0347 所得税149 繰越控除

前回、前々回の「損益通算」、不動産所得、事業所得、譲渡所得、山林所得に生じた損失を他の所得と相殺する算出のルールを学んできました。しかし、損益通算をしても、まだ尚、損失が残る場合はどうなるのだろうか?

この損益通算をしても控除しきれない損失金額は、翌年以降の3年間に渡り繰越控除をするか、もしくは前年分の所得税から「繰戻し還付」を行うか、手続きや要件によって選択できます。

次年度になって去年以前の3年内に発生した損失の繰越を相殺するとき、この過去の営業赤字のことを「純損失」と言い、繰越控除では、この純損失の他に居住用財産の譲渡損失と、去年以前に発生した盗難や災害による雑損控除で、控除しきれなかった損失を「雑損失」と言い、この3つが繰越控除として本年の所得から相殺します。ただし、これらの繰越控除は3年間にわたり控除できるため、既に控除された分の金額は、計算されません。

<純損失の繰越控除>
純損失が繰越できる要件として、青色申告の提出がある場合は全額の損失が認められます。ただし、3年間繰越すため連続して青色申告の提出が必要となります。
青色申告がなくて白色申告の場合は、純損失のうち変動所得の金額と被災事業用資産の損失のみが対象となります。被災事業用資産とは棚卸資産または事業用固定資産、山林の災害等による損失のことで、このうち保険等によって補填された金額を除きます。

<居住用財産の譲渡損失>
これはいわゆるマイホームの売渡し、もしくは買換えによる譲渡で発生した損失です。
所有して5年以上が経過している、ローンの支払期間が10年以上残っている、年間所得金額が3,000万円以下である等の、いくつかの要件を満たす必要があります。また、確定申告の連続して提出する必要もあります。

<雑損失の繰越控除>
雑損失の場合も確定申告の提出によって控除され、繰越では連続して確定申告する必要があります。

<純損失の繰戻し還付>
繰戻し還付の場合には、青色申告の提出および「純損失の繰戻し還付請求書」の提出も必要です。この場合、前年に遡って計算し直すので前年の青色申告提出がなければできません。また、前々年に遡る場合も同様に青色申告の提出がなければなりません。

<純損失、雑損失の繰越し控除の順序>
控除の考え方は前回の「損益通算」と同様ですが、所得税全体の計算手順でいけば、損益通算の後、繰越控除をするのではなく、その間に総所得金額の合算があります。つまり、合算してから、繰越控除を差引きます。
この時の合算は「利子所得」「配当所得」「不動産所得」「事業所得」「給与所得」「雑所得」と「総合課税での短期譲渡所得」までは、そのままの所得金額を、「一時所得」と「総合課税の長期譲渡所得」の金額は、その半分(2分の1)の金額を合算します。
上記の合算金額を「総所得金額」と言い、この総所得金額から控除し、それでも尚、控除しきれない金額が残れば、次に山林所得、その次に退職所得から控除します。

繰越し控除の場合、複数年にわたり損失が生じた場合、つまり2年、3年と連続して損失があった場合には、古い損失から順番に控除してゆきます。次に性質では「純損失」→「居住用財産の譲渡損失」→「雑損失」の順に控除します。
ただし、上記の要件であったように純損失では青色申告の連続での提出、他の繰越控除についても確定申告をしなければ控除できません。

また、住宅用不動産の売却や、買い替えで生じた損失については、多くの要件と手続きがあり、下記を参考または税理士や税務署等の専門家の方に確認して下さい。

国税庁、住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき(特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)→
https://www.nta.go.jp/taxanswer/joto/3390.htm
国税庁、「マイホームを買換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」の対象となる住宅ローン→https://www.nta.go.jp/taxanswer/joto/3377.htm

★給与計算と所得税http://d.hatena.ne.jp/sotton/20131229
★所得控除の計算手順→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20131223
所得税の課税方法→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20120909
所得税の計算手順→http://d.hatena.ne.jp/sotton/20120917
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★ニーサ→http://d.hatena.ne.jp/sotton+column/20130627/1372343935