0287 所得税90 譲渡所得20 譲渡所得の計算

さて、前回までのブログ0276〜0286が不動産の登記や権利関係だったので、ちょっと譲渡所得から離れていましたが、もとに戻って今回から譲渡所得の計算について続けてゆきたいと思います。

譲渡所得の算出は簡単ではありません。計算そのものは複雑ではありませんが、譲渡所得が対象とする資産の種類が多岐にわたるため、課税に対する事象も様々なケースがおこります。これらの事に対応するため数多くのルール(特例)が存在し、算出方法や控除額等が譲渡とする資産によって異なってくる上、適用期間や変更も多く、このことが譲渡所得の計算が複雑となる原因と言えます。また、これら譲渡所得の算出条件については不動産や株式等の知識が不可欠となり、その理解の上でルールに従い計算を行わなければなりません。申告納税する側にとっては、まあ、厄介な規則です。

譲渡所得を算出するにあたって、対象となる資産は大まかに3つに分かれます。ひとつは「不動産」、もう一つが「株式等」、そして「それ以外の資産」に分かれます。これによって算出ルールが異なったり、その資産分野での特例が介在した算出方法となります。

申告にあたって譲渡所得では「総合課税」と「分離課税」とがありますが、不動産と株式等は分離課税として扱い、それ以外の資産については通常、総合課税となります。

譲渡所得の算出は大枠では次のようになります。
譲渡所得 = 「 {譲渡における収入−(取得費+譲渡費用)}−特別控除額 」

今回は総合課税についての計算規定を学びましょう。

譲渡所得の計算では「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」に区分して計算します。
(1)短期譲渡所得
取得した日から譲渡する日まで、保有期間が5年以内である資産の譲渡。
(2)長期譲渡所得
取得した日から譲渡する日まで、保有期間が5年を超える資産の譲渡。

工業用所有権等の実用新案権特許権(自己取得の場合)、植物の新品種等の知財である育成者権、他には著作権や採掘権等は、たとえ保有期間が5年以下であっても長期譲渡所得として扱われます。

この短期、長期の区分は総合課税だけではなく、分離課税においても区分されています(区分内容は少し異なります)。
総合課税の場合には他の所得と合算して累進課税率を乗じて算出されますが、短期譲渡所得はそのまま他の所得と加算して計算しますが、長期譲渡所得では半額(2分の1)を加算して計算します。

この短期、長期の区分理由は、課税額の損得を大雑把に調整するものです。通常、所得税の課税は1年間に区切り計算して納税します。しかし、譲渡所得では保有資産を譲渡した日に属する年度に課税されるため、それが3年間の保有後であるのか、あるいは30年間の保有後であるのかを問いません。仮に30年間の保有後に売却して3,000万円の譲渡益が生じた場合、1年毎に課税されたのであれば100万円相当になり、累進課税では税率が低い水準で課税されますが、3,000万円を一度にまとめて課税すると、税率は最高率となります。このように制度上、どうしても起こり得る不利となる課税の修正として短期、長期を設定しています。

譲渡所得の「譲渡益」は次の順番で計算してゆきます。
(ア) 「その年の短期譲渡所得における総収入金額」−「対象となる譲渡資産の取得費+譲渡にかかる費用」
(イ) 「その年の長期譲渡所得における総収入金額」−「対象となる譲渡資産の取得費+譲渡にかかる費用」
(ウ) 特別控除額 (最大50万円)

譲渡所得(不動産、株式等以外の資産)=(ア)+(イ)−(ウ)ですが、(ウ)の特別控除額については先に短期譲渡所得の(ア)から控除して、なお控除額に余りがあれば次に長期譲渡所得の(イ)から差し引き、控除合計が最大で50万円です。

★当ブログ0273譲渡所得、資産の範囲→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20130515
★当ブログ0274譲渡所得、譲渡の範囲→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20130517
★当ブログ0275譲渡に該当しない場合→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20130519
国税庁、譲渡所得(土地、建物及び株式以外の資産を譲渡したとき)→http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1460.htm

★当ブログ0231免責事項をお読み下さい

★上記の本の感想文は当ブログ280で読めます→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20130528