0270 ていレベル読書4 「週刊東洋経済」

丁度、手元にある「東洋経済」は1か月程以前のもので「給料大格差時代」のタイトルです。

昔からの愛読誌ですが、最初に読み始めた頃は経済や財務、経営、社会情勢などチンプンカンプンでしたが、やっと人並み程度に読めるようになってきたかな、と思います。まあ、それでも政治系の記事や用語については、うんざりしてきます。

給料格差が今に始まったことではないのですが、グローバルな競争が拡大し、激しくなることに比例して格差も大きくなるでしょう。そんな記事をあちこちで目にします。

振り返ってみると1989年がグローバル元年ではないでしょうか。もちろんそれ以前にも商社やエネルギー業界、自動社やエレクトロニクス等の大企業は国境を超えて活動をしていました。グローバルな競争を加速させたのは、紛れもなくパソコンや携帯電話の活躍でしょう。そして、これらの電子端末は驚異的な進歩と普及で、今ではタブレットでさえも子どもの玩具と化して驚くばかりです。

1989年、日本では1週間だけ昭和時代で、現在の平成に和暦が変わりました。その約1か月後に手塚治虫先生が亡くなり、今でも私の中では最高の作家です。それから約1か月後にはサッカーの香川真司選手が生まれ、経済界ではリクルート事件があり、松下幸之助が亡くなり、海外ではベルリン・フィルの皇帝カラヤンもこの年に亡くなり、ダライ・ラマ14世ノーベル平和賞を受賞しています。

この年の夏、ハンガリーではヨーロッパ・ピクニック計画が開催され、日本はバブルの絶頂期で、就活の学生は企業へ面接にいくと高級レストランの食事と、交通費の名の「お小遣い」が貰え、内定では海外旅行のオマケが付いてきました。11月には松田優作さんが亡くなり、その僅か3日後には遠く離れたベルリンの壁が崩壊し、師走に入ると作家の開高健が亡くなり、この年の大納会では株価がもう少しで3万9千円という今では信じがたい高値で終わっています。歌番組の「ザ・ベストテン」、伝説のお笑い番組オレたちひょうきん族」もこの年で番組終了しています。

この年、私は20代半ばで、これらの出来事はメディアを通じて現在進行形で時代の大きなうねりを感じていました。今思っても本当に激動で、記憶を呼び起こすと何故か季節はすべて夏で、あれから24年が過ぎたことに一番驚きを感じます。

東西冷戦時代の崩壊は、このベルリンの壁が象徴的ですが、この同時期に日本はバブルで、アナログ管理社会とアナログ資本主義はそれぞれ違った形で崩壊します。どちらも経済的な制御ですが、社会主義管理体制下での経済破綻は「資金の獲得」が痩せ細り、日本のバブル経済の破綻は「獲得した資金」の使い道でした。

1990年に入ると日本の株価は約半値近く下落します。この頃からコンピューターは低価格が進み、中小企業でも投資できる資産の範囲となり、94、95年頃には個人向け(PC)も手の届く範囲となって急拡大してゆき、96年にはインターネットのインフラが一般家庭にも普及してゆき、携帯電話の通信インフラも急発展してゆきます。僅か7,8年でPCと携帯は爆発的な普及を成し、あっという間に殆どの企業の管理はデジタル化され、情報の選択、組立、速さ、平等化、階層化は細かい部分まで制御可能となり、情報が外に漏れないために莫大な費用が必要になる時代となりました。

話がバブルから入ったので長くなりましたが、デジタル情報化時代では時間の短縮がいちばん顕著で、時間が短縮されるとコストも必ず安く済みます。前回の「ていレベル読書」→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20130406で、建築の新しい手法BIMを紹介しましたが、その効果は時短に現れています。

その反面、開発や生産においても効率やスピードが重要となり、企業の新陳代謝は高いレベルで維持しなくてはなりません。そのためには優秀な人材の確保と、的確でミスのない投資が不可欠となり、それを繰り返し達成して高収益が維持できる、非常に舵取りが難しい時代になりました。このことは企業のみならず個人でも同様です。
この東洋経済「給料大格差時代」を見ると、どの企業に就職できるかで一番の格差が生じますが、現在高給であっても将来に渡って維持できるかは誰にも判りません。

同じ業種であっても1位の高給と最下位では約半分の給料になり、それ以上の差のある業種も少なくありません。40歳の推計年収を比較していますが、上位はどの分野においても名だたる企業が多く、これらの有名企業の年収が最下位になることは考え難く、給料の著しい低下の前に合併か倒産になるでしょう。
業種別では、最高額は保険業で、最下位は農林水産業、次いで小売業となっています。小売業はデフレを直接受ける業種ですが、かろうじて業界平均年収が500万円を超えている程度で、私はずっと小売業に従事していますので業界全体の底上げを願っています。

願っても仕方なく、以前にビートたけしが書いた本の帯に「祈るな、戦え!」の宣伝文句がありましたが、正しくその通りです。
労働生産性から考えるサービス業が低賃金なワケ」の見出しが、この号の東洋経済に載っていたので買ったのでした