0254 所得税60 事業所得30 返品調整引当金

返品調整引当金は少し特殊なケースとなります。この引当金青色申告の特典として利用できます。

まず事業としての範囲が限定されていて、出版業、出版に係る取次、医薬品、農薬、化粧品、既製服、レコード及びCD等の製造業となっており、特約に基づく取引形態とされています。

この特約による取引とは「棚卸資産を当初の販売価格のまま無条件で買い戻す」とされています。つまり、商慣習により日常的に返品が可能である商品の取引となります。

ここで混同してはいけないのが、この特約による返品可能取引と「委託販売」による販売形態です。
委託販売の場合ではメーカーから小売店に送品した時点では、メーカー側の売上に収益は確定せず、所有権の移転もありません。後に売れた分を精算して売上を確定し計上することになります。小売店からすると商品をメーカー側から借りた状態、メーカー側からすると販売スペースやサービスを小売店から借りた状態にあります。

これに対して、特約による返品可能取引では、所有権がいったん小売店に移るため、メーカー側は小売店に商品を納品すると売上が建つ会計になります。これによってメーカー側の売上は、現実的な利益といえない部分の返品分を見積もって引当金とし、控除する形をとっています。

貸倒引当金と退職給付引当金は、最終的に金銭的な費用が事業体の外部に流出するのに対して、返品調整引当金は売上から返品分を除去して正確な利益を確定することなので、外部への資金流出とは言えない特殊な引当金といえます。
引当金繰入の限度額の算出は以下のようになります。

返品率    : 「買戻しの合計額」÷「総売上」
ただし上記の式の範囲は、当期とその前年に納品して返品になった分も入り、その返品に対する売上の計算し、適正に返品率を算出しています。

売買利益率  : 「純売上−(売上原価+販売手数料)」÷「純売上」
この場合の純売上とは、当期の販売総額から当期の買戻しの総額を差し引いた額になります。

繰入限度額  ; 期末売掛金×返品率×売買利益率、もしくは、
         期末から2ヶ月間の売上高×返品率×売買利益率

引当金には評価性引当金と負債性引当金の2種類があります。

評価性引当金の場合は資産計上とされ、対象になる勘定科目から控除する形式で記載されます。受取手形であれば、その下に貸倒引当金の勘定科目があって、受取手形から引当金を差引く形で表記されます。このように対象となる資産勘定から控除できない引当金は負債性引当金とされ退職給与引当金等が該当します。
返品調整引当金の場合は資産計上である「売掛金」から控除される形となりますので、評価性引当金となります。

国税庁、返品調整引当金http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/hojin/11/11_03.htm
同志社大学商学部、返品調整引当金http://doors.doshisha.ac.jp/webopac/bdyview.do?bodyid=TB00008024&elmid=Body&lfname=017058060014.pdf

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