0281 所得税84 譲渡所得14 借地権

今回は借地権について勉強してみましょう。

借地権に関する法律は旧法である「借地法」、「借家法」と平成4年8月から施行された新法の「借地借家法」があります。しかし、権利関係者の利害問題が社会的な混乱を生じる恐れがあるため、旧法で契約された内容では旧法が適用され、その契約更新や相続等によって引継ぐときには、依然旧法が適用されます。従って、現在の大半は旧法での契約によるもので、新法の借地借家法の適用範囲は平成4年8月以降に、更新ではなく新たに契約された分からとなります。

(1)普通借地契約(旧法)
旧借地法による契約の、借地権存続期間(契約期間)は原則として、その当時者の合意によって契約内容に定めた期間となります。
法定による存続期間では、旧法では「堅固建物(鉄筋等の強度が高い建物)」と「非堅固建物(木造など)」と区別され、堅固建物では30年以上、非堅固建物では20年以上とされています。つまり、当時者合意の契約で、存続期間を100年とすれば100年が存続期間となります。また、法定存続期間を下回る契約では「期間の定めがない」として扱われます。尚、堅固建物、非堅固建物の区別は曖昧ですが、契約時にどちらかを定めることになっています。定めがない場合は非堅固建物とみなされます。
しかし、契約内容に期限の定めがない場合には法定期間が存続期間とされ、堅固建物では60年、非堅固建物では30年とされています。また、更新後の存続期間では、定めがある場合では最初の契約と同様で、堅固建物が30年以上、非堅固建物が20年以上、定めのない場合では堅固建物では30年、非堅固建物では20年とされています。
借地法では、借地権そのものが建物を建てる目的での契約で権利が発生しますから、建物の滅失(災害等で建物が役割を果たせない状態)、建物の朽廃(古くなって劣化し、建物が役割を果たせない状態)となったとき、借地権そのものが消滅する場合があります。

(2)普通借地契約(新法、借地借家法
借地借家法では堅固建物と非堅固建物の区別はありません。従って、法定存続期間は一律30年で、もちろん当時者での契約により自由に設定できますが、それは30年以上であることが前提とされます。仮に30年未満で契約されても30年とみなされます。
また更新については、最初の更新後の存続期間では期間の定めがある場合、つまり契約する当事者で存続期間を自由に設定する場合は20年以上、2回目以降の更新後存続期間は10年以上とされています。期間の定めがない場合で初回更新後存続期間が20年、2回目以降は10年となっています。

存続期間が満了し、更新をして契約を継続する場合、これには3つの更新方法があります。一つは「当事者の合意」、もう一つが「借地権者の更新請求」、そして「法定更新(使用継続)」の3つです。法定更新とは、当事者の間で特に契約の変更をせず、そのまま使用を継続することです。
新法が旧法と比べて法定存続期間が短いことは、契約当時者双方の権利調整できる機会を増やすため、とされています。
これらのことを簡単にまとめてみると以下のようになります。

● 旧法、期間の定めがある(契約内容に存続期間の設定がある)
初契約による存続期間 :当事者で合意すれば自由ですが、堅固建物では30年以上、非堅固建物では20年以上でなければなりません。
更新条件1(存続期間) :上記と同じ。
更新条件2(建物の有無):更新請求では建物が在ることが必要。
建物の滅失:借地権は消滅しない。
建物の朽廃:借地権は消滅しない。
建物の再築:滅失、朽廃ともに再築可能。滅失の日から堅固建物では30年、非堅固建物では20年の延長ができる。

● 旧法、期間の定めがない(契約内容に存続期間の設定がない、または堅固建物30年未満、非堅固建物20年未満の設定)
初契約による存続期間 :堅固建物60年、非堅固建物30年。
更新条件1(存続期間) :堅固建物30年、非堅固建物20年。
更新条件2(建物の有無):法定更新の場合は建物がなくても承認される。
建物の滅失  :借地権は消滅しない。
建物の朽廃  :初回契約存続期間内、更新後存続期間内ともに借地権は消滅する。
建物の再築  :借地権の消滅がなければ再築が可能。期間の延長は「期間の定めがある」場合と同じ。

● 新法、期間の定めがある
初契約による存続期間:堅固、非堅固建物の区別なく30年以上。
更新条件1(存続期間):1回目の更新は20年以上、2回目以降は10年以上。
更新条件2(建物の有無):原則、建物が在ること。建物がない場合は更新拒否事由になり得る。
建物の滅失、朽廃で借地権の消滅はありません。
建物の再築  :再築が可能、地主の承諾で20年の期間延長も可能。当事者の合意次第ではもっと長期にも可能。

● 新法、期間の定めがない
初契約による存続期間:堅固、非堅固建物の区別なく30年。
更新条件1(存続期間):1回目の更新20年、2回目以降は10年。
更新条件2(建物の有無):更新請求、法定更新ともに建物が必要。建物がない場合は更新できません。
建物の滅失、朽廃で借地権の消滅はありません。
建物の再築  :新法「期間の定めがある」場合と同じ。

借地権は建物の所有を目的とする地上権、または土地の賃借権とされています。地上権は物権なので、土地そのものを直接支配できる権利で、土地所有者に無断で地上権を譲渡できますが、賃借の場合は債権であるので間接的な支配に留まります。従って所有者との契約内容が優先され、通常は無断で譲渡することはできません。この地上権と賃借権の差を少なくし、賃借人を保護するための法律が借地法と言えます。

地上権の登記は、物権なので地主側に登記協力義務が生じ、結果的には登記が可能ですが、賃借権は債権なので地主側の登記協力義務がありません。従って土地の賃借権では登記がされていない場合が大半です。

ここで、土地賃借権が第三者への法的対抗ができない怯れが出てきますが、借地上にある建物を登記することで、第三者への対抗ができるようになります。
普通借地権では、上記のような規定で建物に関しては、居宅であるのか商業的な施設であるのか、あるいは工場や倉庫といった契約についての種類に法的制限はありません。また、地主側(所有者)が更新を拒絶する場合には、その土地の必要性や借地人との従前経過など「正当事由」に足るものがなければ認められません。これは、人が生活を送る上で住居は欠かせない場であり、地主の都合によって簡単に奪うことができないように保護されています。

しかし、この賃借権保護は地主側(所有者)にとってかなり不利な面もあります。賃借契約によっては、あまりに長期期間に渡り自分の土地が返還されない、契約時に特約をつけても借地人に不利な特約と判定されれば効力を持たない等、所有者の自己使用を奪われたような大きなリスクとなります。
このような普通借地権に対し「定期借地権」では、契約した期限によって権利関係が終了し、特約によって更新できない内容となっています。
と、言うことで次回は「定期借地権」です。

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