0268 所得税73 譲渡所得3 贈与にあたる場合2

前回のブログの続きで、以下は、前回と同じ例を参考にみてゆきます。

(A)息子の誕生日に3万円相当の自転車を買ってあげた。
(B)妻の誕生日に50万円相当の金のネックレスをプレゼントした。
(C)結婚の約束をした相手に給料の3ヶ月分にあたる80万円の婚約指輪をプレゼントした。
(D)金持ちおじさんが愛人に3,000万円相当の新築マンションを買ってあげた。
(E)金持ちおじさんが亡くなり、死亡保険金を愛人が受取った。

上記は、譲渡ではあるが「無償譲渡」にあたるので譲渡所得として課税されるわけではなく、「贈与税」として課税されます。

イ): 例えば(1)は、父から息子に自転車をプレゼントしてときは無償譲渡で贈与にあたりますが、自転車屋さんから自転車を購入したときは有償の譲渡であると言えます。

ロ): 息子にあげた自転車の贈与と、愛人に買ったマンションの贈与を同じ贈与として扱うのは適当かどうか。

ハ): 資産をあげた者、資産を受取った者、課税される場合はどちらに課税され、納税が生じるのか?
この(イ)(ロ)(ハ)についての続きで、(イ)については前回ブログ0267でお願いします。→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20130419


(ロ)について
前回に贈与税の性質や範囲について簡単に触れました。
息子の誕生日に与えた3万円の自転車は、贈与税では金額においても、また贈り物としても課税対象にならない可能性が高いものでした。しかし、課税においては自転車のプレゼントと愛人に買ってあげるマンションを同質に扱うことはできません。

愛人に買ってあげたマンションでは、その贈与にあたる金額も高額なので課税は免れませんし、贈与者と受贈者との関係をみても、贈与税がいう社会通念上は「他人」とみなされます。

仮に、この3,000万円のマンションを自転車のように息子に買ってあげたなら、一定金額の非課税(特別措置)、もしくは相続時精算課税を利用できます。
通常、贈与税の課税方式は暦年課税とよばれる1月1日〜12月31日までの贈与額の合計を課税します。110万円以下であれば基礎控除されて事実上の免税となり、110万円を超えると課税され申告をする必要があります。これに対して「相続時精算課税」では、相続が発生した時に、過去の累計贈与額を清算して課税するもので、住宅資金であれば最大2,500万円の控除適用があります。

さて、問題は愛人に買ったマンションですが、この「買った」という意味がどのようなもかで変わってきます。
マンションをそのまま本当に買ってあげたのであれば、不動産であるマンション所有名義は愛人となります。おじさんはその購入資金を無償提供したので、紛れもなく贈与税が発生します。

おじさんはこの新築マンション購入にあたる全ての付帯費用も面倒を見たのであれば、事務手数料や登記費用ほか、おじさんの課税関係はマンションの建物にかかる消費税、不動産取得税、登録免許税、契約書等に必要な印紙税が支払う税金になります。

新築マンションの購入では、マンションを販売する会社から買ったので、マンションは販売会社の棚卸資産にあたるので、譲渡所得の譲渡には該当しません。

一方、愛人はそれら贈与を受けた受贈者になります。日本の贈与税の納付者はこの「受贈者」、つまりこの場合マンションをもらった愛人が贈与税を支払わなくてはなりません。3,000万円以上の贈与であれば基礎控除が110万円と贈与額による控除が225万円で税率は50%に及ぶため、単純計算でも1,220万円の贈与税が掛ります。
金持ちおじさんなので、愛人が支払う贈与税も「ワシが払う」と言ったところで、その分も贈与となり、課税計算は1年で区切られるので、結果的には愛人が支払う贈与税額は増加します。仮に金持ちおじさんが愛人の贈与税も全額支払うのであれば、約5,600万円の贈与でマンションが3,000万円、贈与税が2,520万円で、残りの80万円がマンション購入の付帯費用として消え、めでたく成立します。

だったら贈与税基礎控除額以下、つまり110万円を毎年12年間に渡り愛人に贈与すればOKだな。しかし、毎年110万円を12年間贈与する約束を交わした場合、合計1,320万円を12年間に分割して受取る権利を贈与したこととみなされ、結局は課税されます。

どうしても贈与税として課税されるのなら仕方がない、既に愛人所有であるマンションをおじさんが借りたことにして、家賃として毎月一定額を愛人に払おう、お小遣い程度にはなるだろう。金持ちおじさんはそう考えました。こうなると何が目的か問われそうですが、しかし愛人が支払う贈与税はそのまま、お小遣い程度の家賃収入には不動産所得もしくは雑所得として課税される可能性が出てきます。

いや、マンションは愛人に買ってあげたのではなく「寄附」です。と言っても、税制上で寄附と認められるのは公益性の高い団体への譲渡で、私的で他人への高額な譲渡が「寄附」として認められることは通常ありません。

仕方がないので金持ちおじさんは、愛人にマンションを買うことをあきらめ、マンションを自分名義で所有し、無料で愛人に住んでもらうことにしました。しかし、この方法も実質的な家賃の金額分が贈与にあたり、課税される可能性が高いと言えます。

民法上で取引や契約は「私的自治」にあたるので、その取引内容や金額は当事者同士で原則、自由に設定できます(ただし、様々な取引がありますので、別の法規定で制限されている場合は、その規定内に限ります)。けれども税法上の課税に関しては、この民法における私的自治を優先しません。

譲渡における金額を取引する当事者で自由に決定し、その譲渡金額のまま課税を行うと、課税の公平性を欠き、なにより取れる税金も取れません。なので、税法上の取引価額、譲渡や贈与、相続や自家消費等の金額は、実際の取引額が低額であった場合、その資産の時価や実勢価格から低額で譲渡した金額を差引いた金額「時価−低額譲渡金額」に課税されます。その上で政策的な特例措置等を設け、ケースによっては減税できる、そのような制度設計になっています。

最後の手段として、金持ちおじさんは経営者なので自分の会社(法人)でマンションを購入し、その後で愛人に贈与か無料で部屋を貸せばよいのだ。そうすれば贈与税は掛からないではないか。法人から個人の贈与は非課税なのだから。
しかし、この場合もマンションを受取った、もしくは無料で借りた愛人には贈与税として非課税であっても、所得税の一時所得として課税されます。金持ちおじさんは会社の資金を愛人につぎ込んだというリスク、税務調査や噂で信用を失くしたり、場合によれば横領や背任の罪に問われます。
国税庁贈与税がかかる場合→http://www.nta.go.jp/taxanswer/zoyo/4402.htm
国税庁贈与税がかからない場合→http://www.nta.go.jp/taxanswer/zoyo/4405.htm
国税庁贈与税の計算と税率(暦年課税)→http://www.nta.go.jp/taxanswer/zoyo/4408.htm
国税庁贈与税の計算(相続時精算課税)→http://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4409.htm
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