0247 所得税54 事業所得24 未償却残高

さて、減価償却資産の償却が毎年進むにつれて、未償却残高は減少し、ある年度になると計算上、償却額が償却保証額を下回る年が出てきます。その年以後の償却費の計算は、事実上、均等償却に変更します。このあたりの計算を規定にそって検証してみましょう。

製紙業を営む事業者が加工製造の設備を140万円で取得し、耐用年数が12年であった場合を例として計算してゆきます。尚、取得年月は平成20年7月とします。

<定額法>の場合。
取得価額がそのまま「償却の基礎になる金額」となります。
平成19年4月1日以後の取得、耐用年数12年の定額法による償却率は0.084となています。未償却残高が1円になるまで償却します。

1,400,000×0.084=117,600となり、毎年同額の117,000円が償却費として費用計上されます。11年目には117,600×11=1,293,600円の減価償却累計額となり未償却残高は、1,400,000−1,293,600=106,400円になります。従って12年目の償却費の計算は、106,400−1=106,399円を費用計上して、それ以降の未償却残高は1円となり、残存価額1円に達し、計算上の減価は終了します。

<定率法>の場合
「償却の基礎となる金額」は毎期の未償却残高になります。
平成19年4月1日以後の取得、耐用年数12年の定率法による償却率は0.208となっています。未償却残高が1円になるまで償却します。
「保証率」は0.03870となっていますので「償却保証額」は1,400,000×0.0387=54,180円になります。償却額(未償却残高×償却率)が償却保証額の54,180円を下回る年度がくると、その前年度の未償却残高が「改定取得価額」とされ、その年以降は均等償却に変更します。均等償却とは定額法のことです。この計算は

「改定償却率」を乗じて算出した金額になります。内容を整理すると、
(1) 調整前償却額=償却額(未償却残高×償却率)<償却保証額(取得価額×保証率)
(2) (1)になる前年の未償却残高=改定取得価額=償却の基礎となる金額
(3) 改定取得価額×改訂償却率
(4) (3)を1円に達する年まで毎年均等償却、定額法と同様の計算で償却します。

上記のことを踏まえて計算をすると以下のようになります。
1年目:1,400,000×0.208=291,200       未償却残高:1,108,800
2年目:1,108,800×0.208=230,630       未償却残高: 878,170
3年目: 878,170×0.208=182,659       未償却残高: 695,511
4年目: 695,511×0.208=144,666       未償却残高: 550,845
5年目: 550,845×0.208=114,576       未償却残高: 436,269
6年目: 436,269×0.208=907,44        未償却残高: 345,525
7年目: 345,525×0.208=71,869        未償却残高: 273,656
8年目: 273,656×0.208=56,920        未償却残高: 216,736
( 9年目: 216,736×0.208=45,081      未償却残高: 171,655 )
ここで、償却額:45,081 < 償却保証額:54,180 になります。この償却保証額を下回る償却額45,081のことを「調整前償却額」と呼びます。
調整前償却額になる年度の前年の未償却残高:216,736円が「改定取得価額」と呼ばれるものです。改定取得価額は、つまり「償却の基礎となる金額」と同じ意味になります。
以後の償却計算は「改定取得価額×改定償却率」になりますから、改定償却率0.250を乗じて均等償却にします。
9年目: 216,736×0.250=54,184        未償却残高: 162,552
10年目:216,736×0.250=54,184        未償却残高: 108,368
11年目:216,736×0,250=54,184       未償却残高: 54,184
12年目: 54,184− 1  =54,183        未償却残高:  1
と、なります。尚、上記の計算は税務署の下、確認済みです。

上記の計算で問題となった箇所が「調整前償却額」のことで、資料のみを読んで計算すると「償却保証額下回る金額になったとき」とは、未償却残高<償却保証額と読み違えて計算していました。そうすると償却に18年かかるので耐用年数を大幅に超えます。
これらのことを税務署で確認すると、未償却残高ではなく、単なる「償却額」が償却保証額を下回る年から改定償却を行う、そう指摘されましたので、くれぐれもご注意を!
税務署によると、実際に減価償却費を会計処理する場合に、減価償却年数が耐用年数を超えることがあれば計算を疑った方が良い、と言われました。誤差が出ても耐用年数から1年だそうです。


国税庁、償却限度の計算方法→http://www.nta.go.jp/taxanswer/hojin/5410.htm
国税庁、小額の減価償却資産及び一括償却資産→http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/shotoku/08/12.htm

★当ブログ0231免責事項をお読み下さい。→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20130102

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