0269 所得税74 譲渡所得4 譲渡所得の意味

さて、話は前回に引続いていますが、今回は贈与ではなく譲渡に進んでゆきます。
(D)金持ちおじさんが愛人に3,000万円相当の新築マンションを買ってあげた。
(E)金持ちおじさんが亡くなり、死亡保険金を愛人が受取った。

そして、(ハ)の「資産をあげた者、資産を受取った者、課税される場合はどちらに課税され、納税が生じるのか?」を考えてゆきます。

金持ちおじさんは新築マンションの購入をあきらめ、既に持っているマンションを愛人にあげることにしました。
愛人に新築マンションを買ってあげるってことはマンションを贈与するのではなく、実際には3,000万円で買った「お金を贈与」したことになります。しかし、今度は金持ちおじさんが既に所有しているマンションを愛人に譲るので、課税関係が変わってきます。

金持ちおじさんが譲渡をするマンションは4年前に購入し、ほとんどそこに住んだことはなく、言わば投資目的のマンションです。当時3,000万円で購入したマンションは現在の市場価格では4,000万円相当に上昇しています。

前回の話の中で、金持ちおじさんは愛人に新築マンションを買ってあげることを諦らめました。今度は自己所有のマンションを愛人名義にすることで、おじさんは名義変更だけなら高額な贈与税が掛からないのではないか?そう考えたのです。

考えたといっても人から「譲渡所得の課税は譲渡した側が税金を納める」と聞き、それでは既に持っているマンションを愛人に譲渡すれば、税金はおじさんが譲渡所得で課税されるため、愛人には課税なくマンションを渡すことができる、金持ちおじさんはそう思ったのです。

しかし、残念ながらそうではありません。それどころか、おじさんと愛人と両者に課税され、しかも新築マンションの贈与より高額な税金が課せられます。
(この場合、金持ちおじさんは現実には利益を得ていなので課税の繰延となります→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20130511

さて、このブログ0191「所得税1」では、税法上の所得の意味について伝えています→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20120903

国税である「所得税」「法人税」「相続税」「贈与税」の課税事由は「儲け」でした。何かで儲ければ課税するのです。もう少し会計学的に言えば「資産の増加」、いや、借入金で資産が増えても課税されないので、正確に言うなら「純資産の増加」でした。
これに基づくと、愛人が金持ちおじさんから時価4,000万円のマンションを受取ると、紛れもなく4,000万円相当の資産が増加し、課税が生じて当然と言えます。

一方、所有していたマンションを愛人に譲渡した金持ちおじさんには「譲渡所得」として課税されます。この譲渡所得の考え方は「資産の保有期間における値上り益の清算」にあります。このおじさんの場合ではマンションを買った時は3,000万円で、売却価額の時価は4,000万円となり、差額の1,000万円相当が保有していた資産の値上り益(儲け)で、それに対して課税されるわけです。値上り益がない場合には課税されません。値下がりや損失が大きい場合には、条件にもよりますが計算規定により「損益通算」で他の所得と相殺できます。それでも損失が残るような場合には、一定の要件を満たす上で損失処理を「繰越控除」として、次年度以降にも控除が可能です。

このように、マンションを譲渡した側の金持ちおじさんには譲渡益(売値−買値)が資産の増加にあたり、譲渡所得として課税され、無償譲渡(贈与)を受けた愛人には時価4,000万円という資産の増加が贈与税として課税される仕組みです。


さて、上記(E)の金持ちおじさんが亡くなり、その保険金を受取った愛人にはどのうな課税になるのか?
保険金の受取に関する課税は、その保険の種類と契約者、被保険者、受取人の関係によって相続税贈与税所得税のいずれかに該当します。

(E)の場合では、金持ちおじさん自信が契約者(保険料支払い者)で、自分自身に保険をかけています(被保険者=この人が亡くなれば保険金が出ます)。そして、その保険金を受取る人はおじさんの愛人で「相続人以外の者」にあたります。

死亡保険金では「契約者=受取人」であれば所得税となり、「契約者|被保険者|受取人」の3者が異なる場合は贈与税で、それ以外は相続税に該当します。

従って(E)の場合は相続税として課税されますが、愛人は法定相続人ではないため「遺贈」という形式の相続にあたり、通常の相続税にある非課税の適用がありません。
国税庁、死亡保険金を受取ったとき→http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1750.htm
国税庁相続税の対象になる死亡保険金→http://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4114.htm

すみません!ゴールデンウィークのため次回は5月11日からの再開を予定しています!勝ってしてごめんなさい!

★当ブログ0231免責事項をお読み下さい。→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20130102

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★上記の本の感想は当ブログ0260で読めます→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20130406