

しかし、建物や設備というのは、目に見えないですが、劣化や消耗が時間と共に進んでゆきます。この劣化、消耗をの1年分を会計ルールに従って費用計上することを減価償却と言います。

また、開業費用や開発費は、その費用額が短期(1年以内)で確定されても、その費用の性質としては、長期的(1年以上)に効果が考えられるものなので、その費用を数年間に渡り分散して計上します。この費用性資産を繰延資産と呼びます。

それから引当金のように、予め費用が発生する可能性の高い性質の科目については、合理的に算出した見積額を算入します。引当金には科目によって資産に属するものと負債に属するもの両方あります。

上記のことを考えながら、青色申告貸借対照表の構成を見てゆきましょう。
青色申告貸借対照表には1月1日の期首金額と12月31日の期末金額が並列して記入するようになっています。期首とは、つまり前期の期末分のことです。尚、損益計算書には欄ごとに番号がありましたが、貸借対照表には欄の番号はありません。ここでは便宜上、番号を振って案内します。

<資産の部>
(1)預金       : 運転資金、余剰金などの口座。
(2)当座預金     : 運転資金、小切手や手形などの決済。
(3)定期預金     : 一定期間解約できない金融商品
(4)その他の預金   : 上記以外の預金。
(5)受取手形     : 期日が到来すれば現金化できる債権。場合によれば不渡りの可能性も。
(6)売掛金      : 継続した取引で役務の提供、商品の引渡しが完了しているが、代金の回収は未だの債権。
(7)有価証券     : 謎?の科目です。
(8)棚卸資産     : 損益計算書の欄(2)と(5)です(当ブログ0236→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20130123)。
※未使用の消耗品があれば、棚卸資産として計算します。    
(9)前払金      : 支払済で、役務の提供が未だである債権。
(10)貸付金      : 法人、個人に対する金銭消費貸借契約。
(11)建物       : 所得価格。自宅兼用では事業使用割合で算出。
(12)建物附属設備   : 取得価格で処理方法が異なります。
(13)機械装置     : 取得価格で処理方法が異なります。
(14)車輌運搬具    : 所有している物で、減価償却で計算。自家用と兼用の場合は事業使用割合で算出。
(15)工具・器具・備品 : 取得価格で処理方法が異なります、減価償却で計算。
(16)土地       : 購入価額、簿価の金額です。
(17)繰延資産     : 開業費などが該当します。
(18)(19)(20)(21)(22)(23)は空欄で必要な科目を記入できるようになっています。
(24)事業主貸     : 事業主が事業上の資金を借りた場合。
(25)合計       : (1)〜(24)までの合計額

<負債・資本の部>
(26)支払手形     : 手形上の債務。
(27)買掛金      : 継続した取引で、役務の提供は受けているが、未だ支払が完了していないもの。
(28)借入金      : 金融機関などから借りた資金。
(29)未払金      : 主な営業取引以外で、支払が済んでいない債務。
(30)前受金      : お客様などから先に代金を受取り、役務の提供が終わっていないもの。
(31)預り金      : 従業員などの給料から一時的に預かる税金など。
(32)〜(38)     : 空欄で必要な科目を記入できるようになっています。
(39)貸倒引当金    : 販売をしていても、代金の回収が見込めないものについての処理。
(40)〜(46)     : 空欄。
(47)事業主借     : 事業本体が事業主から借りた金額。
(48)元入金      : 資本金にあたり、事業主が事業本体に出資した金額になります。期首と期末は同じ金額を記入します。
(49)青色申告特別控除前の所得金額で、損益計算書から転記します。企業会計では当期純利益にあたります。
(50)合計       : (26)〜(49)の合計で、左側の資産の合計金額と一致します。

上記が青色申告貸借対照表です。インターネット上からダウンロードできる「平成23年分、青色申告決算書(一般用)の書き方」を参考にしています。
http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/tebiki2011/pdf/33.pdf
平成24年分、青色申告決算書(一般用)の書き方→http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/tebiki2012/pdf/33.pdf
平成24年分、青色申告決算書(農業用)の書き方→http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/tebiki2012/pdf/34.pdf
※平成25年分、青色申告決算書(一般用)の書き方→
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/tebiki2013/pdf/33.pdf

この決算書は4枚で構成されていて、次のようになっています。
決算書1ページ : 氏名や住所等の記入と「損益計算書
決算書2ページ : 「月別の売上と仕入金額」「給料賃金の内訳」「専従者給与の内訳」「貸倒引当金繰入額の計算」「青色申告特別控除額の計算」、5箇所の記入があります。
決算書3ページ : 「減価償却費の計算」「利子割引料の内訳(金融機関を除く)」「税理士・弁護士等の報酬・料金の内訳」「地代家賃の内訳」
決算書4ページ : 「貸借対照表」「製造原価の計算」


国税庁、平成25年分、青色申告決算の手引き→http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/tebiki2013/pdf/36.pdf
国税庁青色申告者のための貸借対照表作成の手引き→http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/tebiki2010/pdf/42.pdf

原価計算については、次回に少々!

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